9月17日発売の雑誌『美術手帖 2015年10月号』の特集は春画。
以前ちるちるでも紹介させて頂いた
春画展の情報もあり、大変興味深い内容です。
ページをめくると
壇蜜×
蜷川実花による妖艶で蠱惑的な春画をモチーフにしたフォトアート、また「
春画を楽しむための基礎知識」と称した春画
how-toコーナーや、
辛酸なめ子×
峰なゆか×
ろくでなし子という今をときめく女性クリエイター陣による、女性ならではの視点に基づいた春画の疑問や楽しみ方を徹底討論!
また付録には春画隆盛の当時に巷で流行した「豆判」と呼ばれる手のひらサイズに製本された版画集が付属しており、日本国内初開催で盛り上がる話題の春画展のガイドブックとして持参するのもいいかもしれません。
にわかに春画が盛り上がる今日この頃ですが、同時に今号の『美術手帖』では性表現に伴う性表現に対する「
規制」についても触れられています。
メディアや創作、出版物に対する性表現の規制問題については、TPP交渉に伴うコミケ中止の危惧が話題になりました。
性表現における規制問題はことNLに限った話ではなく、アダルトカテゴリであれば当然BLにも適用されます。
そして実際、東京都の条例による
不健全図書に9月、BLでは以下の2誌(条例での単位が「誌」)が指定されました。
コミックス『
教師玩具』
アンソロジー『
性癖BL』
これらを含め、
平成27度は4月から9月に15誌が不健全図書に指定されており、そのうち6誌がBLです。
不健全図書指定の判定は強まっている傾向にあるとの見方もあり、今後BL界での「表現」はどのように変わっていくのか、我々読み手側も実に気になるポイントであります。
そんな「
性表現」に関する「
規制」の問題。
その点について今号の美術手帖では、
会田誠×
山本タカト×
木村了子三者による座談会が掲載。
中でも少年や青年、とりわけ「
美青年」を作品モチーフに使用する事の多い作風をもつ
木村了子さんは、以前『
アートコレクターズ』の表紙に
オダリスク風、半裸少年の絵を使用した際、その少年のイメージが「
15~18歳のイメージ」であると
Twitterで呟いた所「
未成年者を性的表現の対象として描くことはNG」というリプライを受け、改めて少年を性的に表現する事の困難さやタブーを感じた(勿論未成年者が一方的に暴行されるようなポルノ的性表現については反対)と発言。
特に「少年少女(思春期)時代特有のモチーフとしての美しさ」を、過剰にタブー視する事でそれら世代特有の魅力の表現が規制されてしまう現状を嘆いており、それを受け会田誠さんも「思春期の頃に受けた性的な物に対する発露や興味。それらが作品の糧になる場合もある。50を過ぎてそういう刺激的な体験は減る一方、そうした思春期に着目する事を『変態』と言われたら何もできなくなる」と仰っています。
別のコーナーでは美術史家の
木下直之さんが性表現の規制について、春画やポルノ表現における根底にある「
笑い(的な要素)」について言及しており、特にこれは春画時代から現代の性描写にも脈々と受け継がれる「
性器表現の誇張(リアリティの希薄さ)」や作品としての「
ユーモラス性」こそ「性表現」がリアルな世界などではなくイマジネーションの結晶であることの証明、との訴えを示しています。
また男性同士、日本兵がロシア兵を犯している様を描く「
日露戦争軍人図」は単に男色の模様を描いた作品ではなく、きわめて社会的、風刺的な側面を脚色して描かれたもの。
そのほか「猥褻」「悪影響」とは何をもって指すものか、を題材に語られた章で、昨今逮捕報道が報じられたろくでなし子さんの作品には「笑い」の要素が強いし、問題なのは「取り締まる側がつくり手の意図とは無関係に昔ながらの基準で物事を裁いている事」とも語っています。
今回の春画展では男色を描いた作品もいくつか展示されています。
長らく「ポルノ」としてタブー視されてきた「春画」が美術作品として公開された事はある意味国内においては歴史的な事でもあります。
同時に、規制対象として注目される事も多いBL作品の性表現の在り方を、日本国内で初めて公に開催された『春画展』と交えて鑑賞するのも有意義かもしれません。
【
春画展-shunga-】
全会期 2015年9月19日(土)~12月23日(水・祝)85日間
前期 2015年9月19日(土)~11月1日(日)40日間
後期 2015年11月3日(火)~12月23日(水・祝)45日間
会場 永青文庫 東京都文京区目白台1-1-1
料金 大人1,500円 ※18歳未満入館禁止
開館 9:30~20:00(入館は19:30まで)日曜日は9:30~18:00(入館は17:30まで)
休館 毎週月曜日(祝日の場合は開館)
コメント1
ふばばさん
あら!ちょうど昨日春画展に行ったので凄くタイムリーな記事です。
確かに超誇張した表現が多いから「ユーモラス」とも言えるけど、実際見てみると女性器の方はスーパーリアルな描写に感じましたね。誰のための春画なのか、にもよると思うのです。ポルノグラフィとして流通した本もあるし、大名家のお姫様の輿入れのための私本もあるし。これを眺めたお姫様は恐怖にかられたことでしょうね…。
平日の昼間に訪れたのですが、すごい人出であまりゆっくりは見られませんでした。老若男女万遍なくという感じで、着物姿の年配女性もかなりいらっしゃいましたよ。
私自身の感想としては、今大人としてこういう展覧会を見ることが出来て良かったのですが、「表現の自由」というひとくくりで制限もなしに公開してしまうのは抵抗があるな、という事です。あまりにも「そのものズバリ」だからです。ヨーロッパでは子供連れの鑑賞もあったそうですが、日本的には難しいかな…