お笑い芸人の
又吉直樹著『
火花』が芥川賞を受賞したニュースで賑わいを見せる今日この頃ですが、その影でもう一方受賞した作家がいます、しかもだいぶいろんな意味で「
面白い」「
狂気を感じる」というニュースを皆さんはもうご存知でしょうか。
にわかにネットのそこここでその奇抜な行動と風体が話題と物議を醸しだす作家その人こそ、―そう、「
羽田圭介」先生なのです!
・一体どんな人物なのか?インターネット界隈でもっぱら話題になった件についてというと、
Twitterでツイート、拡散された
羽田先生が聖飢魔Ⅱのデーモン閣下の白塗りメイク姿に扮し(衣装は普通に私服姿)カラオケで受賞結果の報告を待つ、という芥川賞候補作家らしからぬ奇抜な一連の行動が、おおよそ世間を賑わせた話題の大元となっています。
※なぜこんな出で立ちだったのかというと、「
受賞したら聖飢魔IIの『WINNER!』という曲を歌うって決めてたから」だそうです。
そもそも羽田圭介という作家は高校在学中に書き上げた『
黒冷水』で第40回文藝賞を受賞しており、17歳での受賞は当時3人目で最年少と、実はかなりの実力派なんです。
以降も小説を発表し続け、その作品の内芥川賞は3度、野間文芸新人賞を2度、大藪春彦賞を1度逃がす、と実に今回4度目の正直で芥川賞を受賞したという努力の人でもあるわけです。
そんな中、今回ちるちるが注目したいのは羽田圭介を作家として世に送り出す事になった記念すべき処女作である『黒冷水』。
この『黒冷水』という作品、一体どんな作品なんでしょうか?
・『黒冷水』に湧く歪んだ愛情表現はある意味とても二次創作しやすいBLっぽさを含む。
『黒冷水』はタイトルからして怖気が走るような、何ともおどろおどろしい雰囲気を醸し出しており、そして内容も概ねその通り、「
黒」くて「
冷たい」。
【
兄の部屋を偏執的にアサる弟と、罠を仕掛けて執拗に報復する兄。兄弟の果てしない憎しみは、どこから生まれ、どこまでエスカレートしていくのか?出口を失い暴走する憎悪の「黒冷水」を、スピード感溢れる文体で描ききり、選考委員を驚愕させた、恐るべき一七歳による第四〇回文藝賞受賞作。】
という内容通り、基本的に物語は兄と弟の異常なまでの確執と嫌がらせの応酬がメインに描かれ、発端こそ弟から兄に対する形で攻撃の矛先が向くものの、次第に兄も弟の嫌がらせに対抗し、やがて反撃を始める…というのが大まかなストーリー。
でもちょっと待って、異常な執着ってそれ、愛情表現の裏返しなんでは???
「○○デレ」カテゴリもかなり広範に渡って拡大しつつありますが、中でもとりわけ人気のジャンル「
ヤンデレ」。
これはありていに言って「
愛しすぎるあまりぶっ○したくなちゃうのゴメンね♡」という対象から対象へ通常まっすぐに向かう筈であろう矢印が酷く捻じれた状態で対象をがんじがらめにしちゃうという「
歪んだ愛情表現」の一種、またそのある意味非常に純度の高い感情の出力の仕方に「萌え」よう、というのが当該ジャンルの本丸(?)な訳ですが、そういう意味でこのサイコサスペンス『黒冷水』はそうした「兄弟間」での、とりわけ弟から兄に対する「歪んだ愛情」をふんだんに含んだ作品であると言えるのではないか?と思うのです…。
弟の異常なまでの兄への執着、それも根底にあるのはひとえに「兄に対する(歪んだ)愛情表現」に他ならないと思って読むと、この『黒冷水』、非常に(好きな人には)ハマリます…!
そうして歪んだフィルターで通して見る事もまた歪みのその更に先、という感じでねじれにねじれておりややこしさここに極まれり、といった感じですが、敬虔なちるちるビューアーの皆様におかれましてはその様な変換行為は赤子の手をひねるより容易い事と存じますので、是非ともこの機会に今話題の芥川賞受賞作家、羽田圭介先生の作品世界に触れてみては如何でしょうか!?
羽田圭介 1985年東京生まれ。明治大学商学部卒。2003年「黒冷水」で文藝賞を受賞。2008年「走ル」、2010年「ミート・ザ・ビート」、2014年「メタモルフォシス」で芥川賞候補となる。2015年「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞受賞。
コメント3
匿名2番さん(1/1)
ああなるほど。。。この方を見かける度になんとなく怖さを感じていた
その正体は狂気だったのですね
気づかせていただいてありがとうございます
眠れる森さん
このごろよくテレビで見ますが、
キャラとしては又吉さんに勝るとも劣らない、
いや、むしろ狂気さでは完勝かもしれない。
匿名1番さん(1/1)
黒冷水は昔読んだな。懐かしい。ゲイっぽい要素がある作品としては有名だった気がします。
ネットで一般小説にゲイ要素がある作品を探していてこれを紹介してる人が複数人いたので。