『どうしても触れたくない』。今では誰もが知るBLの金字塔作品。
発売から7年が過ぎ、レビューは尽くされ、そして語り尽くされたような気がします。
しかし、もう絞られすぎてカラカラになるどころか、新たな需要が次々と生まれている永久機関のような作品なのです。今回はミステリアスな作品の足取りをもう一度、見なおしていこうと思います。
発売当時ちるちる内での意外な反応2008年9月ヨネダコウの商業デビュー作として『どうしても触れたくない』が発売されました。
デビュー作であったにもかかわらず、amazonのレビューでは、発売後から注目を浴び、評価の高いレビューが続きました。
しかし当時、同時期に発売された
『世界一初恋』『
同級生』『
アイツの大本命』のような、目立ち方はしていませんでした。
『このBLがヤバい!』などでも3位にランクインしましたが、今の評価に比べてやや地味な順位という印象です。
当時の人気コミックBLの傾向とを比べると、本作は不思議なアウェイ感が漂っていたのです。
本格的にレビューされるのは発売4ヶ月後からちるちるでも
本格的に注目されたのは、発売4ヶ月経って年が明けてから。
先取の精神が強いちるちるでも、当時はまだ新しい作品に対して警戒感を持つユーザーが多数でした。
『純情ロマンチカ』で有名な中村春菊の新シリーズ
『世界一初恋』には発売直後にレビューがつきましたが、『
同級生』『
アイツの大本命』といった作品でも本格的にレビューされるには数ヶ月待たねばならなかったのです。
そして『どうしても触れたくない』に触れるまでにはそれ以上の時間がかかっているのです。
2009年初頭の当時のレビューを拾ってみると
イメージしていたものより、人間臭くてドラマティカル。 何気ない言葉や動作の事細かい描写が上手くて、驚きました。 映画を見ているような気分。静止画なのに動いているように見えるんだもの。凄いよ。十架さん今さらですが、私もこの漫画を称えたいです。賑やかしの一隅に参加させてください。大人気の一冊ですが、私もどっぷりやられました。泣きました。期待値を上げまくって、かなりハードル高くしてる状態で読んだのに、それを上回る衝撃でした。あらすじっぽい話はもういらないよね。もし未読な方がいるなら、全員に押し売りしたいです。むつこさん帯に“木原音瀬氏推薦!!”ってあったので、多大な期待を持って読みました。期待は裏切られませんでした。(中略)要所要所に泣かせる素材がちりばめられていて、おばさん結局泣きました。久江羽さんやっとこさ購入、遅すぎだろうってくらい乗り遅れてます、すでに4版目なのですね。初コミックスにしてこんなに増刷するのなんて珍しいんじゃないですか?(そうでもないのかな?)ここで評価が高いものでも読んでみたら自分には合わなかったりすることもあるのでちょっとドキドキでししたが。読んでみて納得。これはいいわ♪高坂ミキさん当時の常連レビューアーでも、おっかなビックリ、木原音瀬先生の推薦があっても、半信半疑、発売4ヶ月後でも、なかなか手をだせない状況だったのです。
今のちるちるでは考えられない慎重さです。
当時は、新人が注目される雰囲気はあまりなく作家買いオンリーの風潮。新人は本当にがんばらないと注目してもらえませんでした。
そうした逆風をすべて受け止め押し返し、ちるちる内での『どうしても触れたくない』の評価は、発売後半年を経て定まったのです。
発売から2年、ブームは続く発売から2年、2010年になっても『どうしても触れたくない』の注目はかえって増すばかり。
次々と感動を綴るレビューが続きます。
しかしそのうち批判が許されない雰囲気も見られるようになり、そうした動きに対して冷静にレビューをしようという意見が見られます。
実際にその頃から『どうしても触れたくない』は、他の上位作品に比べ、評価が分かれやすくなっています。
今回のコミックランキング上位に入った中村明日美子、日高ショーコに比べると、「神」以外にも万遍なく評価が入っており、神評価だけが多いというわけではありません。
その評価の幅の広さから『どうしても触れたくない』はさらに話題となり、関心のなかった層がこの作品を手に取り、レビューが再生産されるのでした。
5年後、待望の商業2作目発売『どうしても触れたくない』が発売されてから5年後、2013年に出た2冊目
『囀る鳥は羽ばたかない』は新たなヨネダコウ像をユーザーに与えました。
キャラクターが実に強烈で、かつ裏社会というわかりやすさもあり『囀る鳥は羽ばたかない』は熱狂的に受け入れられます。そしてヨネダコウの代表作と考えるファンも次々と生まれるのです。
『どうしても~』のようなじわじわこみ上げる内容と違い、若年層はこちらの作品に入り込みやすく、ヨネダコウといえば『囀る鳥~』をイメージする方が多くなりました。
そしてスピンオフ発売 そして『どうしても触れたくない』のスピンオフ
『それでも、やさしい恋をする』が2014年に発売されます。
こちらは『どうしても~』でも人気だったサブキャラ小野田の話です。小野田は前作から人気の高かったキャラ。ストーリーメインだった『どうしても~』の展開に、『それでも~』はキャラ萌えの要素が加わります。
同人誌をまとめた形の本作は、発売前は、本編の余韻を楽しむ気持ちで購入したファンが多かったはずです。
しかし本編よりこちらが自分に合っている、スピンオフという位置づけでなく、あわせて1つの作品として読むとさらに楽しめる、という評価が出始めます。あれだけ偉大すぎる本編以上の評価を獲得するのは相当に難しいことですが、ヨネダコウは『囀る鳥は羽ばたかない』『それでも、やさしい恋をする』と期待過剰な読者を満足させてしまうのです。
6年目の映画化そして2014年1月『タクミくんシリーズ』以来、久々のBL原作実写映画化されます。
2014年5月に劇場公開され、予想以上の集客でした。ちるちる内では当初このニュースに対して、賛否が大きく別れましたが、こちらも原作の世界をしっかり映像で表現したことが評価され、実写化の動きを加速させるきっかけとなり、さらに原作の評価を高める機会になりました。
他作品と比較して相対的な評価に『どうしても触れたくない』
『囀る鳥は羽ばたかない』
『それでも、やさしい恋をする』
上記3作が出揃ったあとの『どうしても触れたくない』のレビューでは、他作品と比較して、『どうしても触れたくない』の位置を把握する読み方となりました。
さらに2014年に実写化された映画とも比較して語られ、LGBTの動きに関連しても語られます。
最近のレビューを見ていきましょう。
神評価に全力で納得です。こんなにもきちんと男同士がマイノリティであることを根底に置いて描いているBLはないんじゃないでしょうか。痛いです。。。萌かどうかだと判断し難い。絵柄的にもえっちシーンに萌えたりすることはないのですが、やはり何処かリアルな言い回し等に涙する作品。題名も成程と思える程ではないけれど、何かを否定したいのが伝わってきます。
「それでも、優しい恋をする」を先に読みました。(その話も少し混ざってます)
ヨネダさんの作品は受け攻め両方に感情移入してしまうほど入り込んでしまうのですが、それらと比べると今作は心に響くものが弱かったです。
主人公の2人にあまり感情移入できなかったからだと思います。
他の関連作品、媒体がないときの評価に比べて、相対的な評価ができるようになってきたのかもしれません。
また時代とともに語られるスタイルに変化が見られます。
時とともにたえず変化する『どうしても触れたくない』の意義と存在感。
『どうしても触れたくない』は、BL史上、もっとも読み手を厳密に選ぶ作品だったのかもしれません。
しかし、これだけ評価がはっきり分かれる作品だからこそ、発売後7年経ても、レビューが耐えず、この作品の核心にはどうしても触れられないからこそレビューが尽きないのです。
発売から7年後もますます輝き続ける、このような作品が生まれたことは奇跡といっていいかもしれません。
コメント4
匿名1番さん(1/1)
どうしても~の辺りからリアリティー重視めのBLが増えたような…。
関係無いけど囀ずる~のファンなので最近の山口組分裂のニュースを食い入るように観てしまう(笑)。
匿名2番さん(1/1)
ストーリー重視でなく、見た目重視な私は大分損してるな~
年下×親父受け増えろ!増えて!!
匿名3番さん(1/1)
じわじわだったかな?発売当初から話題になってた記憶。このBLがやばい3位は、発売日が集計期間ギリギリの9月だったから逆によく入ったと思うよ。
匿名4番さん(1/1)
ヨネダコウさんが描く受け男っぽくて好きだわ。
見ててかっこいいんだよね。恋愛以外のストーリーもしっかりあって、大人向けの漫画って感じがする。
受けにも攻めにも惚れたい二次系腐女子だから受けもカッコイイ作品が好きなんだけど、商業blは受けの内面が少女漫画のヒロインなのがけっこう多くて、二次の少年漫画的なキャラが好きな私としてはなんか物足りない感じがする…。
読者の大半が女性だから受けに感情移入しやすいよう編集がそういうの求めてるってのもあるんだろうけど…。
恋愛だけじゃない感じもいい。仕事やキャラを取り巻く人間関係にも広がりがあって…こういう路線の漫画もっと増えてほしいなあ