この愛を“重い”と考えるか“純粋”と感じるか
JFY2009BLアワードコミック部門で1位、
このBLがやばい2010年腐女子版マンガ編で1位、
腐女子不朽の名作30でも2015年から連続ランクイン
に輝くなど
BL界を総なめにした水城せとな先生の
『俎上の鯉は二度跳ねる』。
発売から時間が経った今でもコアなファンが多い人気作です。また、読み手によって感想が分かれることで有名だったりもします。
本記事ではこの作品を
「人生のバイブル」と崇める筆者がおすすめポイント(完全に独断)を紹介していきたいと思います。
※本作は
『窮鼠はチーズの夢を見る』の続編です。前作から読み始めることをおすすめします。
【あらすじ】
妻と離婚した恭一。だが今ヶ瀬との男同士の微妙な関係は、今も続いていた。今ヶ瀬に抱かれることに慣らされいてゆく日々。ところが、恭一に思いを寄せる会社の部下・たまきの存在が二人の関係を大きく揺るがし始め…!?
【キャラクター】
大友恭一(表紙左):ノンケ、バツ1サラリーマン。上品な外見のため女子からの人気は高い。恋愛面では「流され侍」。恋人がいてもグイグイくる人(自分を愛してくれる人)にNOと言えず関係を持ってしまうことが多い。「自分を大切にしてくれない相手は自分にとっても不要」という考えを持つ。
今ヶ瀬渉(表紙右):現探偵事務所の調査員のゲイ。恭一の大学時代の後輩。新勧時、恭一に一目惚れ。当時恭一には彼女がおり、またノンケに告白する勇気も出ずそのまま卒業。それから数年後、恭一の妻から浮気の調査を依頼され…再会。様々な男と関係を持つが心はずっと恭一一筋。
おすすめポイント①「ホモとノンケの間にある大河」BL作品ってノンケがわりと早い段階でホモにシフトチェンジすること、多いと思いませんか。 「俺はお前が好きだ」→「ぼくも…だいしゅきいいいいいい♥ ♥ ♥ (濡れ場)」みたいな(極端)。それももちろんファンタジーで萌え萌えでとってもオイシイのですが、「もしその辺にいるサラリーマンがいきなりホモに迫られたらどう葛藤するのか」も気になります。『
俎上の鯉は二度跳ねる』ではその部分(男同士ゆえの恋愛の葛藤)がしっかり描かれているのが魅力です。“今ヶ瀬に求愛され、ふつう迷惑なはずなのにここまで寵愛されるとどうしても悪い気はしない。でも俺はノーマルでいたい。ホモなはずがない。だからフェラまではよくても挿入は許さない。でもこの生活は居心地が良いから手放したくはない…。”といった恭一の中の人間らしい狡い考えや損得感情がこと細かく描写されておりお世辞にもキラキラした恋愛とは言えない作品となっています。(恭一だけでなく今ヶ瀬の束縛…いや嫉妬ダルマな所もなかなか人間味あふれます。)だがそこがいい!! こういうカップル、どこかにいるんじゃないの!? と思ってしまうほどのリアルさがこの作品の大きな魅力です。
オススメポイント②「まるで昼ドラのようなピリピリ感」実はこちら、小学館の少女漫画レーベル「フラワーコミックス」から販売されています。元々は“モバフラ”という小学館のデジタル少女まんが誌で連載していた「レディコミの中のBL」。ですがお花が飛び交うようなユメユメしいものではなく、主にアラウンド30からの読者や主婦層をターゲットにしているので、昼ドラのようなドロドロとしたリアリティのある作品となっています。
恭一・恭一の元カノ・今ヶ瀬・今ヶ瀬の元カレの4人で食事をするシーンや、恭一のことが好きな女の子と今ヶ瀬の会話シーンなどやんわりとした修羅場からガチな修羅場まで、ピリピリした雰囲気を味わうことが出来ます。水城先生の匠なセリフ回しにも注目してほしいところ! 筆者もいつか来るであろう修羅場(来ない)の参考にしようと思います。
おすすめポイント③「名言の数々」漫画とは思えないほどの文字数! 台詞ひとつひとつに重みがあり、キャラクターの考えていることが痛いほど伝わってきます。好きな言葉がありすぎるのですが、その中から厳選した3シーンを紹介します。
・「今ヶ瀬今日は寒いよお前の髪を撫でてやりたい」
今ヶ瀬と別れ、今付き合っている彼女との結婚を考え始めた恭一。しかし今ヶ瀬の近況を知りふと恋しくなってしまう場面。
・「可愛いっていうのは“愛す可し”って書くんですよ?」
いつも余裕そうにしている今ヶ瀬の貴重な照れシーン。流され侍のくせに、さらっとこういうこと言えちゃうんだもんな!キィィィィッ!!! 好き!!!!!
・「恋愛は 業だ」
名言中の名言。恭一クン、大きくなったネ; ;(しみじみ)
ちなみに筆者が一番好きな言葉はラストの恭一のモノローグだったりします。
「隘路はお前だ そして俺だ」。ここ、とっても素敵なシーンなのでぜひコミックスでご覧下さい! ! !
ポイント⓪「俺の今ヶ瀬がこんなに可愛いわけがない」(特に主観強め)とにかく今ヶ瀬がかわいいんです‼ 恭一のことが好きすぎてケータイチェックしたりパソコンの履歴みたり…。そんなに好きなのにちょっとしたことでヒステリーモードに入って自分から去ったりでも結局は戻ってきちゃったり。そんな彼を女々しいししつこくて嫌い! という方も多いと思いますが筆者は大・大・大好きです!! こんなに好きになってもらえて恭一は幸せですね。でもこのほぼストーカーのような行動はイケメンだから許されるといった意見も。こればかりは反論できません…。 おしかけ粘着質系男子は2次元限定で愛でます!!
【あとがき】様々なことを乗り越え、恭一は「流され侍」から「漢」になる…! BLでありながら二人の男の成長ストーリーでもあります。結末をハッピーエンドととるか、または二人のこれからを想像しバッドエンドととるかは読み手次第。無限の可能性がありますよ!
筆者はこの作品のなかに「本当の愛とはなんなのか」が描かれていると思っています。愛するがゆえ嫉妬したり妬んだり束縛したり、自分の考えとは真逆な行動をしてしまったり。恋にしろ愛にしろ、綺麗事ばかりでは成り立たない切なさを痛いほど知りました。
えっと、総括すると粘着質系男子×流され侍系男子のCPサイコーーってことです(笑)ちなみにこの二人、後にリバになります♥
ぜひ皆様この作品を読んで、自分は恭一と今ヶ瀬のどちらに近いか、またこの愛を“重い”“純粋”のどちらとして受け止めたのか、教えてください♪
(P.S.少女漫画のイメージが強い水城先生ですが、過去にもいくつかBLを発表しています。(SMAPの同人誌を出していた時代も! )『同棲愛』は8巻(新装版)まである長編ですが、こちらもとても読みごたえのある深~い作品でおすすめです。)
コメント10
匿名1番さん(1/1)
読もうと思ってずっと放置してやつだ!
>昼ドラのようなドロドロとしたリアリティのある作品
昼ドラはドロドロするのが売りなのであって、リアリティなんてない気がするんだけど…(笑)
匿名2番さん(1/1)
今が瀬は普通に男性としてもタイプです。今が瀬にストーカーされたい!
匿名3番さん(1/1)
不朽の名作30選にこの作品が入っていた時にちょっとカンドーしたwww この作品に賛否両論あるのは、いわゆる王道ストーリーではなく「〇〇受けor攻め」や「〇〇モノ」とか一言で括れないことと、登場する女性キャラがしっかり主張してきたりするところがあるからかな。人間の愛憎を描かれていると思いました。あとコラムにあるように名言が散りばめられてます!「隘路はお前だ~」の部分はカンドーした。あんなだらしがない先輩が言うなんて!これを機に窮鼠~&俎上の鯉~がたくさんのひとに読んでもらいたいなー!とめったにしないコメント書きました!
匿名4番さん(1/1)
この作品がなかったら、BL読まなかったよ。
それまで理解できなかったもん。
匿名5番さん(1/1)
初めて読んだBLがこの2作品です。
それからBLにハマりました。
でもこれ以上に心を持って行かれるコミックにまだ出会えてないです。
匿名6番さん(1/1)
ノンケで「流され侍」の恭一も、彼が付き合う女性も大嫌いだけど
今ヶ瀬が可愛いから許せる作品なんだよね。
今ヶ瀬モードで読んだら切なくて鬱になりそうになるんだけど
多くの人に読んで欲しい名作だと思う。
ゲイとノンケの間に横たわる溝ってのは
浅いようで深く、狭いようで広いんだよなぁ・・・
匿名7番さん(1/1)
こういう中身のあるBLが増えればいいな
匿名8番さん(1/1)
男同士ゆえに恋愛に苦戦したり、葛藤したりする
中身のあるblが読みたいです。
エロ優先だったり、ただ単に男が付き合う内容になってたり・・・
名作って希少ですよね~ あ、希少だから名作なのか!
匿名9番さん(1/1)
キレイなBLしか知らなかった私に、水城先生の本をそっと貸してくれた当時のクラスメイト。10年経った今でも感謝してます。
匿名10番さん(1/1)
遂に実写化ですよ!
大伴→大倉忠義
今ヶ瀬→成田凌