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夏のBL課題図書! JUNE&耽美 3溺

2015/08/22 12:45

夏休みの宿題の定番、読書感想文は名作に触れるよい機会ですよね。もちろんBLにも名作はたくさんあります! 今時のBLもいいけれど、旧作の魅力を改めて味わうのもまた一興。ということで、夏のBL課題図書におすすめするJUNE&耽美路線な小説作品を、独断と偏見に基づき選んでみました。なお、古い作品は絶版になっているものが多いのですが、今回は新装版があり、現在書店で入手可能な作品を選んでいます。


濃厚な執着渦巻く愛憎劇
影の館
著者:吉原理恵子 / 挿絵:笠井あゆみ / Chara文庫(2013年:旧版1994年)

 天上界で最も神に愛されし者、天使長・ルシファー。そのルシファーと共に神の双手と愛でられる大天使・ミカエルは、ルシファーにとって至高の友であった。しかし、ある時ミカエルは精気を得るため幽閉される堕天使『シャヘル』としてルシファーを求め…。

 天界を舞台としたファンタジー。大天使が天使長に禁断の想いを寄せているミカエルが暴走し、無理矢理関係を結びルシファーを堕天させ自分専属の『シャヘル』にしてしまいます。『シャヘル』は端的に言うと性的奴隷なので、当然これは大事件。にもかかわらず、天上界の複雑な思惑が絡んだ結果お咎めはなく、これをきっかけに世界のバランスが崩れていく…というのが大きな流れ。世界観が壮大ですが、ミカエル、ルシファー、神の三角関係なお話です。お耽美です。強引に身体の関係から始まるものの、ミカエルの愛情表現は端から見ると分かりやすく、基本的に激甘なので悲壮感はあまりありません。独特の世界観と文体に慣れれば読みやすい作品だと思います。
 吉原先生の名作はいくつもありますが、どれも濃厚な執着渦巻く愛憎劇がベース。初出は1993年と20年以上前の作品ですが、色褪せない魅力があり、何度か新装版も出ているこの作品。JUNE感をどっぷり味わい方にオススメです。
 なお、続編である「暗闇の封印」は新装版が出ていませんが、ドラマCDは現在でも購入可能です。吉原先生自身が脚本を書かれ、気合いたっぷり、活字に勝るとも劣らない完成度の高いCDとなっているので、気になる方は是非どうぞ。


快楽と執着と情熱の雁字搦め
蘭陵王
 著者:山藍紫姫子 / 挿絵:座裏屋蘭丸 / ハーレクイン・ラブシック(2015年:旧版1994年)

 舞楽『蘭陵王』を元に創作されたバレエを売りにしていたキドバレエ団は、裏で劇を模した売春を行い、花形ダンサー・土御門玲司の身体も売られていた。ある日、団長と後援会長が何者かに殺さるという事件が起こる。恵理子の夫で刑事の桐生勲は、密かにその事件を追っていたのだが…。

 という、焦臭いバレエ団を舞台にした殺人事件から始まる、ダンサーと刑事の物語です。桐生は事件に疑問を抱き玲司に接触するのですが、次第に玲司に溺れ、玲司もまた桐生に心を寄せるように。最終的にはもうひとり男が加わり、三角関係に近い、桐生を挟んだ愛憎関係に発展していきます。惹かれ合いながらも、互いに許されざる相手。それぞれに複雑な事情を抱えた男たちの関係が、とても淫靡で退廃的。憎しみと愛情が絡み合い、ぐいぐい話に惹き込まれます。譲れない一線がありながらも精神的に不安定で快楽に弱い玲司と、そんな玲司を救いたいと願い、自らも癒しを求めている桐生。そして、一途な桐生への想いと玲司への狂気的な執着を募らせていく佐野。それぞれ情熱的でありつつも異なるタイプの3人が、どこへ堕ちていくのか。最後まで目が離せません。
 山藍先生は今も昔もBLというより耽美作家さんで、ふなたりなどの特殊な設定、アブノーマルなプレイも多く出てくるため読む人を選ぶかもしれません。でも、SM的な関係がありつつ、快楽と執着で雁字搦めにされた受が溺愛される、そこに萌えを感じるというそこのあなた。嵌まること間違いなしです!


平穏な暮らしを突き破る生々しい感情
眩暈
著者:五百香ノエル / 挿絵:今市子 / Hollyノベルス(2012年:旧版1998年)

 家族ぐるみの付き合いをしている隣家の同級生・塚田澄に、冷たい態度を取られながらも付き従っていた苅田圦也。そんな小学生時代のある日、避暑地で衝動のまま交わしたキスを人に見られてしまい、それ以降圦也は澄に避けられ疎遠になってしまう。高校生になり自らの性的指向を自覚するようになった圦也は、澄に抱いていた感情が何だったのか、そしてその大きさを目の当たりにしていくのだが…。

 同性に惹かれる自分から逃げた男と、その世界で生きていく事を選んだ男。BLでは珍しくない展開ですが、大きなすれ違いに発展し、長い年月をかけ傷付け合いながら関係を築いていく過程が丁寧に描かれています。自分の中にある感情を恐れた澄は女性と付き合うようになり、行き場のない想いを抱えた圦也は大鹿と出会いマイノリティの道へ進んでいく。異なる道を選んでも、惹かれ合う気持ちから逃れることは出来ず、別れと出会いを繰り返すふたり。なかなか上手くいかない関係が焦れったいですが、背景にあるそれぞれの性格や資質、環境などが話を支えていて、ふたりの気持ちを理解しやすいです。特に、プライドが高い反面心の弱い澄の自分勝手さは苛々させられる事もありますが、何故か憎めないのは、自己嫌悪と諦めの中でもがいている澄が哀れで、そこに垣間見える人間くささに共感してしまうから。澄に振り回される健気な圦也に感情移入する話かと思いきや、意外にも臆病でおばかさんな澄が愛おしくなってくる話になっています。ダメな男ほど愛おしい。
 五百香先生の作品は今も昔も、一見して穏やかな雰囲気であっても、そこに思いがけない鋭さが隠されている事が時々あります。生々しい感情にハッとさせられる、そうした部分がJUNEの雰囲気に繋がっているのではと感じます。吉原先生や山藍先生のような派手さはありませんが、心に切り込んでくるような作品が好きな方にオススメ!

記者 にゃんこ


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コメント4

投稿順 | 最新順

匿名2番さん(1/1)

こういう記事を待ってました、ありがとうございます(*^^*)山藍先生のは持ってるので、二作ポチりたいです。

匿名3番さん(1/1)

『影の館』旧版は大泣きした作品です。
新装版の方は未読ですが笠井さんのイラストが作品の雰囲気にピッタリで美しいですね~。
続編が発売されたら2冊まとめて読みたいと思います。

匿名4番さん(1/1)

笠井あゆみさんの表紙、イイ。
これ以上は無理っぽい開脚度にいつも目がいくわー

匿名5番さん(1/1)

笠井あゆみさんの表紙イラストを見て
影の館は大幅に書き直されたのかと思ってしまった。どうなんでしょう。
むかーし雑誌で読んだ時は挿絵の(確か嶌峰麻利子さんだったような?)の印象もあってか
宗教画にある大天使の姿形を想像して
カタカナ名の登場人物や舞台設定に四苦八苦しながら読んだような記憶があるんですが
最新版は少年(幼児にも見えちゃう)と青年のようになっているんですね。
完結編の暗闇の封印のキャラ設定に合わせたのかしら。
読むのが楽しみなような怖いような・・。

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