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『ヒズ・リトル・アンバー』発売記念!100年後にも伝えたいナツメカズキ作品特集

2023/11/20 16:00

あなたのナツメ先生はどこから?私は『MODS』から!



先日、待ちに待ったナツメカズキ先生4年ぶりの新刊ヒズ・リトル・アンバー上下巻が発売されましたね!
読み終えた後、しばらく経っても新刊のことで頭がいっぱいになるくらい、ほんっとうに良かった……。身近に未読の方がいたら必ずオススメする日々を過ごしています。

ところで、皆さまの初めてのナツメカズキ先生作品は何でしたか?
筆者がナツメ先生作品にハマったきっかけは、BLアワード2017にて複数部門で上位にランクインした大人気作MODSでした。ナツメ先生の描く、切なくも愛おしい世界に惹かれた方も多いのではないでしょうか。一度ハマると抜け出せない沼といいますか……『MODS』含め、そんな魅力的な作品が本当にたくさんあると思います。

そこで今回は、ナツメ先生の過去作品から最新刊『ヒズ・リトル・アンバー』までを一挙に振り返ってまいります! 懐かしい気持ちとともに、作品発表当時の衝撃も蘇ってくるかも? 未読の作品がある方も、新刊をきっかけに気になっている方も、ぜひ一緒にナツメ先生作品の虜になってしまいましょう♪

◆目次◆
1.キスフレとの再会、クールな男たちの熱い恋『I HATE』
2.壮絶な過去を持ち生きる男、その未来とは『MODS』
3.想い人の死に囚われた男、救済の物語『NIGHTS BEFORE NIGHT』
4.誰よりも長く近い、くされ縁の親友同士『バイ・マイ・サイド』
5.  可愛すぎる一匹の一途すぎる恋と葛藤『ヒズ・リトル・アンバー』


 


I HATE

 

なんとこちらの作品がナツメカズキ先生の初コミックスだそうです。衝撃とはまさにこのこと! スタイリッシュさ切なさが同居しているこの感じが、まさにナツメ先生作品の色が濃く出ていて……“原液”を感じました。

タイトルの通り、お互いのことを素直に「好き」と言えない2人の熱い感情を描き出した本作。高校時代に「キスだけをするフレンド」通称・キスフレという関係にあった2人が大人になって再会するところから物語は始まります。

クールなキャラクター性でありながら、腹の底に溜まった消化しきれない想いが溢れ出す、素直に感情を放出する場面が印象的でした! 時間が経っても消えることのない過去について、成長した今の2人はそれぞれどう感じているのか? 徐々に描かれていく彼らの本音も必見です。

同時収録作品『No where,Now here』では、また違った年月の経過を感じさせる幼馴染2人が登場。
こんなに尊い「絵しりとり」がかつてあったでしょうか。大人の恋を後押しする子供時代の記憶がとんでもなく愛おしかったです……。

過去の思い出を抱えた2組のカップルをた~っぷり堪能できる、衝撃のデビュー作でした!



MODS

 

割の良いバイトを探していた攻め・信虎は、ゲイ向けデリヘルで働く受け・シロの専属ドライバーをすることになります。どんな特殊プレイもNGなしのシロは、一種の自傷行為のようにハードな仕事をこなしている様子。そんなシロを不安に思い、信虎が相談を持ちかけたところ、シロの自暴自棄に拍車がかかってしまい……。

正直なところ、シロが心を殺し、壮絶な過去に蓋をしている姿が見ていられないほど辛かったです。しかし、物語ラストでは涙が出るほど切ない気持ち温かい気持ちが生まれたのも確かでした。辛い過去があったからこそ、信虎に温かい気持ちをもらったシロが少しずつ前に進んでいく様が際立っていました!

また、作中でシロがよく着ているモッズコートを、表紙では信虎が着ているという点にもエモさを感じまして……! 信虎がシロに全てを捧げるというよりも、互いのぬくもりを分け合うような2人の関係性が見える表紙なのでは? と個人的には解釈しております。
「絶対に2人には幸せになってほしい!」と願いながら読み、信虎がいたから迎えられたハッピーエンドをしっかりと見届けることができて、本当に感無量でした。



NIGHTS BEFORE NIGHT

 

本作では、前作『MODS』に登場するゲイ向けデリヘルのオーナー・の過去が語られます。春が愛した男・時雨の存在や、前作の主人公・シロとの出会いも描かれ、過去から現在に繋がる物語を見届けるスピンオフとなっています。

過去の縁もあって突然預かることになった問題児・雪鷹は、今は亡き春の愛する人・時雨の腹違いの弟。偶然のような、運命のような2人の出会いによって、長い年月ずっと囚われ続けていた「想い人の死」を乗り越えていく春から目が離せません。

雪鷹の見た目から時雨の面影を感じてしまっていたこともあり、雪鷹の存在自体が春を苦しめているようで、またまたしんどかったです……。ただ、孤独だった2人が共に暮らす中で心を通わせていく過程を見守るうちに、間違いなく春にとっての「救い」を雪鷹がもたらしてくれているんだと感じられ、涙が止まりませんでした。

『MODS』『NIGHTS BEFORE NIGHT』、2つの切ない物語を読み終えると、最後には光が差し、温かい気持ちに包まれます。個人的には、この2冊を合わせて読むと、「この世界を堪能しきれた!」という清々しい感覚も感じられるのではないかと思っております……!



バイ・マイ・サイド

 

料理人の左京とお花屋さんの右山、高校時代からのくされ縁で共に上京した2人の物語です。同じアパートの隣人同士でもあり、面倒くさがりな左京と面倒見のいい右山という良き関係性。ですが実は、右山は出会ったときからずっと左京のことが好きで、左京はその想いに全く気付いていませんでした。

右山が想いを秘めていた期間が長いこともあり、蓄積された想いがとんでもなく一途! そして、とあるきっかけで右山の想いを知ってしまった以降の左京がまた良かったです……。
本作は、ある意味では身近にありそうな世界観だと思いますし、そこに親しみが感じられ、読みやすさがありました。加えて、友情と恋の狭間でもがく不器用な2人の心情が丁寧に見えることで、より繊細に作品が伝わってきます。

個人的な見どころとしては、想い合う2人を拒むものは一体何なのか、ということ。片想いをしていた長い年月がそうさせてしまったのか、右山の葛藤と、そんな右山と左京がどのように向き合っていくのか、じっくりと見守りたいところです!



ヒズ・リトル・アンバー』上下

 

 


豹の姿になることができる謎の美少年・琥士郎は、一緒に暮らしている不愛想な男・源慈のことが大好き!幼い獣姿の頃に琥士郎を拾って育ててくれた源慈は親代わりのような存在で、想いを伝えることができない恋……のはず。
一方で、源慈は自分になついてくる一途で真っ直ぐな琥士郎に、クールに対応しているようで無自覚な溺愛仕草も垣間見え、とってもキュンキュンしました。「琥士郎」と名付けた理由もあまりに""愛""でしたよね!?

これまでご紹介してきたナツメ先生作品とはまた違った雰囲気の世界観なのですが、上巻から既に可愛すぎる琥士郎くんにやられてしまいました。外見はもちろんのこと、内面も健気で素直で、でもしっかり考えて源慈のこと想っていて! その一途な想いが一方通行に見えてしまうときには、琥士郎くんに感情移入して胸が張り裂けそうになりました(泣)。
しかし、源慈は源慈で、琥士郎くんのことを大事にしているが故の葛藤を抱えているんですよね……。

恋愛的な愛情、そして家族の親愛や絆までもがギュッと詰まった2人の未来を見届けた先には、読んだこちらまで幸せな気持ちで満たされるような、温かい読後感がありました。不思議な異世界めいた世界観のはずなのに、どこか日常の片隅で起きていそうな物語にも感じられて、これがまさに先生がインタビューでおっしゃっていたことか! と大納得しました。

ナツメ先生4年ぶりのコミックスということで発売を心待ちにしていたのですが、その気持ちを遥かに超えてくる傑作でございました……!!



*****

いかがでしたか?
ナツメカズキ先生の作品を振り返ってみるとやはり、登場人物の過去や、心に隠した本音を丁寧な構成で見せてくださっている印象を受けます。キャラクターの深みを教えてもらえるからこそ、筆者も一読者として、作品に登場する人物たちがみんな愛おしく感じるんです……!
そういったキャラクターへの愛が芽生えることで、作品の世界への没入にもつながっているのでは? と再確認いたしました!

今後のナツメカズキ先生作品も楽しみすぎますね! ひとまず、しばらくは新刊を何度も何度も読んで、じっくり噛みしめようと思います♪

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