新刊の中から、話題になっている作品、私のオススメ作品などをピックアップして紹介します。視点は少々(いや相当?)偏っていることもありますので、ご注意くださいませ〜。
2010年2月の新刊から、高遠先生の「甘い運命」を取り上げたいと思います。この作品はレストランシリーズの番外編。このシリーズでは料理が重要な役割を果たしています。今回はいつもとは少し趣向を変え、“料理”にスポットを当ててみました。
■甘い運命/著者:高遠琉加/挿絵:麻生海/シャレード文庫 『ル・ジャルダン・デ・レーヴ』で働くパティシエ・樫崎一と湯原広和との出会いは、一が高校生の時。
担任教師だった湯原は、成績に問題もないのに就職を希望する一を何かと気遣っていたが、一は一向に湯原を受け入れようとしなかった。
そんなある日、隣の部屋の住人のトラブルに巻き込まれた一は、相手を包丁で刺してしまう。
居場所をなくした一は、少年院を出た後、まだ1歳にもならない姉の子・海を1人で育てていた湯原の家に、乞われるまま身を寄せることになるのだが…。
レストランシリーズはその名の通り料理がキーとなっている話。
一はパティシエなので、今回の話はデザートが象徴的なものとして扱われています。
一が自分の感情を抑えていたり、他人と深い付き合いができないのは、幼い頃の体験が原因。
この作品では恋愛面だけではなく、湯原や海との生活を通して一が心を開いていく過程を追っています。
一にとって、デザートはコミュニケーションツール。
このツールを手に入れたことで、一の視界は飛躍的に広がります。
美味しいデザートを作ることで、人に幸せを与え、自分も幸せを貰っている。
料理全般それは言えることですが、デザートは直接的にそれを感じられますよね。
大抵の人は、美味しいデザートを食べたら笑顔になる。
言葉では表現できなくても、料理によって心を伝えることが出来る。
他人と関わろうとしなかった一が、無意識のうちにそうしたものを求めていたのかなと思うと、何だか胸がいっぱいになりました。
因みに、ふたりの関係が進展する過程は、後日談となっている『チョコレート・ホリック』に書かれているのですが…。
いやもう…チョコレートエロいよ…!!
この先、チョコレートを食べると条件反射で思い出してしまいそうです(笑)
一の発想が可愛いww
ずっと楽しみにしていたレストランシリーズの番外・一編は、シリアスな面も押さえつつ、最後はとても甘い読後感に包まれました。
レストランシリーズは、恋愛面はもちろんですが、人間関係全般について考えさせられる部分がたくさんあり、そういった人との関わり合いと料理がとても上手く絡んでいて考えさせられます。
期待を裏切らない面白さでした!
さて、ここからは料理に関連した既刊本を紹介したいと思います。
まずは心温まるこの作品!
■にゃんこ亭のレシピ/著者:椹野道流/挿絵:山田ユギ/ホワイトハート 祖母が亡くなったという知らせを受けたゴータは、子供の頃以来訪れる事の無かった銀杏村を訪れた。
「村に呼ばれた」と感じたゴータは、東京での仕事を辞め、銀杏村で小さなレストラン「ロティサリー・ドゥ・シャ」通称「にゃんこ亭」を開く。
そこに一人旅の途中に村にやってきた青年・サトルは、ゴータに惚れ込み、押しかけるように従業員となった。
パティシエだったサトルは、菓子作りと接客を担当する事に。
さらに、村の守り神であるおきつね様の子供・コギを預かる事になり、3人でにぎやかな生活を送る事になるが…
(※現在4巻まで出ていますが、感想は3巻までの内容になっています)
この作品は1冊に短編が3編収録されていて、そこに出てきた料理のレシピが載っています。
それがまたおいしそうなのですよ!
レストランが舞台なので様々な料理が登場するのですが、にゃんこ亭ではどれも村の食材を使っています。
ゴータやサトルが直接仕入れたり、自分達で作ったり、とにかく素材にこだわっている。
料理は美味しくて、さらに若いいい男2人がやっているレストラン。
そんな店があったら通いたい!
サトルの作るお菓子が食べたいー!
ランチやディナーも良いけど、こんなお店でゆったり過ごすティータイム…うっとりしちゃいます。
サトルはゴータに惚れているので多少(というか皆無に近いかも)はラブもありつつ、ほとんどが銀杏村でのほのぼのしたお話。
ファンタジーですが、全く現実離れしている訳ではないので、無理がなくて読みやすいです。
サトルとゴータとの仲が進展する事はないかもしれませんが、レストランやコギとの交流を通して、このふたりの間にはしっかり絆が出来ています。
「家族」になっている3人に、何度も泣かされてしまいました。
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ということで、今回は“料理”にスポットを当ててみました。
食事って毎日当たり前のようにしている事だけれど、侮れない。
コミュニケーションとしての役割、そして共に食事をすることによって生まれる繋がりも大切ですよね。
ここでは紹介しきれませんでしたが、他にもたくさん“料理”を話に盛り込んでいる作品があります。
そんな話に出会ったときには、是非“料理”がどのように使われているのか、頭の片隅にでも置きながら読んでみてください。
新しい発見があるかもしれません。
紹介者プロフィール:にゃんこ長い冬眠期間を経て数年前に復活。内容はもちろん大切。でも萌えるHも大好物! 心躍る萌えを求め、腐海を彷徨う流浪の腐女子。 小説&コミックスを中心に、BLCD、BLゲームなども含めた感想をブログで書いていますので、そちらもよろしくお願いします! http://macnyanko.blog22.fc2.com/