4カップルの恋愛を描いたオムニバス漫画は言葉選びも秀逸12月10日に発売された、キヅナツキ先生のコミックス
『リンクス』。4組のカップルの恋愛模様をオムニバス形式で描いた作品で、ちるちるの
ランキング急上昇の注目作でもあります。
美声のコミュ障ラジオDJ×超フレンドリーな三十路、体の関係はある年下×忘れられない人がいるカフェオーナー、猫と男を拾った彫金師×猫と一緒に拾われた隠れS男子、ある事情でヤクザに引き取られた青年×過去に囚われる美人ヤクザ……
様々な過去や想いを抱え、恋人に“なりそこなって”いる彼らそれぞれの恋愛模様はもちろん、実は複雑に絡まっている8人の関係が、どんな風に
リンクしほどけていくのか。一度読んだら必ず読み返したくなる群像劇です。
さてそんな同作ですが、作中での
言葉選びがとても印象的なのが特徴の一つ。心に迫るモノローグやセリフ回しに、まるで小説か映画を観ているような気分にさせられます。
そんな登場人物たちの言葉から、今回は特に心惹かれたものを記者の独断でピックアップ!
ネタバレ防止のため、どんな場面で使われたセリフか明記できない代わりに、タイトルにちなんで、他のBL作品と様々な形で“リンク”させてみました。
「その人を今も大事に思ってたとしても、今付き合ってる人への愛情が嘘ってわけじゃない」忘れられない人がいることと、人を好きになれないことはイコールではないという意のこのセリフ。それをまさに体現しているのが、ナナメグリ先生の人気作品
『俺と上司の恋の話』。今年11月に第3作目
『俺と彼氏の恋の果て』が発売され高評価を獲得している人気シリーズです。
同シリーズの受けキャラ・徳永は、自分をゲイだと知りながら採用してくれた会社の社長に長年片想いをしたまま。親ほどの年の差、家庭持ちということも承知したうえで、報われない恋心をそっとしまい続けています(でも周りにはバレバレ)。
そんな徳永の気持ちをすべて認めた上で彼を愛するのが、部下で元ノンケの高梨。彼から向けられる純粋な愛情、社長への想いの間で、ゆっくりと変化していく徳永の心情をとても丁寧に描いています。全てのキャラクターが愛おしく思える大人の恋の物語です。
「やり直せばいいだろ 生きてんだから」なんの裏も表もない、ただまっすぐなこのセリフ。死んだ誰かの影に囚われるのか? 自分が生きる意味とは? そんな風に迷い問答するキャラクターたちが登場する作品には、山中ヒコ先生のコミックスを選んでみました。
山中ヒコ『500年の営み』感動作として名高いこの作品。亡くなった恋人・光を追って自殺したはずだった寅雄は、両親の希望で冷凍保存され、250年後の未来で目を覚まします。そんな彼の傍にいたのは、恋人に似たアンドロイド・ヒカルB。
何をやっても下手くそ、「光」としても出来損ない、そんなヒカルBに苛立っていた寅雄ですが、ある出来事からそんな不出来なヒカルBへの愛情に気付き…という物語です。
冷凍保存、アンドロイドなどSF要素満載でストーリーとしての現実味は薄いかも知れませんが、描かれる感情はとてもリアル。恋人のいない世界で生きることの意味と希望を考えさせられる作品です。
山中ヒコ『ギブズ』自分を呼ぶ声に目を覚ますとそこは土の中。掘り返された途端知らない男に抱きしめられ、主人公は自分の記憶がなくなっていることを知ります。
自分=田中始はヤクザで、組同士の抗争に巻き込まれ殺されかけたと知った主人公。生還した自分を最初に抱きしめたあの男、同じ組の構成員だったという原田に匿われるも、恋人同士だったと言い出した原田に、始は強引に抱かれることに。
恋人なんかじゃないと思いながらも、原田が自分にだけ向ける底の見えない優しさに、次第に始の気持ちは動きだし……。
一度生死をさまよい、記憶を無くしたからこそ繋がった原田との関係が、始の生き直す意味へと繋がっていきます。徐々に明かされる抗争の真実とともに、最後まで目の離せないストーリーです。
「大人の恋愛がダメになるのはいつも腰が重いからだ」“スマートでいないとかっこ悪い”“自分は好きだけど相手はどう思っているか”……もはやそんなBL界の不器用な大人たち全員と共有したいこのセリフ。
会いに行けばいいのに! その想いを伝えればいいのに…!! 私たち読者がいくらそう思っても、当の本人は臆病で、腰が重くて、いつも想い人との関係をこじらせてしまいます。
しかしながら、そのじれったい関係が
王道BLの醍醐味であることは言わずもがな。このセリフを行動に起こせる大人の男ばかりだったら、私たちの好きなすれ違い不器用BLは減ってしまうのでしょうか…。でも幸せになってほしい! なんてジレンマ。
いかがでしたか? まだまだ紹介したいセリフが『リンクス』にはたくさんあるのですが、胸に響く言葉は人それぞれ。ぜひ皆さんのお気に入りのセリフやモノローグを見つけてみてくさい♪
記者:神谷浩未