ある日、非BLコミックを2冊ほど読んでいたら「男夫婦」という言葉が偶然2冊共に出てきて、その言葉が頭の隅っこにひっかかりました。
確かに非BLではあるけれど、どちらも腐の匂い、または妄想の域が大いにあるコミックだったんですが、では“BL”では「男夫婦」と言う言葉がピッタリな作品はどういうのかな?と記憶を探ってみたりして。
男女で「夫婦」と言えば、一応籍が入ってれば内情はどうあれ“夫婦”と呼ばれますよね。
男同士の場合はそういう意味で籍を入れることは不可能だし養子縁組は世間的には夫婦とは言われないので、そういう形式的なことではなくその関係もしくは作品内容が「夫婦」らしい…というレベルで考えてみる。あくまで私的基準でですけどネ。
一緒に住んでいるだけではなくて、その力関係が「世話を焼く人(妻)」と「焼かれる人(夫)」と一定しているか、二人で日常の家事を仲良くチマチマやっていること自体が物語となっていて、生活や家庭の匂いがする。籍は入れていなくてもお互い自分たちの関係を「結婚」と位置づけていて、親にはカミングアウト済み、もしくは将来的にそれを目指している。場合によっては子供もいる(どちらかの連れ子)。
同棲というより、ホームドラマの香りも欲しいなぁ?・・・・などととツラツラ考えていると、思い浮かびました、ドンピシャリの「男夫婦」。
真船るのあ「ごはんを食べようシリーズ」と花川戸菖蒲「尤書堂シリーズ」は正に『男夫婦』と言うに相応しいではないですか。
どちらも出会い、一緒に住み、家庭を整え、家族となっていく物語。「ごはんを食べよう」は攻に連れ子がおり、三人家族として様々なことを乗り越え最終的には家を新築して幸せな家族を形作る。「尤書堂」は子供こそいませんが、その代わりに植物を子供に見立てています(笑)。
炊事洗濯掃除などの家事はおろそかにせず、季節の行事や記念日に非常に敏感で、御節を始め記念日の料理は手作りします。保育園の送り迎えは早く帰れる方が担当。ピクニックには早起きしてお弁当作り。間違っても途中のコンビニで調達したりしない。
現実の男女の夫婦家庭でもちょっとないかもしれない完璧さで、清く明るく優しく暖かい家庭がそこにある。「ごはんを食べよう」は子持ちの若夫婦、「尤書堂」は新婚の二人家庭という感じがするが、幼い頃女の子が夢見るような憧れの家庭がここにある。
それを“男同士”で作っているところに、BL好きの二重の夢があると思うのです。
「また古い作品だよ、この人は・・・」という声が聴こえてきそうなので今でも手に入りやすい作品をあげておきたいけれど、残念ながらここまで徹底して“家庭”を感じさせる作品がすぐに思い浮かびません。
あえて挙げるとすると、家庭的とは言えないかもしれないけれど樹生かなめの『龍&DR.シリーズ』は年上妻と年下夫という感じがするし、剛しいら『記憶シリーズ』の二人もちょっと家庭の匂いを感じさせる。
え。シリーズの最初の方が手に入りにくいデスカ・・・。
よしながふみ『きのう何食べた?』なんかもよろしいかと思いますが、いっそのこと今話題の『聖☆おにいさん』も「男夫婦」です(笑)
紹介者プロフィール:汐本代を捻出するため(もちろんBL)、日々いかに節約するかで頭がいっぱいの主婦。砂原糖子の商業誌作品はコンプリート。小川いら、たけうちりうと、も即買い。BL以外では、椹野道流「鬼籍通覧シリーズ」に勝手に腐の香りを嗅ぎ取り萌え狂っているらしい。しかし好きな本ほど絶版になるというジンクスが……。