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JUNEの再来か、本格耽美大正浪漫 新人ばなれした文章力と構成力にオドロキ! 『帝都万華鏡―桜の頃を過ぎても』

2008/07/08 00:00

舞台は大正に元号が変わった頃の帝都。給費生として一高に入学した石木琢馬は、桜の下で出逢った美しい青年――高市京介に、かつてない感情を抱いていた。放課後、自作の詩をしたためた雑記帳を忘れてきた琢馬は、あわてて教室に駆け戻る。そこで雑記帳を読んでいたのは、あの京介だった――。
「X文庫新人賞受賞作!濃艶な「大正浪漫」がここに開花。BL界の新風、異色のデビュー作!!」
このキャッチコピーからも伺える出版社の期待の高さ。そしてその期待に違わぬ実力を本作を読むことで読者は知ることになるだろう。

 鳩かなこさんは2007年12月に講談社X文庫でデビューした新人さんです。
小説家・栗本薫さんの「文章表現ワークショップ」で学んだ愛弟子さんで、本作は同文庫新人賞を受賞しました。
栗本さんの解説によると、鳩さんは『大正浪漫』モノしか書かれないそうです。本作ももちろんそうです。
そして更なる特徴は、文体にかなりクセがあるということでしょうか。
ひとことで言えば装飾の多い文章なのですが、それが独特の雰囲気を醸し出して『大正浪漫』の世界を彩っています。
お話は一高同級生の高市京介(攻)と石木琢馬(受)が16歳で知り合い、30を過ぎてから結ばれるまでがじっくりと書かれています。
文学が好きだった京介は琢馬に詩の才能を見出したのをきっかけに交友を深め二人は親友となるのですが、20歳の時、琢馬が大学進学を諦め結婚すると告げたことにより、衝撃を受けた京介は琢馬への恋心を初めて自覚します。
その後、京介は貧しい琢馬の結婚生活を影になって支え続けるんですね。
心理的なことだけではなく、本人には告げずに金銭的なことも。
報われない想いを親友には呆れられますが、琢馬には何も告げずにずっと支え続ける。
京介は間違っても献身的なタイプではなく、耐え忍ぶ恋に殉ずるタイプの男には見えないのですが、そういう京介だからこそ、胸に秘めた純愛が深々と沁みる気がします。
琢馬の妻の死に崩れそうになる琢馬を支え、30歳を過ぎてやっと結ばれるまで…。
展開は静かですが、その特徴ある文体や言い回しで多用される情景描写はただの風景説明ではなく、光や影、音や匂いや温度の全てが主人公たちとシンクロしてその想いを語ります。
それによって一行一行がとても奥行きあるものに見えているように思います。
さらっとしているようでいて、意外にじっとりと濃いですよ。Hシーンもしかり。
かなり好きでハマったのでベタ褒めしていますが、実は時系列がちょっとわかりにくかったり、情景描写に語らせるわりに心理面が明快でないという印象もあります。
凝った文章は、もしかすると読みにくいという意見もあるかと思うんですが、好みに合えば、やみつきになる鳩かなこさん独特の世界、雰囲気を持っています。
イラストもこういう時代ものにはピッタリの今市子さんで、これ以上はないベストマッチです。
『大正浪漫』のみということで、今後どういう世界を創りだしてくれるのか、個人的にとても注目している作家さんです。
たまにはまるで文学を読んだような気になるこんなお話もいかがでしょうか。
本作がお気に召しましたらスピンオフ『帝都万華鏡?梔子香る夜を束ねて?』で京介の親友のお話も楽しめます。

紹介者プロフィール:汐
本代を捻出するため(もちろんBL)、日々いかに節約するかで頭がいっぱいの主婦。砂原糖子の商業誌作品はコンプリート。小川いら、たけうちりうと、も即買い。BL以外では、椹野道流「鬼籍通覧シリーズ」に勝手に腐の香りを嗅ぎ取り萌え狂っているらしい。しかし好きな本ほど絶版になるというジンクスが……。

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