新刊の中から、話題になっている作品、私のオススメ作品などをピックアップして紹介します。視点は少々(いや相当?)偏っていることもありますので、ご注意くださいませ?。
今回は2012年9月に完結したこちらの作品を紹介します!
■花のみぞ知る(全3巻)/宝井理人/ミリオンコミックス 綺麗な容姿をしているけれど、周囲から少し距離を置かれている大学生・御崎詔太。その御崎が在籍する研究室に手伝いとしてやってきたのは、別の学部の学生である有川洋一だった。御崎と有川は次第に親しくなり、互いに恋愛対象として意識し始めるが、そこへ御崎の元家庭教師・川端が登場する。困惑しながらも川端を拒絶することが出来ない御崎だったが、有川の想いを知り、自分の気持ちや過去に向き合い始め…。
御崎は真面目な農学部の学生。3年生だけど既に研究室に出入りしていて、植物の研究をしています。友人はいなくて、学内で1番気を許しているのは研究室の教授くらい。そんな御崎に興味を示した有川は、法学部の3年生で、格好良くて人当たりもよくて、しかも頭脳明晰という人気者。御崎は見られたくない場面を有川に見られているので、有川の好奇心を迷惑に感じていて、警戒心いっぱいです。そんなふたりの微妙な距離感は一緒に過ごすうちに近づいていき、御崎の警戒心も溶け始めるのですが…。
いくつかの出来事を経て、お互いに恋愛対象として意識し始めたふたり。自分の気持ちに対する向き合い方はそれぞれ大きく違っているけれど、ふたりとも相手の言動に期待したり、動揺したり、傷ついたり、いろいろな感情に振り回されているのは一緒です。有川はもてるし、彼女もいたりするので経験豊富かと思いきや、本当の意味で恋に堕ちたのは御崎が初めて。いつも告白を受け入れる側だったから、男の影が見え隠れしている御崎に対してどうしていいのか分からずぐるぐるしています。一方、人付き合いは極端に少ないけれど、恋に堕ちた経験はある御崎。御崎は恋愛で傷ついた事があるから臆病になっている。ふたりの悩み方が対照的で、どちらの気持ちも切なくて目が離せません。
付き合い始めるまでの展開も面白いのですが、その後、過去の清算と新たな世界で遭遇する戸惑いの数々を経て、ふたりの関係が落ち着いていく過程も描かれていて、じっくりとふたりの成長を見守ることが出来ます。兎にも角にも御崎がかわいい!大人しくて落ち着いているように見えるのに、意外とドジッ子…。有川と御崎のふたりのやりとりが微笑ましかったです。ふたりとも初々しい。お互いに相手を意識してドキドキしている様子に、読んでいるこちらまで赤面させられます(笑)
そんなふたりのやりとりで全体の印象は明るいのですが、御崎の過去の話は重いです。しかし、御崎の性格や恋愛観の背景にあるものが分かるエピソードなので、説得力があり重要な部分。キーマンとなっている川端の執着が、御崎と有川の初々しくてかわいらしい雰囲気の関係と対照的です。自分の手から離れていこうとする御崎に対して過剰な執着をみせる川端…。その笑顔が怖い。でも、川端がいてくれた事で心を救われた事のある御崎は、本来の優しい川端を知っているから全力で拒むことが出来ません。川端は心が弱くてずるくて、でも本当は優しい人。有川が日の当たるまぶしい世界の人なので、川端の弱さと、御崎の繊細さが話に奥行きを出していてよかったです。
ということで、今回は先日完結した「花のみぞ咲く」を取り上げてみました。ほどよいシリアスさを盛り込みながら、長すぎず短すぎず、最後までしっかり読み応えのある作品です。大人しくて不器用な大学生と、明るくて人気者の大学生の、シンプルなほのぼのラブストーリーだと思い気楽に構えていたのですが、読み進めるとしっかりとした背景が垣間見えてきて、どんどん惹き込まれていきます。そして、絵柄や雰囲気も大好きなのですが、何と言っても予想以上に萌えの詰まった内容で大満足でした。宝井先生の描く濡れ場は、あっさりとした絵柄の印象があるにも関わらず色気がありますね!
宝井先生は以前「セブンデイズ」というBL作品を出されていますが、そちらは橘紅緒先生が原作をされています。独特の透明感ある作風は共通していますが、今回はオリジナルと言う事で、また違った魅力があるのではないでしょうか。
ますます宝井先生の魅力に嵌ったシリーズでした。オススメです!
紹介者プロフィール:にゃんこ長い冬眠期間を経て数年前に復活。内容はもちろん大切。でも萌えるHも大好物! 心躍る萌えを求め、腐海を彷徨う流浪の腐女子。 小説&コミックスを中心に、BLCD、BLゲームなども含めた感想をブログで書いていますので、そちらもよろしくお願いします! http://macnyanko.blog22.fc2.com/