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【祝完結】『ハッピー・オブ・ジ・エンド』の2人が迎えたのは“ハッピーエンド”だったのか

2023/10/26 16:00

2人が辿り着いた結末に大号泣…壮絶な「愛」に刮目せよ



皆さん、『ハッピー・オブ・ジ・エンド』が終わりました。無理無理無理。泣きすぎて顔面がぐちゃぐちゃ、心もぐちゃぐちゃです。

これまで幾度もおげれつたなか先生には泣かされてきましたが、そんな先生の新刊が先日発売され、またもや涙腺を持っていかれました。
BLアワード2022「ディープ部門第1位」を獲得した1巻目から始まり、最終巻である3巻までずーーーっと心を乱されっぱなしでした。なんて素晴らしい作品に出会ってしまったんだろう……。

この作品を真の意味で消化できる日が来るのか甚だ疑問ですが……今回はなんとか言語化できた感想&考察などを語っていこうと思います。

各巻ごとの感想を最終巻も含めて大ネタバレありで語っていきますので、未読の方はぜひお読みになってから、涙を拭いて、またお越しください……!

◆目次◆
1.【1巻】健気受け視点で美人攻めを堪能しようとしたはずが……
2.【2巻】「お互いがいなきゃ生きていけない」まで来ています
3.【3巻】辛すぎる選択は最高のラストへの布石!
4.おわりに

 



【あらすじ】
「おめでとう、生きてる」
昼下がりのゴミ捨て場、見覚えのある男の声で目が覚めた。空腹で金もない千紘は新しい"家"探しに訪れた行きつけのバーでド好みの男・ケイトに目を奪われ声をかけると好感触。まさかのホテルに誘われ、いい雰囲気になったところで突然電マでボコボコに殴られたのが1日前――。
全てを思い出すも、仲間を呼ぶケイトの様子を見て今度こそ殺されるかもしれないと思いつつ回収された先はアパートの一室。ケイトの目的はとある探し物で、自分が用無しだとわかるとあっさり「消えて」と言い放たれるが帰る"家"もない千紘で…。
謎めいたどイケ傷害男×人生底辺ヒモカス男
クソみたいな人生、愛に飢えたふたりの歪な協和音


主人公・千紘(受け)の元カレが急に結婚してしまうところから始まる1巻。千紘が可哀想すぎる上に、シンプルに相手の男やばっ! とドン引きしていたら、もっとやばい匂いのする“顔のいい”傷害男が登場し一気に引き込まれました。この美人さん、只者じゃない……。

実際に、大きな声では言えない様々なお仕事を少年時代からしていたようで、ケイト(攻め)と呼ばれるこの男のキレイな笑顔も言葉も、全てが作り物に見えて不気味さすらありました。彼の感情は一体どこにあるのだろう……と、何も警戒せずケイトに言い寄る千紘が心配になります。

ただ本作のすごいところは、この重厚なストーリーの中で、きちんと萌える甘いポイントがあること。例えば2人が出会う場面では、ケイトのお顔や雰囲気が千紘の好みだったのはもちろんのこと、なんだかんだ千紘の泣き顔を見て早々に心が動いてしまったケイトが良い!! 一読者としては、「美形ケイトのまつ毛きれ~」と思っていたら、失恋などのショックで涙をいっぱいに溜めている千紘の目元にもやられました。

また、2人の衝撃的な出会いから、ケイトのもとで千紘が居候するに至るまでの流れが全く普通ではないはずなのに、なぜか受け入れることができて困惑しています。ケイトは相変わらず腹の底が見えませんが、千紘のことを気に入っているからわざわざ面倒を見るんだろうな~と完全に“理解”ったからかもしれません。

そして、ケイトの過去話は筆者の知り得る「辛い」現象をかき集めて煮込みまくったような、可哀想なんて言葉では生ぬるいほど激重でした。自分の居場所がなくなった少年時代のケイトが行き着いた先がこれって……。

彼の過去に関わってくる母親の存在も生々しく描かれ、ケイトが母親に向けていたあの柔らかい表情、忘れられませんよね!? 千紘と一緒に暮らすようになってケイトの中で何が変わったの? もう幸せなんじゃないの? ケイト&千紘の幸せを願いながら読んでいた身としては、読み手の不安を煽る描写としてこれ以上ないと感じました。

もちろん、ケイトが母親と一緒に幸せになる未来だってないわけではないと思います。しかしあまりにも、何も持っていなかった千紘と2人で幸せになる未来を望まずにはいられず……。
幸せになるための選択肢はたくさんあったはずなのに、登場人物たちと同じようにハッピーエンドは一つしかないこれが上手くいかなかったらバッドエンドになるんだと視野を狭めて没入してしまいました。だからこそ、2人で過ごす些細な幸せを拒むケイトがずっと心配で、何度も「幸せになっていいんだよ」「これが幸せだよ」と伝えたくなってしまいます。

真っ黒な瞳に光が差す瞬間に惹かれて


光のない漆黒の瞳が印象的なケイトですが、物語の中で何度かハイライトが入るシーンがありましたね。
中でも、ケイトではない本当の名前・浩然(ハオレン)を千紘に教え、それを初めて呼んでもらうシーンには頭を抱えました。普段はキリっとした美形がふにゃっと緩んだ笑顔を見せるだなんて由々しき事態……!

読み返してみると、やはり千紘のコロコロと変わる感情豊かな表情を見て瞳が明るくなる場面が多いですね! 浩然には千紘がいないといけないんだな、と強く思いました。

そして、母親(?)の死をきっかけに絶望の底にいた浩然が、必死に“楽しい”感情で辛い状況を上書きしようとし、最終的には「死にたい」という結論に至ってしまいます。
辛い場面ですが、ここで浩然と千紘それぞれの価値観が分かるような気がして何度も読み返しました。

個人的解釈ですが、千紘は生きていても生きていなくても浩然と一緒にいられるなら幸せだと思っていて、一方浩然は、千紘と一緒に生きて幸せになりたいと思っているのではないかと……線路に寝転がるシーンで考えてしまいました。
このとき、壊れかけていた浩然の心が再形成される過程で未来がある方を選んでくれて本当に良かったです。千紘のおかげです、ありがとう(泣)。

最後に、感情を剥き出しにして幸せを願う浩然と千紘が脳裏に焼き付いて離れません。

 

 

【あらすじ】
最悪の出会いを経て、行き場のない千紘が浩然の元に居候をして始まった共同生活。何かから逃げるように繰り返される引越しの中浩然が初めて見せる表情やしぐさに戸惑う千紘だったが心の距離が近づき、触れ合いにも甘さが混じる。気持ちを確かめ合ったふたりは身体だけでなく心も重ね映画館デートをしたり、プレゼントをもらったりと、"普通の恋人"らしい穏やかな時間を過ごす日々。
そんなふたりの前にひょっこり現れた男・マヤ。家を転々とし逃げ回るほど会いたくなかった相手を前に動揺を隠せないでいる浩然だったが――?
「俺がいなきゃ生きていけなくなってくれ」
「……もうなってる」
痛みを抱えながら生きてきたふたり
背中を寄せ合うように過ごす"普通の幸せ"
――束の間の平穏


2巻も語りたいことは多いですが、ひとまず魅力的な登場人物の話をさせてください。

本作を語る上で絶対に欠かせないのは、1巻から登場していた加治さん! 当て馬ではないのに当て馬っぽく扱われる様子から愛すべきキャラクター性が溢れ出ていて、かなり魅力的ですよね。
ただ加治さんも、前項で語ったメイン2人と同じように消化できていない過去があるようで、本当にいい人なんだろうなと感じる場面が多数ありました。自分の過ちをすぐに認めて謝罪できるってすごい。

浩然も付き合いの長い加治さんと一緒にいると自然体になれているし、浩然が嫉妬するくらい千紘はあっという間に加治さんと仲良くなっていました。
2人だけの空間に加治さんが加わることで、浩然と千紘の素直な一面が見れるのも良かったですね。

特に、2人が付き合っているのか確認するところ!!! あれは加治さんがきっかけを作ったと言っても過言ではないのでは?? 大人のピュアすぎる告白を見ちまった……。

そして、あらすじにある「束の間の平穏」という言葉、言い得て妙だなと思いつつ……まさに安心して見守ることができたデート回がありましたね! 普通にお買い物をして、普通に映画を観て、街中で一緒に歩いて……。ただそれだけのことが嬉しくてずっと見ていられました。

でもやっぱり浩然が不安定なんですよね……。千紘も浩然がいないとダメだ! という気持ちを持っているはずなのに何かが上手くいかない。
浩然が身体に刻まれた消えない傷を躊躇なく千紘に見せたとき、「過去のことはもう乗り越えて千紘と生きていくんだね!」とニコニコした自分が浅はかでした。そういえば浩然の過去ってまだ清算しきれてないじゃん……。

身寄りのない者同士、2人だけで生きていくこと自体は(浩然がお金を持っているので)そこまで難しくないと思うのですが、なんせ浩然に対して復讐心を持つヤバい奴・マヤに追われているんですよね……。
そんな不穏な状況ですが、色んな人に助けてもらいながら何とか生きようとする姿は、自らをゴミだと言ったり、「死にたい」「死ねる」と言っていた頃の2人とは全く違うものでした。

穏やかな時間が突然終わりを迎えるのではないかという不安は拭えませんでしたが、ありふれた世の恋人たちのようにクリスマスを過ごす2人が見れて少し安心できました。ラブラブすぎるお正月も本当によかった(泣)。たっぷり幸せをチャージさせていただきました。

幸せそうな2人以外にも目を向けなくては


初詣にて、神様に願い事をする浩然が流した涙が気になり続けていました。何を想ってそんなに悲しくなってしまったの……。
千紘と過ごす日々があるのにこれ以上何を願えばいいのか、といった浩然のモノローグもありましたが、にしては以前より未来に対する姿勢が弱くなっていません……? 千紘が話す未来の話にも全然ノリ気じゃないですよね……?

2巻は幸せモードな2人をたくさん摂取できると同時に、何やら不穏な予感がずっとありました。そしてその予感は的中してしまい……2巻の最後にマヤが登場し、当時の筆者は「3巻がまだこの世にないだと!?!?」と思わず叫んでしまいました。


 

 

【あらすじ】
ふたりで過ごす穏やかな時間を脅かすマヤと、逃げるように引っ越しを繰り返す浩然と千紘。ところがついにマヤが千紘に接触し、拉致。浩然を親友と呼ぶ様子に違和感を覚え反論すると態度が急変したマヤに襲われ意識を失う千紘だった。
マヤの暴走から難を逃れた千紘は病院で目を覚ます。退院後、表向きは今までと変わらず過ごすふたりだったが触れようとすると怯える千紘を見た浩然は罪悪感や憤りの感情に苛まれ自分を責める幻聴まで聞こえ始めるように。追い討ちをかけるようにマヤから"千紘の動画"が届く。ささやかだけど幸せな日常が壊れ始めたことに気づいた浩然はある決断をする――。
「俺のこといっぱい思い出して、それで――もう忘れろ」
欠けたものを埋め合える存在
愛を知ったからこその別れ、その先に待ち受ける結末とは――?


さて、3巻が発売された時間軸の皆様……咀嚼しきれていますか!?!!?
一冊読み終えた後、いま一度あらすじを読んでみてください。情景や表情がリアルに記憶から掘り起こされ、ぶわあーーっと押し寄せてくる感じがしませんか? 今ならあらすじだけで泣けます。

今回のストーリーは、「マヤに恨まれている浩然」から「マヤを恨む浩然」への変化がひとつの転換点に見えました。マヤが千紘を傷つけたことは、浩然がこれまで抱いていたマヤへの恐怖の感情が塗り替えられるほどの出来事だったのだと思います。
それにしても、千紘の泣き声が脳にこびり付き、自分を責める幻聴まで聴こえてしまうなど、浩然がどんどん追い込まれていく姿が辛すぎました。マヤへの恐怖がすぐに黒い感情に切り替わるわけではなく、じわじわ積み重なった末にプツンと何かを決断してしまう浩然……。

千紘と一緒に幸せになりたい浩然にとって、千紘がいなくなってしまうかもしれない恐怖は、マヤに怯える日々よりも深刻な問題なのだと、その後の浩然の行動で分かってしまいます。ひたすらにしんどい。

読後の皆さんはご存知かもしれませんが、千紘を想い追い詰められた浩然は、“とある行動”を起こしてしまいます。それが2人の運命を決定付ける重要な事件となり……。筆者は思わず頭を抱えてしまいました。

浩然が決断したのは、千紘と一緒に生きていくことより、千紘の安全な人生を取ったということ……。千紘へ向けた「もう忘れろ」の言葉には涙腺が崩壊しました。あまりにも愛が大きすぎるのは分かりますが、頼むから2人一緒にいてくれよ……。

2人が離れている方が安心して見ていられるのはなぜ?


マヤの事件を機に距離を置いてしまった2人でしたが、千紘はなんとカメラのお仕事を始めていました。ダメダメなヒモとして他人に縋っていた頃の面影はなく、超立派に働いている……! しかも浩然のことを想い続けたまま!!!!
浩然がいなくなったばかりの頃に、心が空っぽの千紘にインスタントカメラをプレゼントした加治さん、ファインプレーすぎです!! (加治さんの罪悪感もこういったところで晴れていたらいいなと密かに願っていたりします)

千紘の日常を見るとすごく前向きに生きているように思えますが、心はずっと浩然のところに置いたまま。浩然に言われた通りに忘れてしまうわけもなく、一緒に居た頃にできなくて後悔していた浩然の写真を撮る準備を万全に整えているだなんて、夢かと思いました。

さらに夢と言えば、3巻の表紙の浩然はなぜこんなに素敵な笑顔なのか? 夢か幻覚かと思いませんでしたか? でも裏表紙を見るとあら不思議。ははーん理解しかないですね。そりゃ浩然もこの表情になりますわぁ……。

2人が離れて過ごしている時間は思った以上に穏やかで、先の展開で再び結ばれる確信もないのに、なぜか表紙&裏表紙に描かれた未来に行き着く気がしてワクワクすらしました。想い合っている2人が本人たちの意志を押し殺して距離を置いている、悲しくて寂しい時間のはずなのに……。

浩然が初詣の場面(2巻)で祈っていた内容も最後に明かされますが、これが答えなのかもしれません。
浩然が願ったように、筆者も2人がこのまま一緒に生きていくことを願っていましたし、最後には絶対に2人は再会できる! しなければならない! と強い強い信じる心を持ち続けて読み進めました。

最後の最後まで、浩然も千紘も行動の原理が互いを想う愛ゆえだったことを思い返すと、必然で最高のラストだったと大納得! 全てが繋がった結末には思わず祝杯をあげたくなりました……!!



『ハッピー・オブ・ジ・エンド』シリーズ全3巻を振り返ってきましたが、いかがでしたでしょうか?

何度も何度も読み返しているのに、全く慣れないんですよね。毎回同じところで涙は出てくるし、展開を知っていても自分の中に巣くった不安や期待にまた襲われる感覚。この感じが本当にたまらない……もう中毒です。

今回は物語を大きく動かしていた浩然を中心に語りましたが、当初は何も持っていないと言っていた千紘特大の愛を持っていたことも重要すぎる注目ポイントだと思っています。互いの欠けている部分を埋め合える2人の“ジ・エンド”を見届けられたことがこれ以上ない幸せでした。

改めまして、『ハッピー・オブ・ジ・エンド』シリーズ完結おめでとうございます! 人生レベルで最高な作品をありがとうございました!!

担当記者:ツナ吉
天才受け・無自覚愛され受けを好む人間。子育てとか家族とかそういうテーマにめっぽう弱い。問答無用で黒髪美人が好きなのです。

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