ついに号泣BL特集がスタート!これから1ヶ月にわたってちるちるユーザーから送られた号泣コラムをアップしてまいります。(タイトルは「このBLは読んでおけ」ですが、後でかわりますよぉ?)
その口火を切るのは、「窮鼠はチーズの夢を見る」。発売後わずか数日でランキング1位に輝いた「俎上の鯉は二度跳ねる」、その前作にあたります。この動物ことわざシリーズ?は現在の勢いからすると、今年度のランキング1位の最有力候補といっていいでしょう。まだ未読の方はこの機会にぜひぜひ読んでみてください!
泣けるBLといえばコレ!!
水城せとな「窮鼠はチーズの夢を見る」シリーズ。
BLファンなら誰もが知っていると思われる名作ですね。
今回は5/8に続刊「俎上の鯉は二度跳ねる」の発売もありますし、このシリーズについて紹介したいと思います。
私もこのちるちるさんで、この作品を知りました。読んですぐに「こんなに切ない恋愛ってあるのか」と思いました。BLを読み始めた当初だったのですが、男同士の恋愛で、しかも二人ともちゃんとした大人なのに、こんな恋愛ひとつでぐるぐる悩んだり、一生懸命恋している姿に衝撃を受けました。
恋って素晴らしい… でも切なくって、自分もこんな風に人を好きになりたい(でもこんなドロドロはほんとは嫌。笑)と思わせてくれる作品です。
主人公・恭一は結婚していながら、その流されやすい性格のせいで(通称・流され侍)度々浮気を繰り返していました。ある日、大学時代の後輩・今ヶ瀬に呼び出されます。
今ヶ瀬は興信所に勤めており、今回恭一の妻からの依頼で彼の浮気調査を行っていて、彼の浮気現場の写真を持ち出して取引を持ちかけます。この話をもみ消して欲しければ「あなたの体と引き替えに」と。
ここから始まる恭一と今ヶ瀬の物語。それはとても愛しく、また切ないものでした。
恭一のことが学生の頃からずっと好きだった今ヶ瀬と、自分のことを愛してくれる人が大好きな恭一。二人は徐々に関係を深めていき、体を重ねるようになり、同棲をはじめます。
そこへたまきという女性が現れ、二人は別れることになります。そして恭一とたまきが付き合うようになり、ある事件がきっかけで恭一と今ヶ瀬は再会することになって…
恭一と今ヶ瀬の恋がこじれにこじれてしまったのは、ノンケとゲイであるということが一番の問題だと思います。
今ヶ瀬は恭一を「こっち」の世界に引き込んだと思っています。
恭一の幸せを考えるのであれば、また女性と新しい家庭を築いてもらうことが望ましいのでしょうが、それでも彼は恭一のことをとても愛していました。
自分でも「好きになりすぎた」と言うくらい、恭一のことを愛しすぎていて、彼の言動で不安定になったり、そのことで二人は喧嘩をしてしまったり、二人でやっていくことに不安を覚えます。
不安になるとすぐに恭一との関係を「やめたい」「別れる」と言ってしまう今ヶ瀬。たまきが現れた時も、恭一に止めてほしいと思いながらも「あなたじゃだめです」と言ってしまうのです。
はじめは恭一に対して見返りなんて求めていなかったと思います。
でも体を重ね、同棲をはじめ、恋人のように過ごすようになり、恭一からも愛してもらいたいと思うようになります。恭一はノンケだから、いつかは女のもとに行けばいいと言っていますが、それでも一番に自分のことを愛し、自分のもとへ戻ってきてほしいと思っているのでしょう。自分の中でのその矛盾、葛藤が、より今ヶ瀬を不安定にさせているのだと思います。
恭一もたくさん愛を与えてくれる今ヶ瀬に惹かれていき、また今ヶ瀬の、恭一の言動で一喜一憂するところを「可愛い」と思うようになります。
でも自分が本当に今ヶ瀬のことを本当に愛しているのかわからなくなり、そのたびに思うのです。
「同性愛者ならもっとお前を愛してやれるのかな」と。
恭一の言動、そして思いは「愛」と呼びには十分だったと思います。
それは「抱かれる側」から「抱く側」になってから、さらに増したように感じました。
しかし彼はノンケでしたし、もともと“流され侍”でしたから、自分に好意を持つたまきという女性に揺れたのも仕方がないのかもしれません。
たまきとのことを知り、身を引くように別れを切りだした今ヶ瀬を、恭一は止めはしませんでした。
「同性愛者ではないからうまく今ヶ瀬を愛してやれなかった」
と評して。そして失って気づいたのです。今ヶ瀬が本当は止めてほしかったこと、またどれだけ自分が今ヶ瀬を愛していたのかということに。たまきの前で思わず涙をこぼしてしまうシーンは、こちらも涙せずにはいられませんでした。
そして、人から愛してもらうことばかりを重視していた恭一も、ちゃん人を愛することができたんだね…と感慨深く思えたシーンでもありました。
ノンケとゲイとの恋愛は他作品でもよく見られますよね。しかも、だいたいどれも切ないんです。付き合うことになったとしても、所詮ノンケはノンケ。
いずれ女性のほうがいいと自分のもとを離れていってしまうかもしれないし、何より男同士の恋愛(いわば間違った道)に引きずり込んでしまったことが申し訳ない。
自分のことを好きになってほしいけど、相手のことが好きだからこそ、まっとうな道(男女の恋愛)に戻ったほうがいいのでは…という葛藤に揺れています。
それをパ?トナーであるノンケのほうが、どうフォローするか、どうやって相手を安心させてあげられるかが、ノンケとゲイとの恋愛でのポイントだと思うのです。
恭一とたまきが付き合うようになってから、ある日二人は再会します。最初は今ヶ瀬のことを拒んでいた恭一も、今ヶ瀬の強い思いを確信し、二人は再び体を重ねます。
恭一は確信していました。「もう一度会ったら絶対おちる」と。恭一は今ヶ瀬に愛を誓い、手の甲にキスをします。初めて二人がキスをした日に今ヶ瀬が恭一にそうしたように。
たまきに別れを告げ、今ヶ瀬とやっていくことを決めた恭一ですが、今ヶ瀬は恭一とのことを未だに不安に思い、彼の元を去ろうとします。その今ヶ瀬に向けた恭一の台詞がコレ。
「俺の人生なんかどうにでもなるんだからさ、だからお前は…心配すんな」
今まで自分のことばっかり気にしていた恭一が、今ヶ瀬のことを思い、今ヶ瀬が気にしないように大丈夫だよって言ってあげたのです。
これにはもう…!!よく言ってくれました。
今ヶ瀬は恭一がいずれ女の元へ戻っていくことを不安に思っていますが、意外にも恭一も今ヶ瀬がほかの男の元へ行ってしまうんじゃないかって心配しているようです。でも恭一は、それでもいい、それまでの今ヶ瀬との道に花を多く飾ってあげることが、今自分にできることなんだって、そう考えています。
“流され侍”の恭一がよくここまで成長しましたよね…
たぶん恭一にとってこれは初恋だと思うのです。初めて人を好きになって、その人を失いたくなくって、その人を守るためにもこんな台詞とか、行動とかがとれたのだと思います。逆に今ヶ瀬のほうが不安定だから、恭一がしっかり今ヶ瀬を守ってあげられるなら、この二人は今後もやっていけると思います。なんせふたりともベタ惚れですからねvv
ぐるぐる悩んでこじれた二人の恋愛もこれにて完結です。二人のお互いを思いやる気持ちに、胸がいっぱいになりました。これからもこの本は私のバイブルですし、まだ未読の方がもしいらっしゃれば、是非是非読んでいただきたいと思っています。
紹介者プロフィール:ミドリ9月でBL歴1年を迎えました! この1年で気づいたのは、浮気ダメ、強姦・監禁・凌辱ダメな、意外に純愛作品好きだったこと。 でもエロエロは大好きです。 BL読み始めて本棚3つ増えました! コミック主体で山田ユギ、ヨネダコウ、山本小鉄子、日高ショーコを神と崇めてます。 最近は榎田尤利にハマり中。