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BLの基本はリーマンだ!初心者向けリーマンものベスト3 『恋愛操作』

2009/11/27 00:00

どんな作品をBL初心者にすすめればいいのだろう…
きっと人それぞれ、趣味は違うし、許容度も差があるはず。読んだ1作目でその人の人生を決めかねない1作です。これは大変! ええと、ええと、いろいろ考えた挙句に全然まとまらないよ?なんて状況に陥ってしまったことはありませんか?
そんな方にオススメしたいのが鉄板リーマンもの。
「恋愛操作」蓮川愛 「どうしても触れたくない」(ヨネダコウ) 「ホネヌキにされたい」(北上れん)は、お友達もきっと受けいれてくれる初心者3部作ですよ。


初心者の人に何を薦めれば、こちらの世界に引きずり込めるのか。友人であればある程度趣味嗜好が分かるけれど、大勢の初心者の方を相手にするとなるとそうはいかない。となると一番大切なことは、できるだけ誰かの地雷にならないようにすること、だ。

トラウマになりそうな終わり方はよくない。成人と18歳未満の恋はいかがなものかと思うひともいるだろう。暴力的なものもよろしくなさそうだし、ショタ同士やオヤジ同士、あとは体毛もきっと避けた方が無難だ。だからと言って、一見女の子みたいな受とか、一切性描写がない本を薦めるのも、看板に偽りありという気がする。

つらつらと述べておいて、じゃあ何を薦めるのかというと、どうにもこうにも一冊に絞りきれない。とりあえず作画が安定していて、内容が王道BLで、かつ大半のひとの地雷に触れないであろう人気作品をいくつか紹介するので、一番好きだと思う表紙のものを買って読むといいのではないかと思います。複数買いするのも可、よ!

ひとつめは「恋愛操作」(蓮川愛)。学園物と並んで多いサラリーマン物だけれど、蓮川さんほどスーツを美しく描く作家もそうそういないと思う。わたしはこの作品でスーツベストの素晴らしさに気づいたと言っても過言ではない。

恋愛操作と書いて恋愛コントロールと読むこの話は、カフェやバーなどの経営をしている奥村社長と、取引相手であるインテリアデザイナーの山代の物語だ。初対面から恥ずかしげもなく甘ったるい言葉で山代を口説こうとする奥村と、内心動揺しつつも素っ気ない態度でかれをあしらおうとする山代の駆け引きが良い。流行りの言葉でカテゴライズするならば、山代はクールビューティで毒舌ツンデレ。かれが冷たくするたびに、その冷たさがいいんだとにやついて余計に迫ってくる奥村のタフさがすばらしい。普段は駆け引きさえも楽しむ余裕があるかれが、たまに必死になっているところのギャップもすばらしい。

はっきりした年齢は出ないけれど、結構いい年をした二人が、柄にもなく相手の些細な言葉や態度に振り回されて真っ赤になっているあたりが微笑ましくておすすめ。ちょっと年齢行きすぎだよ、というひとには、奥村の経営するバーで働く青年とその客の恋もあるので大丈夫。

お次は「どうしても触れたくない」(ヨネダコウ)。こちらもサラリーマン物だけど、年齢はもう少し下がる。ある理由で転職した嶋と、かれの新しい職場の上司である外川のもどかしい恋愛と、それぞれが過去と向き合って乗り越えてゆく過程を描いた作品。

とにかく各所で泣いた、と言われた一冊。もともとあまり雄弁な方ではない嶋は、過去の事件によって、余計に感情を表に出さなくなってしまった。そんなかれが赴任した部署にいたのが、人当たりがよくてお調子者で誰にでも好かれる外川だ。自分とは正反対の相手にお互い興味を持った二人は、性格同様に真逆の態度をとった。極力関わらないようにつとめる嶋に対して、外川は積極的に交流を持とうとする。半ば強引にかれに振り回されていくうち、嶋は外川の過去を知る。そして内容は違えど、自分と同じように辛い思いをした外川が、明るく振舞うことで感情を悟られないようにしていることを知って、嶋はかれに急激に惹かれていく。

しかし真剣に外川を思えば思うほど、好きになればなるほど不安も募る。自分でいいのかという不安。また傷ついてしまうのではないかという不安。相手を好きだと思う気持ちと同じくらい、自分のことだって守りたい。過去についた傷によって臆病になる嶋と、その嶋の態度に傷つく外川が切ない。お互いのことが好きなのに、なかなかうまくいかない。

一足飛びに展開するような恋ではなく、とにかく丁寧に二人の関係の変化が描かれている。少しずつ築かれていく絆が心に沁みる。ディープだけれど読後感がすごく良い。

最後は「ホネヌキにされたい」(北上れん)。敏腕サラリーマン保科と、かれの家に下宿している大学生兼ファッションモデル篤史のラブコメである。篤史はいわゆる「へたれワンコ攻」カテゴリのど真ん中にいるようなタイプで、非常に見栄えが良くて優しくて家事能力が高く、恋人なんてよりどりみどりであろうかれが、とにかく保科一筋なのが微笑ましい。仕事は出来るが生活能力が低く、口の悪い保科が何を言ってもにこにこ笑って受け入れる。好きだという気持ちを全身で表現して憚らない。キャパシティが大きすぎるくらい大きいという長所があれど、ちょっと鈍感でヘタレなので、保科の愛情表現に気づかないこともままある。たまには強く出てほしい、という信号を完全に見逃す。この一長一短っぷりが非常にかわいらしい。

それで保科が苛立っても、結局は篤史が受け入れて受け止めてのほほんと聞き流して、それで万事解決。保科と一緒に読んでいるこちらも癒されてしまう。大きな事件などとくに起きない日常だけれど、二人のキャラクターときれいな作画でいい塩梅。

複数買いするのも可、よ!(二回目)

紹介者プロフィール:まゆみ
音楽とか舞台とか洋服とか、とにかく好きな人や物が多過ぎて見放されてしまいそうな月に負け犬的おたく。本を売って稼いだお金で、本を買って生きています。つまり本屋で働いています。誘惑にはすぐ負けます。 物心ついたらおたくで、気がついたら人生の半分以上腐っていました。節操も地雷もありませんが、歴史物・宗教物・主従物・中学生攻・親の愛を知らないまま大人になった子供、みたいなシチュエーションが好物です。おやじとアンドロイドも大好きです。 その他、本の感想と日常の出来事を書いているブログはこちら。 http://defeated.jugem.jp/

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