BL情報サイト ちるちる

BLニュース

BLニュースは標準ブラウザ非対応となりました。Google Chromeなど別のブラウザからご覧ください。

惜しげもなく描かれる醜いデブオヤジ 『狂ひもえせず』

2009/08/18 00:00

16ページの中、実に10ページにその肥った裸がさらされている、というとんでもないオヤジ漫画。調教される醜いデブオヤジのオンパレード! 
醜い!そして萌えどころなど皆無!
誰がこんな異様な漫画を欲しているというんでしょう? 
でもなぜか繰り返し読んでしまうのはなぜ?
 不可思議な力を秘めたオヤジ虐待漫画。異色の作品だけを取り上げたまんだ林檎の短編集の中でこの「ケツメイト」はひときわ鈍く輝いている!

最近は殆どBL作品を発表していないまんだ林檎氏だが、私にとっては重要な作家の一人である。氏の代表作である『コンプレックス』シリーズでは主人公の幼少期から死に至るまでを描ききり、その構成力と共に中年・老人を無理なく描ける画力に唸らされたものだ。

本作はコミックス『狂いもえせず』(竹書房)に収録のわずか16ページの短編である。かつてレビューした際には、この非常に特殊な短編ばかりを集めたコミックスをうまく取りまとめるべき言葉が見つからず、本作についても「ある意味一番愛にあふれているのは最後に収録されている『ケツメイト』のような気がするが、これはオヤジ受けのSMモノ(ただしコメディー)という非常に強烈な一品」と書くよりなかったのだが、これを機会に少し掘り下げてみたい。

リストラ・借金・妻子に逃げられるなどの不幸に見舞われた団塊世代の小太りの男・滝田三郎は、自殺しようと岸壁にたたずむところを、トンボのようなサングラスを掛け、素肌にヒョウ柄のジャケットと毛足の長いファーマフラーを着用したエキセントリックな雰囲気満点の謎の美青年に「私の肉奴隷にならないか」と誘われ、彼の屋敷について行く。当初理由の分からない厳しい調教に滝田は絶望する。しかも閉じ込められた檻の中で発見した、まるでデートスポットやラブホテルにおいてあるような「思い出ノート」に書かれていたのは、なぜかこの調教で「生きる活力を取り戻した」などという感謝の言葉と別れの挨拶ばかりで、滝田の理解の範疇を超えている。しかし美青年の下僕である天使のような美少年によれば、ご主人様は「真性のゲイでサドでファザコンでジジ専」であり、「絶望の淵をさまよう団塊世代オヤジをいたぶり、足元にひざまずかせ、身も心もズタズタに引き裂きたい」のだが、「岸壁で拾ってきたオヤジ達は調教によりどうしたわけか生きる気力に目覚めてしまう」というのである。実際、約1ヶ月を経てほどよくやつれた滝田の姿はもはや普通の美中年(おかしな表現だが、読めばきっと納得してもらえると思う)であり、ご主人様である美青年のお仕置きに愛を感じるようになってしまったからには、彼の元に居続けることは叶わないのである。
本作において重要なのは、調教シーンの描写である。ワキ毛・ヘソ毛・スネ毛を伴う(さすがにケツ毛はない)、むっちりと肥った体を縛り上げられたボンレスハムのような滝田の体はBLにはあるまじき醜さと言ってもいいだろう。
しかも本作では調教シーン以外でも滝田は全裸で檻に入れられているため、16ページ中実に10ページにその肥った裸がさらされているのである。まんだ氏の画力によりこのとんでもない作品は妙な説得力を持ち、醜いにも関わらずそれほど不快ではない読後感が希有である。そして萌えどころなど皆無である異様な作品であるにも関わらず、なぜか繰り返し読んでしまうのは、美青年の孤独と、態度とは裏腹の愛情への共感からなのであろうか…。

本作には書き下ろしのおまけ『まぼろしの村』がある。屋敷を追われた滝田がたどり着いた先には同年配の美中高年男性が多数住む集落があった、というものである。当然彼らはかつて美青年の調教を受けた者達である。滝田自身は額やや広めのデブであったが、集落に住まう人々を見ると、白髪あり・角刈りあり・すだれありと髪型一つとっても実にバラエティ豊かで、美青年が何年も前から、風貌にとらわれることなく「世を儚んだ団塊世代男性」を一本釣りしてきたことが分かる。たった3ページなのに非常に情報量の多い、秀逸なおまけである。

紹介者プロフィール:ぎが
本州のやや北の方に、ひとりでひっそりと生息しています。10代の頃に多少かじりはしたものの、商業BLに本格参入したのは約2年前のこと。ごく当たり前にかわいい系・きれい系の受けが好きだったはずが、あれよあれよという間にオヤジ含め幅広く雑食に。自分の適応能力に驚かされます。

関連作家・声優

コメント2

投稿順 | 最新順

ちょっと興味が・・・・・

あえて醜悪なものを見てみようというわけではないし、どっちかって言うと見たくもない方なんですが、その、なんか調教されて心から感謝する、とか言うくだりが、なんとなく以前私が書評書いた、吉田珠姫の石黒さんシリーズに通ずる所がある気がするんですよ。話自体は全然ちゃうかも知れませんが。

なんとなく、恐いものみたさみたいなのもありますが、読んでみたい気がしてきました。
多分この後、アマゾン飛ぶかも知れません。(そして思わず買い物籠に入れちゃうかも知れません)

カノアマスミさんへ

コメントありがとうございます。

本作はコミックス200ページ中16ページ+3ページつまりページ数にして1割に満たないですし、私の文章よりも葡萄瓜さんのレビューに端的なように、他の収録作も総じて「愛」とか「萌え」とはかけ離れているのでなかなかおすすめし難いところはあるのですが、私自身にとっては本作も含め結構好きな1冊なのです。

私の勝手な想像では、カノアさんならこの辺の作品もありだと思ってくれそうな気がするのですが…。
とにかくも、反応してくださっただけで嬉しいです。

アクセスランキング

最新BLニュース

オススメニュース

最新のコメント

PAGE TOP