新刊の中から、話題になっている作品、私のオススメ作品などをピックアップして紹介します。視点は少々(いや相当?)偏っていることもありますので、ご注意くださいませ?。
今回は2012年8月の新刊から、榎田先生の作品をご紹介!
■erotica/榎田尤利/リブレ出版 この企画を知ってからずっと、ワクワクしながら待っていました!エロをテーマにした榎田先生の短編集。一体どんな萌えに出会えるのか、まずは簡単に各話の紹介から。(ネタバレ注意:全体の構成や内容について触れています)
『痛い靴』(イラスト:えすとえむ) 人とのコミュニケーションが苦手で、異動先の営業部で居場所がない日高。
そんな日高を、上司の久我だけはかばってくれる。しかしある日、男と関係している映像をネタに、豹変した久我は日高にある行為を強要してきて…。
SMで足フェチ。久我のドSっぷりにワクワクドキドキです。痛みと快感の中、今まで知らなかった世界の扉を開いていく日高に萌え。
『ストロベリー』(イラスト:腰乃) 密かに想いを寄せていた友人の館野に勢いで告白し、なんとか恋人同士となることが出来た篠田だが、ノンケの館野相手にずっと不安な気持ちを持ち続けていた。そんなある日、館野が結婚するという噂を耳にして…。
リバですよリバーー!襲い受から攻に転じる流れがいいですね?。泣きながらガンガン掘る王子様顔の篠田という絵面がかわいいです(笑)
『10×3』(イラスト:円陣闇丸) 刺激を求め、組長の愛娘に手を出したヤクザの辻。しかしそれを組の顧問弁護士・財津に知られてしまい…。
3P!3P! 3Pとしてはゆるめの内容ですが、オレ様な辻が財津の手のひらで踊らされているのがいいです。
『カルメン』(イラスト:鬼嶋兵伍) 自分の体格にコンプレックスを持っている千歳は、新入社員の桐生の体格に劣等感を刺激され、優しく出来ずにいた。しかしある日、桐生の本当の姿を知ってしまい…。
ドラァグクイーン攻。これを女装の括りに含めるのが正しいのかどうか分かりませんが、一応女装攻。小柄な受と、ガチムチ体型の攻という体格差も萌え要素ですね。
『クリスタル』(イラスト:中村明日美子) 若くして取締役となった篤樹だが、秘書である芳原との距離は縮まらない。
ある日、芳原とエレベーターに閉じこめられてしまった篤樹だが…。
主従関係。そして……失禁!「エロとじ」に収録されていた短編です。最後に形勢逆転する流れもいい!
『書生の戀』(イラスト:今市子) 小説家の廿楽の元に、松岡という青年から手紙が届いた。熱心で丁寧な感動を伝える松岡の手紙に廿楽は心を動かされ、手紙のやりとりをするようになったのだが…。
〆はプラトニックラブ。エロがテーマの短編集で、濃い肉体関係が続いた中で、まさかのプラトニックにびっくり!エロはありませんが、しっかり存在感のある話です。むしろ、エロがないからこそ萌える作品。
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ということで、「エロ(エロス)」をテーマにした短編集です。テーマとしては足フェチでSM、極道3P、リバ、放尿、ガチムチ、プラトニックラブ等々幅広いラインナップ。個人的に萌えにクリーンヒットだったのは『クリスタル』ですが、どれも普通のBLだと出会えないシチュエーションやプレイが登場していて面白いです。
普通の小説作品だとなかなかこんなプレイを組み込めませんよね。最終的に恋愛してハッピーエンドが基本なので、エロで暴走すると話をまとめるのが難しそう…。そこを突き抜けていく作家さんももちろんいらっしゃいますが、どうしてもエロ特化な作品になってしまう事が多いと思います(それはそれで楽しくて大好きです)。また、個性的なプレイは読み手を選ぶため商業作品で取り入れられる事が少なく、そもそも小説の場合短編集が少ないので、結果として小説で特殊なプレイが楽しめて読み応えもある作品に出会える機会はとても貴重だと思っています。
そして、今回のような「エロ」という大きな括りのアンソロジーの場合、アタリもあるけどハズレもあるのが普通ですよね。でも、榎田先生はアンソロジーのテーマである「エロ」以外の部分もしっかりしていて、ストーリーというしっかりした骨格にエロが肉付けされているので、エロが多少自分の萌えとは違っていても話を楽しめます。流石です。
さらに、短編の構成の仕方にやられました。最後にプラトニックで締め、その流れであとがきを読むと考えさせられます。『エロって何だろう。何故エロに惹かれるのだろう?』赤裸々な描写で萌えるエロもあり、あえて描写されていない部分に想像力で萌えさせられるエロもあり、エロの形は様々。私は日常の中では得られないワクワクやドキドキを求めてBLを読んでいますが、エロがその重要な一部である事は間違いありません。もちろんストーリーに惹かれる事も重要なのでエロがすべてではなく、エロのなくても素敵なBL作品はたくさんありますが、私は常に胸が熱くなるような萌えエロを求めている!そこに理由なんて必要ありません。
素敵な短編集を届けてくれた榎田先生と出版社に拍手。榎田先生だからこそ出来た企画だと思います。あとがきの言葉が胸に響きました。
10年後、BLを取り巻く環境がどうなっているのだろう…。8月はR18の漫画書籍「PINK GOLD」も発売され、エロについて考えさせられる事が多くありました。
心配事は尽きませんが、まずはエロで心を活性化させましょう!これからも、素敵なエロスに出会えますように。
紹介者プロフィール:にゃんこ長い冬眠期間を経て数年前に復活。内容はもちろん大切。でも萌えるHも大好物! 心躍る萌えを求め、腐海を彷徨う流浪の腐女子。 小説&コミックスを中心に、BLCD、BLゲームなども含めた感想をブログで書いていますので、そちらもよろしくお願いします! http://macnyanko.blog22.fc2.com/