月と太陽のような二人、波乱の人生を追う※ネタバレ注意
皆様は「人生BL」と言われて思い浮かぶ作品はありますか?
山田ユギ先生『青年14歳』や、映像化もした常倉三矢先生『Life 線上の僕ら』など、小さかったキャラが成長して男前になったり、すれ違いや歩み寄りを繰り返しながら何十年も一緒に過ごしたりーー二人の愛の証に、ほろりと泣けるラストもありますよね。
そんな「人生BL」の真骨頂とも言える、一昔前の少女漫画があります。1977年から1984年まで『LaLa』に掲載された、木原敏江先生の『摩利と新吾』。耳にしたことはある、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
明治〜昭和にかけての日本を舞台に、一心同体の幼馴染たちが惹かれ合い反発し合うさまを、高校生時代〜晩年まで描く大河ロマン。この物語こそ、一言で表すと「人生」。 今回はそんな名作『摩利と新吾』の見所を、BLファン目線で徹底解説!
また、木原敏江先生のBLオススメ作品もご紹介しますので、ぜひ最後まで見てみてください!
麗しきメインCP紹介
鷹塔 摩利(たかとう まり):ミディアムボブと物憂げな瞳が特徴の気高き美人。女装もお手のものの麗しいお顔♥ドイツ人と日本人のハーフ。新吾のことを一途に想い続けている。
印南 新吾(いんなみ しんご):お目々キラキラお日様ワンコ系男子。健康的な日本男児。短髪もかっこいいけど、ちょっと髪が伸びてセクシーな新吾くんも良き。摩利のことは好きだけどノンケなので……。
『摩利と新吾』を3部に分けて解説!
◾️第1部:愛と青春の持堂院高校時代
序盤に描かれるのは名門旧制高校・持堂院に入学した摩利と新吾。みんな大好き寮制男子校を舞台に、見目麗しい男たちが切磋琢磨し、美少女や美少年と共に思い思いの青春を過ごします。眼福眼福。
そんな中、幼い頃から新吾に想いを寄せ激重執着を見せる摩利は、持ち前の明るさで男女共にモテにモテる新吾を横目に気がきではありません。新吾に思いを打ち明けることもできず、かと言って新吾に女性の恋人ができたらどうしよう? と煩悶する日々。その悲痛な心の叫びに、読んでいるこちらも胸が苦しくなります。
滝川篝という美少年が登場し摩利と新吾との仲を引き裂こうとしたり、夢殿先輩こと春日夢殿という
本作最強当て馬お兄さんが強引に摩利を襲って体の関係を持ったりと、ドロドロ恋愛模様の末、新吾もついに摩利の想いに応え二人は恋人同士に…… !?
◾️第2部:波乱の欧州留学時代
帝大に入学してすぐ、摩利の父についてヨーロッパに留学する摩利と新吾。恋人となった二人でしたが、新吾のウブさに振り回されたり、お父上に二人の関係がバレてややこしいことになったりと、結ばれたはいいものの、もだもだな日々。しかも摩利は家のために結婚相手を見つける必要が。クゥ〜ッ! 御曹司BLあるある! 坊ちゃんは辛いね!
そしてここで大事件が。皆様、落ち着いて聞いてください。なんと……新吾は現地で出会った女の子と恋に落ちてしまうのです。いやおいおい、ちょっと待てよ! 摩利はどうするんだよ(涙)(涙)!!!
再び始まる摩利の苦悩。
夢殿先輩や他の男女と肉体関係を持ち爛れた性活を送る摩利くん。そりゃ荒れるよな。手に入れたと思った新吾くんがぽっと出の女に掻っ攫われるんだから……。ところでさっきから出てくるこの夢殿先輩、なかなか推せるキャラなのです。新吾を一途に想い続ける摩利と、そんな摩利を見守り待ち続ける夢殿先輩。彼の行く末にも注目です。ね、
ヘル・マリィ。
◾️第3部:大人になった二人、そして歴史の渦へ……
若き日の交わりと決別を経て、大人になった摩利と新吾。摩利は長い間想い続けてきた新吾への想いを断ち切るべく、自ら距離を取ることに。うう、つらい……つらいしか言えねえ……。
そして明治末期から大正ロマン……と、近代を舞台に描かれてきたこの物語は、そう! 第一次・第二次世界大戦や関東大震災といった歴史的大事件ともしっかりと絡んできます。持堂院高校時代の皆もそれぞれの人生を歩んでいて……。移ろいゆく時の流れを感じさせます。
摩利と新吾の関係はどうなっていくのか? 新吾の恋路は? 怒涛の展開のクライマックス。二人は生涯の恋人にこそなれなかったけれど、
同じ星の下に生まれた一心同体の魂として、物語の最後まで強い絆で結ばれています。
ツラいけれど魅了されるスペクタクル
「ああ、色々あったけど、いい人生だったなぁ……」。そんな読後感のある超大作。
実際に読んでいる時間は数時間〜数日に過ぎないけれど、一つの人生を生き切って成仏したかのような、そんな達成感が生まれます。
BLファン的には、摩利と新吾の蜜月や忠犬ハチ公スパダリの夢殿先輩との関係など、ムフフな部分も結構あるのですが、とにかく摩利の新吾に対する苦悩がつらくてつらくて、新吾の一挙一動に心を乱される恋する男の気持ちが自分のことのように刺さります。
大切な親友への愛。彼と身も心も結ばれたいという欲望。自分の性的指向に反するはずなのに応えようとしてくれる新吾への罪悪感。案の定、自分のもとを離れていく新吾への焦燥……。
新吾は新吾でめちゃくちゃイイ奴で、摩利と身体の関係にはなれないけど本当に摩利のことを愛しているのだと分かるから余計につらい。
その点、光のBLファンの方にとってはちょっと注意が必要かも? という展開があるかもしれませんが、コメディー調の部分とシリアスな部分とのメリハリがあり、全体的な雰囲気は結構明るめ。何よりも、そんな辛さも「それが人生だよね!」と納得してしまうストーリーの濃密さです。
長さも単行本で13巻、文庫本で8巻と少し長めですが、全人類に読んでほしい名作なので、皆様にも是非是非チャレンジしてほしいです!!
旧き良き時代に生きた少年たちの青春浪漫
あらすじ
旧き良き時代に生きた少年たちの青春浪漫。名門旧制高校・持堂院へ入学した摩利とその親友新吾、そして学友たちの友情物語。
まだまだある木原敏江オススメ作品
美少年、エロス、SM……♥
『摩利と新吾』の欧州留学編でも垣間見えた華麗なるヨーロッパを舞台にした短編。背徳、変態、虐げられる美少年。そんなワードにピンと来た方はぜひ!
あらすじ
木原敏江氏の耽美な時代劇。17歳の少年伯爵ヴィーサと12歳の候爵夫人ラウリーヌはゾーネックで出会い恋におちる。ブルゴーニュ公国の小宮廷を舞台に、大公の弟と寵臣の典雅なSMが見事!
鬼と人との悲しい恋を描いた傑作ロマン
和装×木原先生=神! 鬼との異種間BL悲恋を描くファンタジーや、美少年世阿弥くんを巡る物語など、美しくも切ない世界観に溺れます。
あらすじ今は昔、大江山に酒呑童子という鬼がいた。都を荒らし、姫をさらい、悪事のかぎりを尽くしたそうな。さて、宮中より鬼退治を命じられたのは音に聞こえた勇将・渡辺綱。だが、勇躍して鬼の岩屋にのりこんだ綱が目にしたものは……。鬼と人との悲しい恋を描いた表題作ほか、愛する人を殺された鬼の復讐物語「花伝ツァ」、室町の世を美しく舞う若き世阿弥の永遠の恋「夢幻花伝」など、傑作長編「夢の碑」番外編となる全4作。
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いかがでしたでしょうか? 今回は『摩利と新吾』シリーズをはじめ、いにしえBLの巨匠の一人、木原敏江先生の作品をご紹介してきました。
発表から時を経ても色褪せない名作ばかりなので、気になった方は入手してみてくださいね。
コメント1
匿名1番さん(1/1)
熱くて面白い記事でした。全人類に読んでほしいとのことなのでいつか絶対読みます。