表紙のテイストから考えるBLとリアリティの関係について2015年も残すところあと僅か。今年1年間を振り返るにあたり、ちるちる編集部では「今年は今までの年に比べて色素が薄めの表紙のコミックが多かったのではないか?」と話題になりました。
BLコミックの表紙というと、ポップでかわいらしい配色のものから背景が緻密に書き込まれたもの、差し色の原色が目を引くものともちろん多種多様に渡りますが、確かに今年発行された作品の中には色素が薄くさっぱりとした色合いのものが一定数存在していたように思います。
また、従来の一般的なBLコミックの表紙というといちゃいちゃと仲睦まじくくっつき合う受けと攻めの姿が描かれていたりすることが多かったのに対し、近年ではカップリングの内の一人だけが描かれていたり、明るいテイストではないものも増えてきていますよね。その中でも、今年は特にグレーなどの薄い配色が目立っていました。
では、そうした色合いの表紙が流行したのは一体何故なのか?今回はその謎について、記者が独断と偏見で考察してみようと思います。
まず、そうした薄味の表紙の例として冒頭に掲載したおげれつたなか先生の
『恋愛ルビの正しいふりかた』や
『錆びた夜でも恋は囁く』が挙げられるかと思います。ちるちるユーザーの皆さんの中にはもう既にお読みになっている方も多いかと思いますので細かい説明は省きますが、こちらはDVの問題を扱うなど
現代の若者の等身大を描いた作品となっています。
また、同様に例として挙げられるのがymz先生の
『ラブラド・レッセンス』や京山あつき先生の
『ヘブンリ―ホームシック』。
どちらの作品も、フィクションありきのBLにおいては革新的と言っていいほどに「現実味」を帯びたストーリーとなっています。
日々の生活の中で感じる孤独や隣に誰かがいてくれることの幸せを描くことにより、「BL」という括りでありながら
「人が生きていくということ」についてしっとりと考えさせられるような物語が近年多くなってきているように感じます。
色鮮やかで明るいテイストの表紙が目を引く王道BLは、暗黙の了解のもとにたくさんの避けられない「フィクション」を含んでいます。しかし、近年ではそうしたフィクションを前面に押し出さず、もっと
リアルな生活に重点を置くことを重視する動きが出てきているのではないでしょうか。
「現代の生活系BLには淡い色合いが似合う」とは一概には言えないかもしれませんが、そうした傾向が見られることも確かであると思います。
BLをフィクションのフィールドではなく実生活に根ざしたものとして描くことが可能になったのも、これまでよりも同性愛が世間で広く受け入れられるようになってきたからではないかと記者は考えています。
世界の移り変わりとともに、BLもまた形を変えていくのかもしれません。
記者 星野