ちるちるが正式オープンして、1年後に行われたのがこの「BLアワード2008年度」。(2008年度ランキング特集)ちょうどこの頃に、現在「BL界の心臓部」を担う作家さんたちが次々とデビュー、そして作品が認められたのである。
これまで絵柄買い、作家買いでほぼ売れ筋が決定していたBL作品がこの時期の前後から様相が変わり始める。ニューBL胎動の年といっていいだろう。
特集では2008年度から2010年度まで3回にわけ、その年度に注目された作品の現在への位置づけを考えてみたい。
ちるちる2008年のランキング 4年連続レビューランキング入りのモンスターBL
2008年度コミックランキング1位■どうしても触れたくない 
2009年9月の発売、発売当時は木原音瀬推薦の帯でも注目を浴びたが、3年以上の月日を経てもいまだにレビューが入り続ける化物BLっぷり(失礼)。今年度も年度ランキングトップ10入りするなど、まったく疲れを知らない。
作品は、空気感、余韻を存分に漂わせ、静かにせつなく進んでいく。「一本の映画を観たような…」というレビューをよく目にするが、それだけ気品にみちあふれた1作だ。BL好きならぜひ読んでおきたい。
子育てモノの元祖にして、最高峰!
2008年度コミックランキング2位 ■子連れオオカミ 
2011年度にこぞって出版されたカテゴリーが子連れ、子育てもの。その元祖がコレである!これまでBLに登場する子供は、たぶんにアクセサリー的存在だったが、ストーリーの根幹に据えたところが新しい。男同士のドラマと並行に子育てに翻弄される2人の心情が切々と伝わってくる。BLのすそ野を広げる記念碑的1作。
松本ミーコハウスの初BLは痛くて切ない
2008年度コミックランキング5位 ■恋のまんなか 
受け攻めとも家庭がワケありそうで、どこかほのぐらい印象を与えて物語が展開していく。松本ミーコハウスは、他のペンネームで作品をこれまで発表していたが、本作が初BLである。それだけに、現在のふわりとした作風と変わって、意欲的で尖った感性が作品から伝わってくる。読後の余韻がすばらしい。
この年度は、ほかコミック部門で
「同級生」中村明日美子、
「センチメンタルガーデンラバー」小椋ムク、
「あいつの大本命」田中鈴木、
「隣りの」腰乃などがコミック界に新風を巻き起こす。この中で絵柄的に王道に属するのは小椋ムクだけで、それ以外はどちらかというと好き嫌いの分かれる異端的なキャラデザイン。しかしストーリーに軸足を移して内容で勝負するkこれら作品群は、その戦略が見事に当たり、ニューウェーブBLがポジションを確保し始める。
小説は、木原音瀬が絶好調。ランキングのほとんどを独占している。なかでも「美しい人」は後世に語り継がれる名作だ。その勢いで
「NOW HERE」 では50歳童貞・仁賀奈というキャラを登場させるのである。なんとそのチャレンジャーすぎる賭けが見事に成功。BLのすそ野はまたもや広がり、「もう勘弁してくれ!」と言いたくなるほどに。
この年度はBLの先行きはいったいどこに行くのか掴めない、希望と混沌が混ぜ合わさった、それはBLの春を待つ蕾のようであった。
ちるちる2008年のランキング