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愛し合うと死ぬ!?オメガバースに続く○○バースまとめ
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2019/04/24 16:26
今年も4月末に、代々木公園で日本で最大級のプライドパレード「東京レインボープライド」が開催されます。
プライドパレードとは、LGBTQをはじめとしたセクシュアルマイノリティの人々が自分たちの存在をアピールし、差別や偏見のない世の中を訴える多様性のお祭りのようなもの。
BLは同性愛を描いている物語ではありますが、BLやそのファンとLGBTの人々の関係性には触れにくい時代もありました。
「BLはファンタジーであり、現実の同性愛者とは関係ない」という紋切り型の言葉も、以前はよく使われていたかと思います。
しかし、それもこの本が出版されるまでのこと。
BL研究者でレズビアンでもある溝口彰子先生による「BL進化論」は、BLと現実の同性愛やLGBTというテーマを繋ぎ、大きな反響をもたらしました。
この本によると、1990年代に起こったゲイと「やおい少女」(今でいうところの腐女子)たちの論争、「やおい論争」を経て、「ゲイはやおいを批判している」という認識が広まってしまいましたが、その後、BLは他者への想像力を働かせて、偏見を排し、ステレオタイプな描写からより多様な表現へ進化してきたと主張されています。
さらに、現在大絶賛ドラマ放送中の「きのう何食べた?」はBLではありませんが、原作者のよしながふみはもともとBL出身の作家で、多数のBL作品を描いていることでも有名ですね。
余談ですが、「何食べ」は当初、BL誌での連載を考えていたのだとか。しかし掲載してくれる雑誌がなく、モーニングで連載されることになったといいます。
ついに解禁
— テレビ東京 宣伝部 (@TVTOKYO_PR) 2019年1月23日
男性カップルの日々の食卓を描いた #よしながふみ 原作の大人気マンガ「#きのう何食べた?」待望のドラマ化が決定
弁護士・筧史朗役に #西島秀俊 、その恋人の美容師・矢吹賢二役に #内野聖陽 ダブル主演‼️
4月から毎週金曜深夜0時12分~「ドラマ24」にて放送です pic.twitter.com/f8TkROPN5M
日常を生きるゲイ×ゲイの画期的な群像劇
まずは中村明日美子の圧倒的人気作「空と原」。
BLの金字塔との呼び声も高い「同級生」シリーズの名わき役・原センと、その教え子であるソラノの恋愛を描いたスピンオフ。
なんといっても特筆すべきなのはメインカップル2組が全員ゲイ! ゲイ×ゲイの物語はBLでは珍しいです。
ソラノの台詞「もーしんどいから 日ごろの暮らしで好きな人とかできてもさー 基本全敗じゃないですか だからもうほんとに」「しんどい恋はしたくないから」には胸が苦しくなりますね……。このように、ゲイならではの悩みやゲイとしての日常、人生を描いている物語といえます。
また、たくさんのゲイキャラクターがいることで、その中でもいわゆるお堅い職に就いている人、オネエ言葉を話す人など、一口にゲイといっても色々な人がいることを表現しているのも素敵ですね。
<あらすじ>
原 学(はら まなぶ)、37歳、男子校教師、独身、「生徒には絶対手を出さない」というポリシーを持つ男。
3年間の片想いから脱するために訪れたゲイの集まるクラブで若い男に出会う。
後に彼は、原が勤める学校の新入生、ソラノだと分かり…??
不器用なオトナ、永遠のアテ馬と呼ばれる原先生に春は来るか!?
これが2010年代のBLスタンダードだ
次に紹介するのはおげれつたなか先生の超人気作「エスケープジャーニー」。
みんなが大好きなド王道切な甘BLでありながら、男同士でのアパート入居を断られたりするなど、現在の日本で、男二人が恋に落ち一緒に生きていくときに直面する問題を正面から描いている、とても読み応えのあるストーリーです。
この作品が大ヒットを飛ばしていることからも、同性愛の問題にどう向き合うかという問題はBLのサブのテーマではなく、メインストリームであることがわかります。
自信をもってこれが2010年代のBLスタンダードなのだと言えるでしょう!
<あらすじ>
「性欲処理」呼ばわりされて別れた元カレ太一と、大学でまさかの再会を果たした直人!
ガッツリ過去の怒りを引きずっていた直人だったけど、高校時代に比べ成長した太一に少しずつ心を許し始める…。
そんな中、友達のふみちゃんが太一に恋しているらしく…?
友達だと相性バツグンなのに“恋愛"になった途端うまくいかない、傷だらけの恋愛譚!
自分を模索し、選択するマイノリティとしての生き様
セクシュアルマイノリティを描いた作品といえばこの作品。BLの枠組みを超えて広く高い評価を得ています。
閉鎖的な地方の暮らし、自分が何者かという思春期特有の悩み、マイノリティの若者としての生きづらさなど、さまざまな要素を独特な筆致で描き出している唯一無二の名作で、この作品全体が、「正しさとは何か?」「自分とは何か?」と問いかけてきます。
ゲイとしてのプライドを持って生きていく三島と、母のために全く別の生き方を選んだ桐野。二人の対照的な生き方に「正しさ」だけではない、人間の生きざまを見ることができる物語です。
<あらすじ>
ド田舎に住む学生、三島はクラスメイトの男子から“ホモっぽい”とイジメを受けていた。実際に男性が好きな三島は抵抗するすべもなく、隠れて女装するだけが心の拠り所となっていた。ある日、三島は屋上で自分が以前失くしてしまった口紅を持ったイジメグループのリーダー・桐野を目撃してしまう。かれはこっそりと三島の使った口紅を自らの唇に塗ろうとしていたのだった……。
「普通でいなきゃ」を乗り越えて誰かを愛する物語
三崎汐による「はるのうららの」は、二人の男の子の小学生から高校生までの成長を追った青春物語。
兄が女装して地元に帰ってきてから「おかま菌がうつる」といじめられている春希と、家庭の事情で東京から転校してきた春介は、周囲になじめないという共通点から仲良くなりますが、一方でお互いに恋心を抱くようになると、春希の「普通でいなきゃ」という思い込みから、二人の仲はギクシャクしたものに。
「まともであること」を求める母や周囲の圧力、ネグレクトを受けている春介の家庭環境など、あらゆる「普通」と「違い」をめぐる物語が素朴な絵柄で見事に描き出されています。
春介の「春希の普通と俺の普通は、たまにちょっと違ってるよな」「これからもっと違っていくんだろうな」というセリフが表すように、「同じ」で繋がって、「違い」を認め合うことがテーマといえるのではないでしょうか。
二人の少年の成長物語であり、「普通って何?」を問いかけてくる物語であり、そして、愛によって障害(=弱い自分)を乗り越えるという、普遍的なBLの物語であることが両立する、稀有な作品です。
<あらすじ>
家庭の事情で転校した大沢春介(おおさわしゅんすけ)は、
クラスでひとり浮いている矢河春希(やがわはるき)と
行動を共にするようになる。
友達以上に互いが特別な存在となっていたが、
幼いふたりは周囲の環境に振りまわされていって……
性って、普通って一体なんだ? マジメに向き合うオトコノコたち
すこしふしぎ系といえばこの人、独自の世界観で支持を得る木村ヒデサトによる「鬼は笑うか」は、ちょっと変わったクラスの気になるアイツに「俺は今生理なんだ」と言われる!! という、驚きの導入から始まる物語。
ごく「フツー」だった男の子が、性について真面目に考え、不条理な状況の中で一生懸命相手のためを思って行動していく様は胸が熱くなります。
最後、タイトルの意味が分かる木村ヒデサト流ハッピーエンドには、肩の力がぬけると同時に、本当に心が暖かくなります。
<あらすじ>
平凡な中学生・星谷は、クラスで浮いた存在の柏瀬と男性体育教師の情事を目撃してしまう。それ以来彼が気にかかる星谷だが、ある日体育を見学していた柏瀬にふいに接近した折、「俺は今生理なんだ」とからかわれ―。世界の理不尽と大人の身勝手に翻弄されながらも懸命に寄り添う少年達の愛の形を描いた実力派・木村ヒデサト渾身の一作。
キュートな「オネエキャラ」の裏側にあるものは
続いては小説作品です。ゲイの物語を描くことで定評がある凪良ゆうの「愛しのニコール」は、ゲイであることを「病気」扱いされた経験から、オネエキャラ「ニコール」を演じている少年・ニコの物語。
近年空前のオネエ人気で、ステレオタイプなキャラクターも多い中、この作品ではそんな「オネエキャラ」の裏側にあるものにフォーカスしています。
厳しい状況を生き抜くための”生存戦略としてのオネエキャラ”というテーマは、BLに限らずあまり例を見ない貴重な作品であるといえます。
<あらすじ>
14 歳の夏、ニコはゲイゆえに田舎町で 「病気」扱いされ、自殺を決意した。けれどその夜、遠い街から遊びにきていた少年・榮の屈託のない態度に救われ、苛め回避のためオネエキャラ 「ニコール」を演じはじめる。数年後、榮は転校生としてニコの前に再び現れた。イロモノに成り果てたニコにも榮はまっすぐで優しかったが、淡い初恋を詰め込んだ告白は本気にされず、それどころかゲイの先輩として恋愛相談を受ける始末で――。
両親、血のつながらない弟、そして男の恋人と、故郷で暮らす
こちらも暖かい絵柄が心にしみる、紀伊カンナの人気シリーズ「海辺のエトランゼ」「春風のエトランゼ」からなる「エトランゼ」シリーズ。
許嫁との結婚式当日に地元を飛び出したゲイの小説家・駿が離島で天涯孤独の少年・実央に出会い、好意を受け入れて恋人同士になった二人が実家に帰郷する物語です。
駿は自分がゲイであることに葛藤があり、ノンケである実央の好意を素直に受け入れることができず、また親ともなんとなく疎遠になってしまっています。
誰かと一緒に生きること、親との関係性や血のつながらない弟、地方での暮らし、「普通とは?」をめぐって、美しい背景とともに物語は展開していきます。
まだまだ絶賛連載中なので、二人と家族の物語を追いかけていきましょう!
<あらすじ>
小説家の卵でゲイの橋本駿と、物憂げに過ごす高校生・知花実央。3年前、2人は沖縄の離島の海辺で出会い、日に日に距離を縮めるが、実央が島を離れることに。そして3年後、島に戻ってきた実央は「3年考えた。男でも駿が好き」と迫る。しかし駿はいざ実央と恋人同士に、となると一歩を踏み出せなくて…
どんな自分だっていいよ、決めなくたっていいよ
「恋をするのは女の子なのに、男にしか欲情できない」という大学生・高史が、「あっち系」と噂される男・深町と同部屋に住むことになり、二人の関係が動いていく物語「世田谷シンクロニシティ」。
ある種型にはまらないからこそ悩ましいセクシュアリティの問題を優しく、あたたかく描き出しています。
「ありのままの自分でいい」「でも、変わっていってもいい」というメッセージが胸に迫ってくる作品。
<あらすじ>
バイト先によく現れる「彼」は、いつも決まって同じ席で同じ男と居た。
……めちゃくちゃ、タイプだった。
「恋をするのは女の子なのに、男にしか欲情できない」という不思議な体質に悩まされている高史は、彼女・舞の転勤により、一緒に暮らしていた家を出なければいけなくなってしまう。困り果てていたところ、友人が使っていない寮部屋に住まわせてもらえることに。が、話によると「同室の男は“あっち系"」……。入寮の日を迎え、同室の男・深町と出会った高史は度肝を抜かれる。深町は、バイト先でいつも気になっていた「彼」だったのだ。そしてある時、二人は一線を超えてしまう……。
「ふつう」ってなんだろう。俺は「ふつう」になれるのかな……。
不器用な二人が手を取り合ったとき、涙が溢れて止まらなくなる。あたたかなメッセージがぎゅっと詰まった、本郷地下のBL!
ここからは番外編として、BLとLGBT文化を繋げるような非BL作品をご紹介します!
少年愛の時代とクィアカルチャーをつなぐ伝説的シリーズ
現在のBLのご先祖様といえる、1970~80年代に一世を風靡した「少年愛」作品。先ごろアニメ化された「BANANA FISH」は最後の少年愛作品ともいわれています。
この少年愛作品の特徴は悪魔的に美しい「美少年」が破滅的な死を迎えること。「耽美」という様式ではありますが、現在の私たちからみると少し同性愛に対する偏見があるようにも見えます。
Jという「マリリン・モンローになりたかった少年」を描いた、中村明日美子による「Jの総て」は”生き残った美少年”の物語であるといえます。
そして同時に、一人のトランスジェンダーの人生を描いた物語でもあります。
そういった意味で、この物語は少年愛作品とBL、LGBTの物語をつなぐ作品であるといえるでしょう。
<あらすじ>
父と母を失い、寄宿舎学校で新たな日々を歩み始めたJだったが、運命の人・ポールとの出逢いが彼の人生を変えてゆく…。真実の愛と自分の姿を求め、彷徨う魂の物語。
瀬戸内を舞台にしたLGBTQAコミックの名作
男の子が好きかもしれないと悩む中学生のたすくは、街で出会った不思議な人「誰かさん」に誘われ、LGBTQAの人々が集う「談話室」に通うことに。何かとつっかかってくるたすくの想い人・椿とともに、彼らの抱える様々な事情に接して行くという物語。
最初は不安げだったたすくが、様々な人に出会う中で自分を認め、他人をいたわれるよう成長していく姿がすがすがしいです! まっすぐなたすくと、どこか思わせぶりな椿の関係性もいいですね~!
以上、10作品を紹介してきましたが、総じて「普通とは何か?」をめぐる物語であることがわかります。
異性と恋愛して結婚して子供を持つことが普通? それが当たり前の幸せ? そうじゃないはず、ということを私たちに語りかけてくれます。
BLは今まで、女の子たちの大変な日々の疲れをいやして、明日を生きるエネルギーを与えてきました。
人と人とが出会って起こる化学反応、その人たちだけに生まれる新しい火花の美しさを探してきました。
より自由で新しく、まだ誰も見たことのない関係性のケミストリーを探してきたBLは、今日、より多くの人に届こうとしています。
新しい時代を迎える今、今まで通り女性に癒しと楽しさを提供するところは変わらず、さらに多くの人たちに開かれた物語であってほしい、それを求める人たちに等しく夢と希望と明日へのエネルギーを与えてほしい。
いつまでもいつまでも、夢を見るためのボーイズラブであってほしい、と思う筆者なのでした。
ハッピープライド!
記者:川野夏橙