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『囀る鳥は羽ばたかない』に張り巡らされた数多の伏線と2人の愛

2024/10/01 16:00

ついに9巻が発売!一筋縄ではいかない2人の想いを大考察

 

 

10年以上続くヨネダコウ先生の大人気シリーズ『囀る鳥は羽ばたかない』。そのシリーズ最新刊『囀る鳥は羽ばたかない 9』が、10月1日に発売されました!

 


『囀る鳥は羽ばたかない』シリーズ、なんといっても伏線の数が多い……! 読んだことがある人ならだれでも、その伏線の多さや細かさに驚いたはずです。かくいう筆者も大ファンですが、読み返すたびに新しい発見があり、毎度悶えております。

そんな伏線によって、恋心の揺れ動きが細かく描かれていきます。確実に両想いな矢代と百目鬼が、すれ違いを重ねてお互いに苦しんでいる様子は、読んでいてもどかしく、切ない気持ちでいっぱいになります。2人の恋心は、どのように膨れ上がっていっているのか。また、矢代と百目鬼がなぜこれほどにまですれ違ってしまうのか……。

ということで、この記事では、『囀る鳥は羽ばたかない』シリーズの伏線を回収しながら、矢代と百目鬼の恋心の変化を考察していきます! 至らぬ点も多いと思いますが、最後まで楽しんでいただけたら幸いです!
※9巻を含む本編のネタバレを含みます。ご注意ください。


◆目次◆
1.2人はいつから恋をしていた?
2.ヤクザを抜けさせたい矢代⇔どんな世界でも側にいたい百目鬼
3.髪に触れる描写は、最新刊表紙にもつながる伏線……!?

 
 

作品概要


『囀る鳥は羽ばたかない』シリーズとは
2013年に第1巻が発売されてから、毎年新刊が発売されるごとにBLアワード1位に輝いてきたレジェンドシリーズ。累計発行部数は2023年3月の時点で220万部を突破しています。
2019年には、『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』というタイトルでアニメ映画化もしています。
 

コミックス『囀る鳥は羽ばたかない 1』作:ヨネダコウ

 

 
作品詳細はこちら

 

STORY
ドMで変態、淫乱の矢代は、真誠会若頭であり、真誠興業の社長だ。
金儲けが上手で、本音を決して見せない矢代のもとに、
百目鬼力が付き人兼用心棒としてやってくる。
部下には手を出さないと決めていた矢代だが、
どうしてか百目鬼には惹かれるものがあった。
矢代に誘われる百目鬼だが、ある理由によりその誘いに応えることができない。
自己矛盾を抱えて生きる矢代と、愚直なまでに矢代に従う百目鬼。
傷を抱えて生きるふたりの物語が始まる──!

H&C Comics ihr HertZシリーズ

(出版社より)

 

  
筆者は最初、矢代は百目鬼で遊んでいるだけであり、恋愛感情としては百目鬼の一方的な片想いだと思って読んでいました。最新巻まで読んでひしひしと感じました。最初から矢代も百目鬼もお互いベタ惚れだったということに……。 
 
百目鬼からは、はっきりと矢代への恋愛感情を伺うことができます。「綺麗だと思ってました頭のこと、あっち(前の事務所)にいた時から」という発言(第1話)や「立ってるだけですごく綺麗で、こんなにきれいな男(ひと)がいる世界なら、ヤクザも悪くないかと思いました」という発言(第1話)から、一目惚れであるということが丸わかりです。
ボイスドラマCDの第4巻に収録されている「遠火」にも、百目鬼がヤクザになる前に矢代を一目見て、その美しさに見とれてしまうシーンがあります。
 

そんな一目惚れから始まった小さな恋心が、尊敬を含む莫大な恋心になるきっかけとなったのが、百目鬼の妹に「百目鬼の胸ポケットに妹が賞を取ったときの新聞の切り抜きが入っている」と教え、妹との関係を修復してくれたこと。第6話で影山に、矢代に恩を感じている理由を聞かれたときに、妹が胸ポケットを見るシーンがフラッシュバックしている描写からも明らかです。

義理の妹に恋愛的に好かれていると噂になり、距離を置いてしまったせいで、実の父親から性暴力の被害を受けていることに気づけなかった百目鬼。深い傷を負わせてしまったと罪悪感を抱いている百目鬼と、自分のせいで父親に暴力をふるい、警察官をやめて刑務所に入ることになってしまったことを恨まれていると感じている百目鬼の妹……話もできなくなるほど拗れた2人の関係を溶かしたのは、間違いなく矢代の一言があったからです。
百目鬼の妹に良いことを伝えたということを百目鬼には言わず、「妹のせいでお兄ちゃんは現在インポに悩んでる」とわざと怒らせるようなことを言い(第2話)、強制的に2人が会える状況を作ったのがさらにいいですよね! 普通に伝えるだけじゃ、百目鬼は妹のもとには向かわないと考えたのでしょうね。矢代がいかに人を良く観察して、理解しているかが分かります。

一方で矢代は、恋をしているところが分かりにくい……。基本的に矢代は自分のことを語りたがらないので、矢代目線で描かれている時も、決して「好き」とは言わないのが特徴。百目鬼に対して、「かわいい」と思ったり、特別な感情を抱いていることはわかるんですが、それが恋なのか、という決定的なことはなかなか語られません。
 
そんな矢代ですが、百目鬼に“ベタ惚れ”であると分かる一面が。それは、初めから「百目鬼をヤクザの世界に染まらせたくない」という信念をもって行動しているところ。信念については次の章で細かく語らせていただきますが、自分が苦労した世界に百目鬼を連れ込みたくない=大事にしたいと思っていることから、他の男とは違い特別扱いをしていることが分かります。
 
 

この百目鬼に対する特別扱いは、矢代がずっと片想いしていた相手・影山への対応と似ている気がするのは筆者だけでしょうか……。
百目鬼に出会うまで、10年以上影山に片思いをしていた矢代。影山の病院が立ち退きさせられそうになった時に、三角に土下座をしてお願いするほど影山のことが好きだったのに、高校卒業後からヤクザになるまで一切連絡を取らなかったのも、再会した時に「ヤクザの俺がそんなに嫌ならいっそ知らない人間だと思ってくれて構わない」とわざと突き放すような発言(第7話)をしたのも、好きだからこそ、大事な存在だからこそ巻き込みたくないという気持ちがあっての行動なのではないかと思います。
 
 
 
続いて、先ほど少し触れた2人の信念について迫っていきたいと思います!
 
百目鬼をヤクザの世界に染まらせたくない」という信念を持っている矢代は、百目鬼と盃を交わしませんでした。ほかにも、無理にでも情報を聞き出すために「吐かせろ」と指示したのを撤回して「“吐かせろ”じゃなくて聞き出せ」と言い換えたり(第18話)、アパートを「引き払おうかと考えてます」と発言する百目鬼に「それはやめとけよ」と発言したり(第22話)したのも、ヤクザの世界で手を汚さず、一般人に戻れるようにするための行動です。元平田の掃除屋である、甘栗も言っていたとおり、「百目鬼は矢代に守られている」(第29話)んです。

しかし、これがなかなかうまくいかない。なぜなら、百目鬼は「どんな世界でも矢代の側にいたい」という相反する信念をもって行動しているからです。「側にいたい、なんでもする、否定もしない、だからずっと近くに置いて欲しい」という発言(第6話)や「あの人の役に立ちたい、今の俺にはそれ以上に大事なことがありません」という発言(第10話)、「頭の手足になり、頭の望むことをするだけです」という発言(第12話)に、その信念がにじみ出ています。

ヤクザをやめさせたい矢代と側にいたい百目鬼の攻防戦が繰り広げられているわけです。なんとしてでも側にいたいがため、百目鬼は指を落としたあとに接合せず覚悟を見せたり、矢代をまもるために捨て身で行動したりします。これによって、顔に大きな傷を作って、“いかにもなヤクザ”になってしまうのですが……。百目鬼は矢代の感情が読めないので、矢代の行動が愛情からくるものだとは思っておらず、ただ「突き放されている」と感じてしまいます。これが、2人のすれ違いにつながってしまうのです……。切ない……。

平田との抗争のあと完全に百目鬼を切り離したのも、百目鬼が一般人の世界に戻れると考えたうえでの行動でした。そのため、4年たって再会した百目鬼が、組に入って墨も入れ、いかにもなヤクザになってしまっていることに怒りを覚えてしまうのです。お互い多くを語らないタイプなのが裏目に出てしまっています! 両想いなのにね(怒)!

しかし、この信念は恋心によって揺らぎます。百目鬼はだんだんと自制がきかなくなり、他の男に抱かれる矢代を見たくない、自分のものにしたいという独占欲が湧き出てきます。この独占欲が、「俺しかいらなくなるように、俺しか欲しくなくなるように」(第24話)という発言を生み出すまでに。

矢代は、手を離さなければならないと思いつつも、関係を断つことはできなくて……。「最初から手離さなきゃいけなかった、手離したかった、手離したくなかった、お前が可愛かった」という発言(第22話)に本心がよく表れていますね。「自分ではどうにもできません」という百目鬼の発言(第16話)と、「お前をどうにもできない」という矢代の発言(第22話)からも、お互いに自制できないほどの恋心を持っていることが伺えます! もっと素直になっていいのよ……。
 
 
 
先ほど、2人を「多くを語らないタイプ」だと述べましたが、言葉は少なくとも、行動や表情には結構出ているんですよね。ただ、いい意味でも悪い意味でも「恋は盲目」。読者には気持ちがモロバレでも、彼らはその行動の意味に気づかないんですよね……もどかしい……。

そんな行動や表情の描写として、一貫して描かれる身体描写があります。とくによく出てくる描写が、目に関する描写と、髪に関する描写です。

まずは目についての描写。矢代は百目鬼が初めて事務所に来て、2人きりで話した時に「…いい目だなあ」(第1話)と発言し、その目線で百目鬼のことを気に入ります。百目鬼は人のことをじっと見る癖があり(矢代に対してだからかもしれませんが)、その癖は矢代に「…そんなに見るなよ 穴が開くだろ?」(第1話)といわれるほど。
しかし、ある時期を境に目をそらす描写が多く描かれるようになります。その理由は、矢代に恋をし、勃ちそうになってしまったから、というなんともピュアなもので……。百目鬼は「もし勃ったら、頭は俺を側に置かなくなる気がする」(第6話)と薄々思っているため、勃たないよう目をそらしているのだと思われます。
そんな百目鬼に矢代も気づいてしまい、自分を見ないことに対して腹を立てるように。しかしその切実な理由は露知らず、映画館で百目鬼にフェラを断られ(第7話)嫌われたのかと勘違いしてしまうのです。そのため、井波との情報取引のためのセックスを、百目鬼に「見るか?」と問い、見ないと断られたとき(第15話)も、「もうそういうの幻滅~勘弁~みたいな?」「本当は見たくも触りたくもねぇけど上司だし?」などと、嫌われている前提の女々しい言い方をしています。実際には、「ほかの男に触られている頭を見たくない」だけなんですけどね。ここでもすれ違ってる……(辛)。

「見られたい」という願望を抱えているものの、井波とセックスした後一人でする際、百目鬼を部屋から出そうとしたり(第15話)、百目鬼とセックスした時に「見るな」と言ったり(第25話)、正常位でするのを拒んだり(第25話)と、「見られたくない」という気持ちも同時に芽生える矢代。これは、恋をする相手にすべてを見せることに対する“恥じらい”からくる行動だと筆者は考えます。

また、矢代は平田に殴られて右目が見えなくなるわけですが、見えなくなった右目をふさぐ描写が2回出てくるんです。ここにも伏線が隠されていそうだなと思っているところです。

次に髪についての描写。髪についての描写は「サラ…」と揺れる矢代の髪を、百目鬼が眺めている描写から始まります(第1話)。そんな髪を「触ってみたい」と思うようになり、寝ている矢代の髪を触りそうになったときは(第1話)理性が働いて一度やめますが、お風呂場でフェラをしてもらっているときに、ついに我慢できなくなり、「ずっと髪に触ってみたかった」と発言(第3話)して髪に触ってしまいます。モノローグでも「俺はこの人の髪に触れるのが好きだ」と発言(第4話)。こうやって書き出すと、いかに百目鬼が矢代の髪の毛を好いているかわかりますね。
 
これだけ頻繁に描かれる髪についての描写ですが、こちらも物語の伏線になっています!
初めて百目鬼が矢代を抱くときに、「あなたの髪に触れるのが好きでした(中略)寝ている隙に何度か触りました」と発言(第24話)するのですが、ここで描かれる矢代の回想に注目していただきたい! この回想は、警察官の服を着た百目鬼が廊下で座って寝ている際に、百目鬼の髪にキスをするシーン(第5話)。しかし、このシーンが最初に登場する第5話では、キスをしているかどうかはわからないように描かれています。そのため、この回想ではじめて全貌が描かれており、読者はここで初めてキスをしていたことに気が付くわけです。ここで矢代は驚いた顔をするのですが、驚いた理由は「寝ている間に髪に触れている」という共通点に気づいたからだと考えています。百目鬼にとって、寝ている間に髪を触るということは愛おしさの表れであり、それと同じ行動をしている自分が、百目鬼に対して愛おしさを抱いているということに初めて気が付いたんじゃないかなと筆者は感じました!
 
この髪に関する伏線、9巻の表紙にもつながっているのでは……? ここで、9巻の表紙をもう一度見てみましょう。



矢代が百目鬼の手を摑んで、自分の頭の近くにもっていっているように見えます。これは「髪の毛を触ってほしい」という矢代の本心の表れなのではないでしょうか? 百目鬼にとって髪を触るということが愛おしさの表れであると矢代は気づいていて、その行為をしなくなった百目鬼に気づき悲しんでいるのだと思います。「自分のことを愛おしく思ってほしい」という気持ちが、「髪に触れてほしい」という気持ちへとつながっているのではないでしょうか

******************************

2人はそれぞれ信念をもって行動しているわけですが、恋心は理性でどうにかできるものではなく、その信念の揺らぎ(本心)と戦っている様子がよく描かれています。信念が相反するものであることと、お互いに多くを語らない性格が、すれ違いを助長しているのではないかと考えられます。それゆえ、両想いにも関わらず、こんなにもうまくいかないのです。もどかしい~!!
お互いが素直になって想いを伝え、完全な両想いになれる日はくるのでしょうか? 2人の行く末をずっと見守っていきたいですね!

まだまだ語り足りないですが、ありえないくらいの分量になってしまうので、この辺で締めさせていただきます。本作にはほかにも、たくさんの伏線やリンクするセリフがありますので、これを機にじっくりと読み返していただけたら嬉しいです! 皆様の考察もコメント欄でお聞かせください!!
 
最新9巻も要チェックです!

 

担当記者:みんみん
2000冊の漫画とともに生活をする生粋の漫画ヲタク。攻めに可愛さを覚えている。激重ヤンデレ執着攻めと、長年片想い拗らせ受けに目がない。

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コメント3

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匿名3番さん(1/1)

そうなんです、そうなんです!だから何度読んでも泣けてくるんです。そしてハピエンを切望してしまう。みなさんそうだと思います。

匿名2番さん(1/1)

待ってましたあ!

匿名1番さん(1/1)

すばらしい長文をありがとうございました!!

9巻表紙の矢代さんの手については、ローソンHMVのBOXのヨネダコウ先生のイラストとメッセージを読むと、更に萌え狂えますっ

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