男と男の間に子供ができませんが(一部ファンタジーを除いて)、子連れ男が恋に落ちるとBLなカップルにも子供が登場します。子供がいると疑似家族感が高まり、和みますよね。もちろん、子連れ故の悩みエピソードがあったり、普通のBLとはまた違った苦労もあります。ということで、今回は子持ちBL作品特集。王道(?)から変化球なものまで、3作品をご紹介します!
子持ちBLその壱:子持ち同士の場合ちょっと並んで歩きませんか 栗城偲 / 北上れん / GUSH文庫(2014年)
「子供を愛せない」と妻に告げられ離婚した桜町征弥は幼い娘を育てることになるが、近くに住む両親の助けもあり、なんとか仕事と子育てをこなしている。一方、子供が同じ保育園に通っている事がきっかけに親しくなったマンションの管理人・久保田一生は、ふたりの男の子を育てるシングルファザー。手探りの子育てに疲れていた桜町は、明るく優しい久保田の何気ないひと言に思わず涙を見せてしまう。それ以来パパ友として付き合っていた久保田だったが、ある日、好きだと告白されてしまい…。
という、シングルファザー同士の話。
バイの久保田は親しくなる以前から桜町に惹かれていて、少し強引なくらいの勢いでアプローチしますが、元々ノンケで今は子育てで頭がいっぱいの桜町はなかなか振り向いてくれません。桜町は自分の曖昧な態度がよくないと分かってはいる。久保田の優しさやスキンシップに日々の疲れが癒されている事も頭では理解しているけれど、自分がどうしたいのか分からずにいます。恋愛面だけ見るとかなり焦れったいですが、その原因が子育てにあり、煮え切らない状況は納得できるので問題ナシ。そして、単調にならず最後まで一気に読む事ができるのは、ちびっこ達の存在がとても大きい。特に3兄弟がとても可愛いので、注目です! 癒されますよ。
取り巻く環境的に今後が気になるところ。子持ちBLはどれもそうですが、子供が親の事を理解する頃どうなるのかが知りたくて、後日談が読みたくなりますね!
子持ちBLその弐:妻子持ちの場合ここで待ってる 凪良ゆう / 草間さかえ / Chara文庫(2015年)
空手道場の若先生として、日々鍛錬を怠らない真面目な青年・成田。そんな成田はもてるけれど、実はゲイで、ビッチが好みという報われない恋愛事情を抱えている。ある日、ゲイバーでビッチな飴屋に一目惚れした成田だが、再会した飴屋は妻子持ちで、あっさり恋は玉砕してしまった。それでも、家族ぐるみの付き合いが始まり、友人として飴屋との交流は続いていくことになるのだが…。
という、妻子持ちの男に恋をしてしまう話。
飴屋は子持ちやもめかと思いきや妻が身近にいて、これはBL的にどうまとめるのか気になりますよね。事情がどうあれ、飴屋とのばらは夫婦で、特別な絆で繋がっている。息子の論は愛されて育っていて、成田を慕ってくれている。成田の祖父は、論との交流が生き甲斐のようになっていく。こんな状況で、成田と飴屋が好き合って、平和な解決策があるのだろうか…? これでのばらが性悪とか別の男に走るような女性だったら簡単なのでしょうけど、のばらも優しくていいお母さんなのです。最終的には紆余曲折を経て、少々力業でありつつもハッピーエンドに落ち着くのですが、これはもうひとえに器の大きいお祖父ちゃん様々! そして、そこに至るまでにしっかり成田と飴屋が交流し、関係を築いていて、こんな展開もありだなと感じられるので問題ありませんでした。
恋愛面での面白さに加え、爺孫コンビのやりとりが微笑ましくて和みます。家族の繋がりがうまく話に絡んでいて、幸せな読後感にひたることの出来る作品です!
子持ちBLその参:恋人の父親の場合秘密をどうぞ 水壬楓子 / 雨澄ノカ / GUSH文庫(2013年)
ゲイである事で閉鎖的な町で居場所をなくしたリックは、家を飛び出してひとり生きてきた。バイト先で知り合った大学生の征司と付き合い始めて1年あまり続いているが、その関係はお互いに割り切ったものでしかない。しかしある日、征司の実家で父親の東悟に会った事をきっかけにリックの中で大きな変化が訪れる。東悟に惹かれている自分に気付いたリックは想いを伝えるが、亡き妻への愛情を失っていない東悟は受け入れてはくれず…。
という、恋人の父親に惚れてしまう話。25歳という年の差に目がいってしまいますが、これも子持ちBLです。
東悟との出会いで、リックは今まで漠然と持っていただけだった興味を仕事にしたいと願うようになる。未来に希望を持っていなかったリックが、夢という大きな目標を持った事で生まれ変わります。そして、東悟の内面に触れる中で、リックの心はいつしか東悟に傾いていく。一方、ゲイではない東悟にとって、息子よりも若い男であるリックは当然のことながら恋愛対象では全くありません。可愛くは思っていても、恋愛感情ではない。若いリックの一途な想いがやがて東悟の気持ちを動かしていくのですが、東悟がリックを受け入れた後も、リックの不安は尽きません。亡くなった妻をはじめ、東悟には既に多くの経験や思い出を抱えているのですが、リックはそれを書き換えるのではなく、自分がその一部になろうとしていて、そんな健気な姿がとても可愛いです。
年齢だけでなく、育った環境も全く違うふたりが、長い時間をかけ関係を築く過程が丁寧に書かれていて、読み応えたっぷりです。主にリック視点で話が進むので「子持ちBL」という印象は薄いですが、父親という立場の東悟側から見た、息子の恋人との関係の変化に注目して読むと、また違った面白さが発見出来るのではないでしょうか。
ちなみに、このふたりは『お手をどうぞ』という作品に脇役で登場しています。そちらはこの作品から十数年後、リックの元彼である東悟の息子が主人公…ということで、つまりリックは姑なのですね(笑) リックも東悟もひと癖あるキャラとして登場するので、併せて読むとその裏にある心情などを妄想できて、より楽しめること間違いなしですよ!
記者
にゃんこ
コメント2
匿名2番さん(1/1)
攻め受けどちらかというと、攻めの方が子持ちのBLが好きです。より包容力があるかんじがいいですー。
月村奎さんの「もうひとつのドア」「すき」桜木知沙子さんの「70%の幸福」とかね。
匿名1番さん(1/1)
子持ちBL好きで色々読んでいるのですが、商業作品の子持ちお父さんは自分のお店を持っていたり社長さんが多いなという印象です。小説ではないですが、英田サキさん&山田ユギさんのコラボ漫画「たかが恋だろ」もいいですよね。