あなたも一度裏切られてみませんか?「そうだ 小説を、読もう。」(J○東海)と思い立ち早数ヶ月。星の数ほど出版されている大量のBL小説たちを前に、一体どこから手を出したらいいのか分からず筆者は呆けているばかりでした。
そんな折に手渡されたのが中原一也先生の新刊『破廉恥なランプ』。「これはシリーズの2作目なのでは」とか「出来ればもう少しソフトそうなものが…」など色々と言いたいことはありましたが、そのインパクトのありすぎるタイトルと表紙イラストに面食らったのも束の間、一度表紙を開くと暫くの間ページを捲る手が止まることはありませんでした。
【破廉恥なランプ あらすじ】
ランプの精・キファーフと恋人同士になった匡。幼生・サラマも加えた三人の暮らしに慣れたある日、新たなランプの精・イシュタルがやってくる。
ゴージャスな美青年で色欲の権化のようなイシュタルは、キファーフの古い馴染みらしい。
つい二人の関係を疑う匡だったが、逆にキファーフの深い愛を思い知らされ、甘く喘がされる始末。
しかし、イシュタルの忘れられない主の話を聞いた匡は、自分とキファーフの未来に不安を抱き始め…。
普段BL小説を読まない方、その中でも恐らく若い方ほどあらすじを読んだ時点で「トンデモBLなのかな…」と身構えてしまうのではないかと思います(実際に筆者自身もそうでした)。
しかし、実際に読んでみての率直な感想は「良い意味で裏切られたな」というものでした。というのも、思っていたよりもずっとキャラクターの台詞(特にキファーフの下ネタ)が面白く、ギャグを交えた軽快なテンポが絶妙だったからです。
「エロばっかりなのかな?」と覚悟していましたが、そんなこともなく。しっかりとストーリー性があり、非常に楽しませていただきました。
また、表紙にも登場しているちびっこのサラマの愛くるしさに思わずほっこりしたり、作品の軸はあくまでBLでありながらいろいろな角度から楽しめる作品だなと感じました。是非1作目の
『淫猥なランプ』の方も読んでみようと思います。
そして、この「裏切られた感」は身に覚えがあるぞ…と思い記憶を遡ってみたところ、辿りついたのは毛魂一直線先生の『そんな目で見てくれ』でした。
【そんな目で見てくれ あらすじ】
誰もが憧れる完璧超人の生徒会長・大和御門は、入学式で新入生・根崎春の笑いを見て以来、無口で地味な根崎の事が気になって仕方がない。
長い前髪で顔を隠し、自分になびかない根崎にしびれを切らした御門は、ある日うっかり根崎の前髪を切ってしまうが――?!
スーパー攻め様(仮)のモーレツ初恋グラフィティ!!!
こちらは「どうやらギャグらしい」という前知識だけで読み始めたのですが、『破廉恥なランプ』同様やはり開始数ページでの率直な感想は「やられた!」でした。表紙のイラストからは想像も出来ないギャグのオンパレードにあれよあれよという間に飲み込まれてしまい、『逆表紙詐欺』にまんまと騙されてしまいました。
一般に『表紙詐欺』というと「表紙は綺麗だったのに中身の絵は好みではなかった」「表紙のイラストと中身のテイストが違い過ぎてがっかりした」などマイナスの意味で使われることが多いですが、今回紹介した2作品はむしろそのズレがプラスに働いている『逆表紙詐欺』なのではないかと感じます。表紙から予想していた内容の斜め上をいく展開が繰り広げられると、その良い意味での「裏切られた感」も相まって一層その作品を楽しめるのではないでしょうか。
今回の経験を通じて、筆者は今まで「古典的なトンデモBLだったら怖いなあ…」という気持ちでスルーしてしまっていたベテランの先生方のBL小説をもっと読んでみたいなと思うようになりました。「今、ふたたびの古典的BLへ。」というスローガンと共にBL小説ライフを楽しみたいと思います。
また、ちるちるユーザーの皆さんにはこういった経験はありますか?おすすめの逆表紙詐欺作品がありましたらぜひコメント欄にお寄せ下さい!
記者 星野