新刊の中から、話題になっている作品、私のオススメ作品などをピックアップして紹介します。視点は少々(いや相当?)偏っていることもありますので、ご注意くださいませ?。
今回は富士山ひょうた先生の作品を紹介します。
■不測ノ恋情 (2)/富士山ひょうた/ダリアコミックス 仕事相手の伊倉絢都と二丁目で偶然出会い、お互いゲイとバイである事を知った宮田一臣は、伊倉に交際を迫られることに。伊倉の強引な誘いに対して最初は意地もあり付き合っていたが、それによりいつの間にか引きずっていた過去から抜け出していた。それに気付いた宮田は、伊倉との付き合いを自ら受け入れ、ふたりの恋人としての関係が始まったのだが…。
「純情」の受・圭祐の元彼で、当て馬として登場していた宮田の話です。別れてからも仕事では繋がっているので、その後も圭祐にちょっかいをかけていた宮田。自らの浮気が別れの原因だったのにも関わらず、引きずっているのは宮田の方。本人が思っている以上に周囲はそれを感じていて、圭祐のあとに付き合い始めた人にもそれが原因で振られています。
そんな時出会ったのが伊倉。宮田はゲイだけどタチ専門なので、性格的にも体格的にもいかにもタチな伊倉は好みの範囲外です。そんな伊倉に強引に誘われ付き合う事になってしまいますが、苛立ちながらも波にのまれた事で、いつの間にか過去から抜け出せている自分に気付きます。そうした出来事を経て、改めて恋人としての付き合いが始まったふたり。でも、今まで付き合った相手とは全く違う伊倉のペースに宮田は戸惑い、そして、自分の気持ちの変化にも戸惑うことに。
このふたり、どちらも攻タイプ。だから宮田は伊倉にリードされることに抵抗を感じていて、素直になれません。ドライな自分を保てなくなっている宮田が、なんだかとても可愛い。一体どこがポイントだったのか考えていたのですが、ひとつめはエッチシーンで宮田の表情や反応がよかったところでしょうか。そもそも、宮田は伊倉に対して攻めたいという気持ちはないですよね。その時点で、無意識のうちにこの展開を受け入れていたような気はします。そして、もうひとつのポイントは、伊倉と関係した後の宮田の動揺。伊倉を追い出したりメール無視したりしているけれど、別れようとは思ってない。伊倉の事を好きだからこそ、意見を無視された事を怒るのではなく、予想外の自分の動揺に気持ちを整理出来ずにいます。この過程が丁寧に描かれていて、宮田に対する印象がかなり変わりました。ある程度年齢と恋愛経験を重ねていくと、自分の中で「こうあるべき」みたいなものがあったりしますよね。でも、自分が思っている自分の性格は、実際はそうありたいと思っている性格であったり、こうあるべきと思っている性格だったりする部分もあるわけで、そんな自分の想像力の範囲内から出てくる自分に合った付き合い方が正しいとは限らない。むしろ、実際は違っているから今までの恋愛が上手くいかなかったという見方も出来るので、意外と苦手なタイプの方が本当に自分の求めているものを掘り出してくれるかもしれません。宮田にとって伊倉が今まで付き合った事のないタイプだったからこそ、本当に自分が求めていたものが見えてきて、それに動揺している。常に自分のペースで恋愛して弱い部分を相手に見せてこなかった宮田が、伊倉の登場によって変えられていく様子に、こちらまでドキドキさせられます。
「純情」では軽薄そうな印象だった宮田ですが、本来は真面目な人なんだなという事が感じられる内容で、印象がかなり変わりました。可愛い! この後さらに可愛い表情を見られるのかと思うと、続きが楽しみです。
続いて、今回は宮田が脇役で登場している「純情」をご紹介。併せて読むと、より世界観を楽しめますよ!
■純情(全3巻)/富士山ひょうた/ダリアコミックス フリーライターの戸崎圭祐は、ある日高校時代の同級生・倉田将成に再会する。当時倉田に好意を寄せていた戸崎だが、二人が親しくなることはなかった。しかし、再会した倉田は「自分のこと好きだっただろう」と言い出し、抱いてもいいと言い出す。勢いで寝てしまった戸崎は、改めて倉田への気持ちを自覚することに。期待と不安を抱えたまま、その後も倉田の強引な誘いに乗ってしまうのだが…。
倉田は高校時代の戸崎の気持ちをネタにして半ば強引に関係を続けますが、好きとは言いません。友達以上恋人未満。セフレのような関係だけど、戸崎は好意を持っていて、倉田は嫉妬もする。ここまで気持ちがあるならさっさと恋人になってしまえばいいじゃない…!と思ってしまうのですが。二人は恋愛に対して臆病で、特に倉田がなかなか自分の気持ちを認めたがらないので関係は一進一退。恋人になるまでの駆け引きの期間って、気持ちを盛り上げるうえで大切ですよね。焦れったさを楽しむのもまた一興。
意外にもヘタレなところを見せた倉田に対して、戸崎は強さがどんどん見えてきます。自分の気持ちをしっかり主張する受は好感度大。内心不安いっぱいなのに、それでも真摯に自分の気持ちを訴える戸崎の姿がとても格好良かったです。
ちなみに、「不測ノ恋情」の主人公・宮田は序盤に当て馬として登場しますが、絆が深まっていくふたりに対して、どんどん影が薄くなっていました(笑)
再会から紆余曲折を経て付き合い始め、その後トラブルがありながらもそれを乗り越えて関係を深めていくふたりの姿が、じっくり楽しめる作品です。ドッシリ腰を据えて関係を掘り下げていく話が読みたい、そんな方にオススメ!
紹介者プロフィール:にゃんこ長い冬眠期間を経て数年前に復活。内容はもちろん大切。でも萌えるHも大好物! 心躍る萌えを求め、腐海を彷徨う流浪の腐女子。 小説&コミックスを中心に、BLCD、BLゲームなども含めた感想をブログで書いていますので、そちらもよろしくお願いします! http://macnyanko.blog22.fc2.com/