BLニュース

ちょっと待って！ その年代にソレ、ウケないかも‼

 
つい先日、ヒロシ社長と話していたときのことです。

ヒロシ社長「〇〇(作品名)って初心者向け？」
白米「内容的には王道なので初心者向けだと思います。……ただ、もしかしたら若い世代には物足りないかもしれないですね」
ヒロシ社長「世代ごとに好みって分かれるもんね」

腐女子になって皆さんはどれくらいでしょうか。筆者は20年弱ほどなのですが、10代の頃と現在とでは好みが変わってきたように思います。色々なBLを読んできたからそうなのか、はたまた置かれている環境が変わったことによるものなのか……。一貫して変わらない萌えポイントもあれば、今はちょっと……と思うものもあり。腐女子とは何とも不思議な生き物です。
さて、ここで冒頭の会話に戻りますが、一重に「初心者向け」といっても世代ごとで好みが違うならば薦める作品も違うということになりますよね。



であれば、筆者の役目はそれを調査すること(笑) 今回は各世代の人気作品を分析しつつ、どういった傾向の作品が好まれるのか、あるいは無難なのかを見極めてまいりたいと思います！ 参考にするのは、ちるちるマル秘資料……という名の世代別人気作品ランキング。ランキングは100位までの結果の中からトップ10のみを掲載し、表中の黄枠は他世代では10位までに入らなかった作品を示しています。

それでは、10代から順に見ていきましょう。

10代 圧倒的はらだ人気！ 過激な描写の作品がウケる！

傾向
・はらだ先生が大人気
・ここ5年以内にデビューした作家のヒット作が軒並みランクイン
・エロ、暴力、ゲス系などをテーマにした作品が人気

10代キーワード　背徳感

■BLコーナーの充実が逆に選択の幅を狭めている？
新レーベルの創刊に、続々とデビューする新人作家さん。毎月(毎週)BLコーナーを盛り上げてくれる多くの作品を前に、「どれを買おう……」と悩むことはありませんか？
歴戦の猛者ならともかく、BL作品にハマりたての初心者だったらどうでしょう？ そう、どれを買ったら良いか分からないのです！ となれば、「人気作家の代表作」あるいは「レビューサイトで高評価の作品」を手に取りませんか？ その結果、ここ最近の人気作を集中的に読み、それがそのままランクインしたのではないかと推察します。
特に10代となれば使えるお金も他の世代に比べて少ないでしょうし、手当たり次第に買うよりは最初から高評価の作品を選ぶのではないでしょうか。

『にいちゃん』作：はらだ

 

■ネット環境がアブノーマル系への抵抗感をなくす？
今や多くの腐女子が利用しているPixiv。手軽にお気に入りの作品を検索できて非常に便利ですよね。また、SNSの代表格・Twitterも腐女子には欠かせないツール！ こういったサイト、SNSでは過激なものを含めあらゆるシチュエーションの作品が掲載されています。ネット上の作品は、たとえ「R18」表記をしていたとしても紙媒体の作品よりも容易に閲覧することができます。
つまり、現代の10代腐女子はR18作品を手軽に楽しめる環境にあり、それゆえ過激なエロや暴力表現などのアブノーマルな作品に対する抵抗感もあまりないのではないでしょうか。はらだ作品が受け入れられている背景はここにあると筆者は思うのです。

結論：10代は過激な作品を薦めても大丈夫な可能性が他の世代よりも高い！

余談 ～エロい作品を読んでいる自分に酔っていた筆者～
筆者がまだ10代だった頃、ひたすらエロばっかり読んでいる時期がありました。性に対する興味と言えばそこまでなのですが、どこかに「こんなエロばっかり読んでる私やべー(笑)」みたいな感情があったような気がします。エロ本を読んでいる背徳感を楽しんでいるというか……。あくまで筆者個人の話なので、さすがに共感して下さる方はいないですよね……(チラッ

20代 バラエティ豊かなラインナップ！ ストーリー性を重視し始める年頃、そしてショタ

 

傾向
・どっしり読み応えのある作品が多い
・官僚、ヤクザ、執事など職業系が人気
・他世代では見られないショタ作品

20代のキーワード　癒やし

■ストーリー重視はある意味沼
20代は社会人が多い世代。収入も増え、金銭的に余裕が出ると大人買いも可能になります。ちょっと気になったものはとりあえず購入！ そんな方も多いのでは？(筆者も経験アリ) 特にストーリー重視タイプの作品は一度ハマると「もうただのエロは読めない！ ストーリーがなくちゃダメ！」という謎のこだわりが生じます。20代という社会に揉まれ始めた腐女子にとっては、ある程度どっしり読み応えのある作風が心に響くのかもしれません。10代人気のはらだ作品も、20代では特にメッセージ性・ストーリー性の強いものが好まれていますし、職業モノが多いのも社会人だからこそ理解できる何かがあるのかも？

■疲れた20代女子を癒すは可愛いショタ？
『さよならアルファ』『錆のゆめ 下』と、ここにきてショタ作品がランクインしているのが20代。

『さよならアルファ』作：市梨きみ

 

『錆のゆめ 下』作：久間よよよ

 

前者はショタ攻、後者はショタ受ですが、そもそも人はなぜショタに魅力を感じてしまうのでしょうか。ショタの強みと言えば可愛らしさ。その可愛らしさに癒されたいわけです。仕事や学業、あるいは人間関係疲れた20代腐女子がまるで犬や猫に求めるのと同じようにショタに癒しを求めてしまう。その結果がここに現れているのではないでしょうか。

結論：20代にはエロだけでなく、ストーリーを楽しめる作品を薦めるのがベスト！

30代 ストレートな作風多し！ 意外にも王道寄りでちょっとしたヒネリがよいスパイス

傾向
・エグい系の作品はほぼなし
・「THE 王道」を好んでいる印象

30代のキーワード　片足王道回帰

■一周まわって原点回帰！ インパクトよりも手順を重視
これまた面白い結果になった30代。10代、20代でランクインしていたはらだ作品は10位以内ゼロ！ 全体の傾向としては、手順を追って少しずつ結ばれていくような作品が多いような気がします。『手中に落としていいですか』がこのラインナップで唯一毛色の違う作風となっていますね。

『手中に落としていいですか』作：くれの又秋

 

純愛、片想い、すれ違いなどBLの定番とも言える内容を好んでしまうのは、ある程度場数をこなしてきた(?)30代だからこその原点回帰なのでしょう。

■夫や子どもの手前、エロは買いにくい(知人談)
あくまで筆者の聞いた話なので全ての人にはあてはまらないのですが、家族がいるからエグい系やエロ系は買えなくなったという30代腐女子もいるようです。知人曰く「買ったとしても置き場に困る。だから最近はあんまりエグくない作品しか買わない」とのこと。もしかすると、出産を機にショタ系がダメになったパターンなどもあるかもしれません。既婚腐女子あるあるな意見ですね。

結論：30代には王道を薦めるのが無難、エグい系は反応を見ながらが〇

40代 求めるのはキラキラ学園BL…！ 青春の尊さを最も実感する？

 

 

40代キーワード　ノスタルジー

傾向
・30代と似たようなラインナップ
・10位以下含め、青春モノや学園モノが他世代よりも上位に

■キラキラ青春モノがこの年代のベース？
一見すると30代のランキングと似たような結果となりましたが、実は表に載せていない10位以下に特徴が……！ それが青春モノや学園モノの多さです！ 10位の『ブルースカイコンプレックス(3)』のほか、『新庄くんと笹原くん(2)』『YOUNG GOOD BOYFRIEND』などの作品が他の世代よりも上位に入るという興味深い結果となりました。

『ブルースカイコンプレックス (3)』作：市川けい

 

出版されて古い作品は学園モノが比較的多い印象があります。歴の長い腐女子なら、そういった昔読んだ作品が土台になって今があるはず……。BLで言うところのソウルフードとして学園モノを好む傾向にあるのが40代なのではないでしょうか。あるいは、学園BLを通して青春の素晴らしさを実感したいという願望がより強い可能性もあります。筆者も「若いっていいなぁ、キラキラしているなぁ」と思うことが多々ありますが、青春の尊さをBLを介して楽しむ、それが40代というオトナの腐女子の嗜みなのかもしれません。

結果：40代には王道作品の中でも青春系、学園系をそっと推してみるべし

 

50代 エロの先に大切なもの有り！ 堅実さがうかがえるラインナップ

 

傾向
・エロを重視しない
・家族、人生を描き切るものが人気
・ウノハナ先生人気

50代のキーワード 漢

■エロよりも繋がりや関係性をじっくり堪能したい50代
50代の特徴は何と言ってもエロ描写の激しい作品が上位にあまりないこと！ 10～40代までのランキングを見ると、はらだ作品のうち何かしら一作品は20位以内に入っていたのですが、50代の結果は33位の『やたもも(2)』が最上位、各世代ダントツ人気の『にいちゃん』は何と54位でした。

一方、家族の絆を描く作品やカップルの人生を描き切る作品は他世代よりも人気で、『オレとあたしと新世界(1)』は10～40代よりも上位に入っています。流行のジャンルに流されるのではなく、シリーズ展開しているものや王道的な作品が支持されるという、ある種の堅実さを感じる結果となりました。

■50代はオトコっぽい男がお好き？
ここで疑問なのが50代の方々のウノハナ先生人気。ウノハナ先生といえば、がっしり体型の男性を描くのが得意な作家さん。普段から使われている筋肉が実に美しく、筆者も大好きです。ガチムチが人気を博した時期もありましたが、それとは違うリアルな男らしさが魅力ですよね。

『気まぐれなジャガー (1)』作：ウノハナ

 

また、コミカルな話もシリアスな話もばっちりこなせるのがウノハナ先生の強みでもあります。BLをなぜ読むのか？ その原点は「男同士だから」に尽きると思います。オトコくささのある男性が恋に戸惑ったり、エッチな姿を晒したり、そして何よりカッコ良く描かれているウノハナ作品はまさにBLの王道でしょう。50代にはBLのプロがたくさんいらっしゃるイメージがあるのですが、プロだからこそ惹かれてしまうのがウノハナ先生なのかもしれません。

結論：50代には読み応えが十分なものを！ エロエロは避けたほうが良さそう

ズバリ！ 年代問わず受け入れられた作品は…？

今回のランキングにおいて、幅広い年代で絶大な支持を受けていたのが以下の2作品。これらの共通点を探ってみます。

『恋するインテリジェンス(4)』作：丹下道

デビュー作にも関わらず発売当初から大人気のシリーズ作品！ 表紙からは想像できないエロエロ＆コミカルさが人気の理由かと思います。耽美な絵柄に惹かれて手に取った方の中には、そのギャップに驚きつつファンになってしまったという人も多いのでは？ エッチシーンもたっぷりなので、エロエロ作品が人気な10代から高評価を受けているのも納得できますし、ストーリーもかなりしっかりしていいるため、エロだけじゃちょっと……と思う方も安心して読むことができます。

『かしこまりました、デスティニー ～Answer～ 下』作：さちも

こちらも大人気、「かしデス」シリーズ。旬のオメガバースと普遍的な萌え属性である執事……こんなの絶対オイシイに決まってますやん！ αとβという運命の番になれない苦しさ、切なさに胸を締め付けられたファンも多いはず……！ 「オメガバースってとにかくエロいんでしょ？」と思いがちですが、「かしデス」シリーズはとにかく内容重視！ けれど、エロはしっかりエロく描かれているのがさちも先生の凄いところ。だからこそ、あらゆる年代に支持されているのでしょう。筆者は個人的に箔押しの施された表紙も気に入っています(笑)

共通点
・官僚や執事など、日常からかけ離れた職種である
・ストーリーありきのエロ描写

サラリーマンや学生など身近な設定の作品が好まれるのかと思っていた筆者ですが、意外にも非現実的な(＝あまり見かけない)職種のほうが人気を得やすいようです。確かに日常的でないキャラ設定、シチュエーションの作品は印象に残りやすい気がします。そこに重厚感のあるストーリーが加わることで読者に強い衝撃と感動を与えたのでしょう。また、初心者に対しては「まずはほのぼの系から……」と少し控えめになってしまいがちですが、多少インパクトのある作品を薦めても問題ないのかもしれません。エロエロ作品を薦める場合は「基本ヤッているだけ」なものより、しっかしとしたストーリーがあった上でのエロエロ作品を選ぶと良いかと思います。


以上が筆者の見解となりますが、いかがでしょうか。各年代のことはその年代の方にしか分からないことなので、ぜひ皆さまのご意見をお聞かせください！ また、コレは絶対にどの年代にもウケる！ といった情報があればそちらもご教示頂けると嬉しいです♥

 

担当BLソムリエ：白米盛子 拗らせ気味な古の腐女子。色素の薄いロン毛受が好物。夜明けも黄昏も嗜むが、よく心が折れる。