師走に入り、そろそろ2015年もまとめの時期ですね。未読本が積み上がっていませんか? 萌え残しはありませんか? 今年の萌えは今年のうちに!ということで、独断と偏見でセレクトした2015年のBL小説4作品をご紹介します!
読み応えたっぷりの甘く切ない純愛物語累る -kasaneru- 著者・凪良ゆう / 挿絵・笠井あゆみ / プラチナ文庫(2015年)
小学生の頃、家に連れてこられた異母弟・奏人。愛人の子供に対して拒否反応を示す母から、七緒は奏人を守ってきた。その母が亡くなり、家庭に無関心な父との3人での暮らしの中で、兄弟の絆は深まっていく。大学生になり、その絆が恋愛感情を持っている事に気付かされた七緒。その頃から、不思議な夢を見るようになっていくのだが…。
という、異母兄弟の話です。お互いの恋愛感情を受け入れ、ふたりの関係は大きな問題もなく進展していく。ただ、その一方で、七緒は夢に悩まされるようになります。山の中で監禁され、男たちに身体を与えている、「オワタリさま」と呼ばれる自分。七緒は夢に出てくる場所を探ろうと決意するのですが…。この展開から、どうやらふたりは前世で何かしら因縁があるのでは?という事はすぐに分かります。間にその前世の話が挿入されているのですが……想像通りではあるとはいえとても切ない。想いの深さ故の狂気という一面も見え隠れし、ミステリーというよりホラー的な要素が盛り込まれています。最後まで目が離せません。
過去と現在、2組のカップルの、切なさと仄暗さが入り交じる甘く切ない純愛物語。笠井先生の色気たっぷりな挿絵と併せ、じっくり味わってください!
ツンデレ萌えを堪能!世界のまんなか ~イエスかノーか半分か(2)〜 著者・一穂ミチ / 挿絵・竹美家らら / Dear+文庫(2015年)
「王子」と呼ばれる若手人気アナウンサーの国江田計だが、その実態は毒舌でだらしない生活を楽しむ、正反対の本性を持つ男。恋人・都築潮とは、お互い忙しい日々の中、口喧嘩をしつつもいい関係を続けていた。ある日、計が担当しているニュースの裏番組に出ているタレント・木崎が、実はアナウンサー志望だったと知る。特別な熱意もなくアナウンサーになってしまった自分に、計は悩み始めるのだが…。
という、アナウンサーと映像作家の話。「イエスかノーか半分か」の続編です。王子の外面の裏で実はだらしないダメ男の計が、素の自分で潮と交流することになり、そこから恋愛に発展していったのが前作。今作では、木崎の登場で精神的に追い詰められ、余裕の無くなった計が潮と喧嘩をしてしまう話に加え、思いがけない事故で一騒動起こる話の2本立て。アナウンサーなんて身近な仕事では全くありませんが、仕事に対する悩みや苦労は結局似たような部分にあるのでしょう。計の悩みはとても共感出来ます。中身はとても身近な等身大の社会人だからこそ、計が魅力的なのだなと、改めて感じるエピソードでした。後半の騒動はハプニングからのいちゃいちゃというお決まりのパターンではありますが、計の可愛さ爆発で萌え転げること必至! ツン度高めの計だからこそ発揮された、このデレの破壊力ですね。
重すぎずくどすぎず、甘さもたっぷり!萌えたっぷり!な続編に仕上がっています。未読の方は、前作と併せてどうぞ!
年上受の美味しさが詰まっています!ビューティフル・ガーデン 著者・安西リカ / 挿絵・夏乃あゆみ / Dear+文庫(2015年)
中縞倫は、容姿端麗なやり手の若手プロダクトデザイナー。ある日、依頼先の若手社員・伊東高広に同類の気配を察して興味を持つが、頑なにそれを隠そうとする伊東の様子に、苛立ちを覚えていた。からかい半分に伊東を誘惑し、身体の関係を持つのだが…。
という、身体の関係から始まる話。
ゲイである事を隠していない倫に対して、伊東はどうやらゲイである自分を受け入れていない様子。誘惑され関係を持ったものの、事後、伊東は怒り出してしまいます。責任を取れと伊東は迫り、プロジェクトが終わるまでの期間、セフレになる事に。仕事とは違う一面に触れ、次第に惹かれ合っていくふたり。ただ、ふたりが恋人となるには大きな問題があります。「自分との関係を隠す相手とは恋人になれない」と決めている倫は、ゲイである事を隠し続けてきた伊東の事情を知っていて、恋人になれない事と分かっているのに、惹かれる心は止められません。それは倫のポリシーを知っている伊東も同じ。悩みながらも譲れないその決め事の背景には、倫の苦しんできた過去や葛藤があります。そうした中で、大切な物を失わないために必要なのは、相手を思いやり尊重する心なのだと倫は気付いていく。自分の気持ち次第で見え方が一変するのだと、そんな当たり前のことに気付かされ、ハッとさせられます。
派手な演出やドラマティックな仕掛けがある話ではありませんが、心をギュッと鷲掴みにされる部分が所々に隠れていて、グイグイ惹き込まれるストーリー。年上の色気に翻弄されてしまう年下攻に、余裕な態度の裏で実は脆さを抱えている年上受。「がっつく年下と余裕の年上」というキャラの設定が、萌え心をくすぐりますよ!
ほっこり、優しい気持ちになりたいときにすみれびより 著者・月村奎 / 挿絵・草間さかえ / Dear+文庫(2015年)
祖母が営む学生向けの下宿を手伝っている大町芙蓉。親しい友人もおらず静かに暮らしていた芙蓉の前に、6年前に去った故郷で唯一大切な思い出だったクラスメイト・西澤浩一郎が現れる。下宿に入居した西澤と顔を合わせる日々が始まるのだが…。
という、再会モノ。芙蓉は貧困とネグレクトで恵まれない幼少期を過ごし、小学校でも浮いていたのですが、皆から慕われるリーダー的存在だった西澤の優しさに惹かれます。でも、それが恋だと気付いた時にはもう離ればなれに。6年後に再会し、ふたりの距離は近づいていくのですが…胸の中で大切に抱えてきた片思いと、現実の西澤の言動に一喜一憂する恋心に、芙蓉は戸惑いと不安が大きく、なかなか西澤のアプローチが伝わらない。短編3話からなるこの作品、ひとつひとつは小さな出来事だけれど、ふたりにとってはどれも大きな出来事なのです。それに一生懸命向き合っている姿と、随所に登場する植物のエピソードや、咲いては散っていく植物たちの姿が作品と上手く絡んでいるのが素敵。そして、芙蓉と西澤、そしてふたりを取り巻くキャラたちの関係があたたかくて、優しい気持ちにさせられる作品です。
記者
にゃんこ※2009年「異論は認めません!? 私のイチオシはこれ!」がスタート。そのときから月イチで書いていただいていたにゃんこさんのコラムですが、今月で定期的なコラムがいったんお休みとなります。
現在ちるちる小説ランキングトップを独占している凪良ゆう先生、一穂ミチ先生などを初期から紹介していただくなど、ちるちるユーザーの道標になっていただきました。
長い間、本当にありがとうございました!
コメント1
ふばばさん
私はちるちるに登録をしてからまだ1年経っていないのですが、バックナンバーで「異論は認めません〜」のコラムを読んでいました。にゃんこさんの切り口が好きで、次に読む作品選びにも大いに参考にさせていただきました。また時々は書いて下さるのですか?にゃんこさんのコラムを楽しみに待っています。