株式会社リブレに潜入!タテ読みマンガ制作の裏側に迫る
BLファンなら誰しも「BL編集部の裏側を覗きたい!」と思うもの……!
そんなみなさまの声にお応えして、今回は「ビーボーイ」レーベルでおなじみの株式会社リブレさんに取材に行って参りました!
「ビーボーイ」といえば『抱かれたい男1位に脅されています。』や『エスケープジャーニー』をはじめ、多くのファンに愛される作品を数多く輩出しています。
そんなビーボーイから、8月になんと「タテ読みマンガ」が刊行!
「完全オリジナルタテ読みマンガ」の制作は、日本のBL業界に先駆けた挑戦……。そんな最先端を行く株式会社リブレの担当編集様&制作担当様に、たっぷり制作の裏側を語っていただきました!!!
ヨコ読みとタテ読みマンガの違い、表現方法の工夫やこだわりなどなど、ここでしか聞けない貴重なお話しが盛りだくさんです……! ぜひ最後までご覧ください!
「ビーボーイ」から刊行されたタテ読みマンガは、こちらの2作品!
異色の男女双子入れ替わりBL
STORY
資産家の娘、息子が集う正華院学園。この学園に通う男女の双子、旺李と姫李は何もかもが正反対だった。兄はやる気のないサッカー部員、妹は生徒会役員補佐の優等生。しかしひょんなことから突然二人の身体が入れ替わってしまう。元の身体に戻るため、兄・旺李は妹の身体で、現会長で学園の王者・鳳堂典を色仕掛けでオトすはめに…!そして妹・姫李も兄の恋の秘密を知ってしまい…?
双子の女の子と男の子が入れ替わるところから始まるこちらの作品! 兄・旺李は妹の身体で会長に接近しますが、裏の顔はサイコ感あふれるミステリアスな男で……!? 恋愛要素と謎解き要素が入り乱れる骨太ストーリーにのめりこむこと間違いナシです♥
中華後宮婚活サバイバルBL!!
『いらない王子の婿入り』原作:merorico 作画:akari
STORY
代々女帝が治める豊かな国「応国」。夫に先立たれた后土帝の再婚相手を見つけるため、国内外から5人の若き婿候補の公達が選ばれた。互いに女帝の夫の座を狙いアピールしていく、壮大な婚活パーティー物語…のはずがーー。女帝が男同士の絡みに興味を示すことに気が付いたハオランは、手近な公達・ルオジェと手を組むことに。2人でビジネスBLにいそしむ中、徐々にお互いを意識し始め…?
タテ読みマンガでは定番の「中華もの」ですが、こちらの作品はひと味違います!「ビジネスBLから始まる本気の恋」というテーマの本作は、とにかく明るいラブコメディ。だんだんお互いを意識し始める「策士な攻×初心な受」のとぼけたやり取りに身悶え必至です!!!
ストーリーはもちろん、中華風の絢爛な衣装や、それを纏ったイケメンたちがひたすらに眼福&癒し。バラエティ豊かなキャラクターたちに、きっと推しキャラができるはず♥
今回は株式会社リブレのタテ読みマンガ担当者様2名、制作担当者様1名にインタビューさせていただきました!
・Kさん
タテ読みマンガの制作全般を担当。
平成BLを生き抜いた、生粋の「ヘタレ攻め」好き。
・Eさん
BLに限らず、他の女性向けジャンルの編集も担当。
何かが欠如した「クズ攻め」が好物。
・Mさん
リブレ歴18年目。小説の編集部を経てマガジンビーボーイの編集部に。
受けが攻めを育成する展開に萌えを感じる。
タテ読みマンガが世界の最大公約数
──ヨコ読みのBLコミックスを多く刊行されている「ビーボーイ」レーベルですが、どのような経緯でオリジナルのタテ読みマンガを制作されるに至ったのでしょうか?
Mさん 数年前から「タテ読みマンガやりたいね」という話があったんです。というのも、海外ではヨコ読みがあまり読まれなくなりつつあって、タテ読みマンガが世界の最大公約数だという流れになっていて。そこで「リブレのBLをちゃんと世界に届けたい!」という思いでタテ読みマンガ制作に踏み切りました。
Kさん 日本のヨコ読みは独特なんですよね。日本語は縦書きだから右からスタートするし、そもそも読むにあたっての文化が海外の横書きと全く違う。だからタテ読みマンガが出てくると、やっぱりタテ読みの方が世界的に読みやすいので、人気になっていくという流れがあります。
Eさん 2、3年ほど前から「通勤電車の中で読まれる作品がタテ読みマンガになってきたな」という実感があって。それで「手軽だけどカラーというリッチな画面で楽しめるコンテンツ」をうちでも作ってみようということになりました。
(C)Mojito/ SEOUL MEDIA COMICS, INC./libre
──国内でも大人気な韓国のタテ読みマンガ作品『ENNEAD』もリブレさんが日本語版の配信をされていますよね。
Eさん 私も『
ENNEAD』配信チームにいました。
韓国のお取引先さんとの商談で情報交換をしていた中で、『ENNEAD』を見た弊社のライツの担当が「なんですかこれ!?」と反応したんです(笑)。『ENNEAD』って攻めの肌が緑色だったり、見るからに「エジプト」みたいなキャッチーなビジュアルなので、そこに惹かれたみたいで。
そこから「こういうのやってみない?」「やりたいです!」というノリでチームを組んで、日本語版配信に向けて動き始めました。
作家の持つ「個の強さ」をタテ読みマンガで表現したかった
──『ENNEAD』の制作パターンとはまた異なり、今回は日本の作家さんのオリジナル作品ですよね。韓国作品の翻訳ではなく、あえてオリジナルを制作しようと思ったきっかけはありますか?
Eさん 単純に「作ってみたかったから!」という感じです(笑)。
Kさん 韓国のタテ読みマンガ制作はドラマに近いと言われていているんですね。プロデューサーに指針を決める権限があって、あとはそれに従って現場が作っていくという。一方で日本のマンガ制作では作家さんが主体で、その方の感性が作品に表れるというのが文化なんです。だから韓国におけるプロデューサーの役割を、日本の作家さんが担ったらまた別のものができるのではないかと思ったんです。
Mさん 日本のマンガには「個の強さ」がある。日本のマンガの良さってそういうところですよね。どれだけ先生らしさが作品に滲み出るかというところをタテ読みマンガでやってみたいという思いがありました。
複数人で制作するからこその難しさ
──ヨコ読みとタテ読みマンガの制作や編集において、どのような違いがあるのでしょうか。
Mさん タテ読みマンガの制作にはたくさんの人が関わらざるを得ないんです。今回はコンテ作家さん、作画家さん、着彩家さんの3名ですね。ヨコ読みでは担当作家さんと編集の1対1であったのに対して、タテ読みマンガでは複数人で制作にあたるので完成形のイメージをかなり明確にしていかないと伝わらないというのが難しいところでした。
今回それを特に感じたのはカラー絵の完成イメージ。こういうカラーリングにしてほしいとか、影の色はもっと濃くしてほしいとか……とにかく伝えることが多かったです。
Eさん ヨコ読み作品を扱っていると、お声がけをしてお仕事をご一緒する時にカラー絵をそこまで重視して見ないんですよ。コミックスになった時にやっと「この作家さん、素敵なカラーを描かれるな」と気付くほどで。だから線画に合うカラーを探す、となったときに慣れていないので大変でした。
──そういったカラーの演出の指示は担当編集さんがされるんですか?
Mさん そこはやっぱり作家さんがします。作家さんが思い描いているカラーをどういう風に引き出すか、というのが編集者の役割ですね。
Eさん まだまだ手探り状態です。
タテ読みマンガ制作にかかる期間はヨコ読みの2倍!
――それだけ多くの方が関わっていると、制作がとても大変そうですよね。ヨコ読みよりも制作期間はかかるものなのでしょうか。
Eさん 一つの工程が遅れると全体が遅延しますから、配信日が定まってからは毎日逆算の日々です……。いつものヨコ読みよりはスケジュールがタイトめですね。
Kさん でっかいExcelの表作って管理していますね(笑)。
──スケジュール感は大体どんな感じですか?
Mさん だいたい作画が2週間、着彩は2週間~1ヶ月弱です。制作をスタートしてからリリースまでには1年以上かかっていますが、これはヨコ読みよりはるかに遅いです。ヨコ読みは半年足らずで連載スタートするので……。
──なんと!2倍近くかかるんですね!!
様々な人の手によってキャラクターに命が吹き込まれる
──カラーイラストのイメージ共有など、とても大変そうだなと感じます……。本作を制作されるにあたり、楽しかったポイント、苦労したポイントをそれぞれお聞かせください。
Eさん 楽しかったのは、カラーがついた完成形を見た時の達成感。モノクロとは異なる感動がありましたね。いろいろな人の手によって、キャラクターがどんどん生き生きしていく過程を見るのはすごく楽しかったです。
ヨコ読みと仕様が全く違うのも面白いポイントでした。ヨコ読みだとページ割りがあるので、ページをめくると別のシーンに切り替わる……という構成にできるのですが、タテ読みマンガの場合は縦に継続的にコマが続いていくのでそれができない。でもすべて繋げて描くということはできないので、途中で切るんです。それで例えば最後のコマをフェードアウトさせたりすると、次のページはフェードアウトの続きから描かないといけなくて……。
Kさん 切れたところでも実はつながっているということを意識しないといけないんですよ。
──本当にドラマのカット割りみたいですね!
Eさん 苦労したポイントというと単純なんですけど、縦長の原稿を横長のモニターで見るのが超絶見づらかったです……(笑)。「スクロールしても全然進まないよ!!」みたいな(笑)。それが一番不便かもしれないです。
──確かにこれは相当見づらいですね……(笑)。
Kさん スマホでも画面を確認しながらチェックしていました。
タテ読みマンガ制作で気付く「作家さんのポテンシャル」
Eさん タテ読みマンガならではの作家さんの工夫もすごく感じます。ヨコ読みだと右から左に視線が動くので、例えば「髪が横になびく描写」とかはすごく描きやすいんですけど、縦になるとまったく違う描写になるんですね。縦の表現だと、例えば髪の毛を下にパサっとおろしたりだとかになるのかな。従来のような横に視線を移動させる表現はやっぱり難しいので、その点は驚くほど自然に視線誘導の工夫がなされていますね。
Kさん でもリブレの場合は同じ方が原作とコンテを担当されているから、「自分がこういう演出をするためにこういう原作にしよう」という密接な計画が立てられるんです。そういう意味で作家さんの中ではいいものが作りやすいというか。キャラクターの行動が縦横の形式に左右されるんですけど、原作とコンテの担当を同じ方にすることでそこをうまくクリアして良い演出に繋がっていると感じます。
──確かに原作とコンテが別の方だと「原作のこのシーン、どうやって縦で表現すればいいの!?」という場面が出てきそうですね。
Kさん 今回も縦の表現を生かしているシーンがたくさんありましたよね。校舎の上から飛び降りるシーンは、ヨコ読みだと引きでキャラクターが見えづらくなってしまうところがタテ読みマンガでは躍動感が生まれるんです。
Mさん 今回はタテ読みマンガを作るということで、作家さんには読者層がより幅広くなることを考えていただきました。ジャンルや表現形式にとらわれない作品作りをされていて、「作家さんの才能ってすごいな……」と。天井知らずのポテンシャルに驚かされました。いままではヨコ読みという形式の中でベストを尽くしてくださっていたというだけで、他にもできることはたくさんあるんだなと。特にすごいと思ったのが、適応の素早さ。横から縦の世界への順応の速さにびっくりしました。
──今回の作家さんはどなたも初めてタテ読みマンガ形式で制作されていますよね。
Kさん そうですね。でもそもそも「こういう創作をしたい」という原動力がおありになるから、横でも縦でもそれを表現できるんだと思います。
Mさん まだまだお描きになりたいことがこんなにたくさんあったんだな、ということを改めて感じました。作家さんというのは本当にすごいんです。
「タテ読みマンガ×作家さんの個性」で生まれた作品たち
──『いらない王子の婿入り』では中華BLという流行りのテーマだったり、『会長、神南さんが変です』では双子の男女入れ替わりという発想が面白かったりと、しっかり読者さんの心を掴む設定をおさえられているように感じます。本作のテーマはどのようにして決定されたのでしょうか?
Eさん 「○○先生にお願いできるなら、こういう作品読みたいよね?」みたいなイメージが編集部内で前々からなんとなくあったんです。ご依頼書を書く段階から、「こういう作品はいかがでしょうか」と簡単なコンセプトを立てて作家さんにご提案させていただきました。
──特に『会長、神南さんが変です』は、メインカプが入れ替わる設定はよく見ますが、男女の双子が入れ替わるというのはあまり見ないので斬新だと思いました。Kさん タテ読みマンガの画面は華やかさが大事なので、1対1で進むBLって地味になりがちなんですよ。だからそこに女の子を出すとか、そういう工夫があると画面がすごく華やかになるんです。
──中華BL『いらない王子の婿入り』ではどのようにテーマ決めをしましたか?Eさん こちらは先にオファーをお受け下さったコンテのmerorico先生に中華BLをお願いしたいとお話ししていました。作画のakari先生に関しては先生ご自身の萌えの幅が広く、中華という異国ものにも柔軟に対応していただきました……!
リブレならではの「誰でも楽しめる作品作り」
──お2人が考える本作一番の魅力や、萌えポイントをお聞かせください。Mさん 『会長、神南さんが変です』はキャラ立ちがキレッキレなんです。双子の男の子が女の子と入れ替わって、ちょっとサイコパスみのある会長を落とすために頑張るという話なんですよ(笑)。そこで会長の謎解きや恋路を楽しんでいただけたらと。画面もすごくアクロバティックで楽しいです。
Eさん 『いらない王子の婿入り』の方は、各国の公達が5人集まって女帝を落とすために頑張るという話です。ひょんなことから「女帝がBL好き」ということが発覚したので、婿候補たちがビジネスBLに励むんです(笑)。画面が本当に美麗で、眼福。線画ご担当のakari先生が全てに気を配りつくしてくださいました。また異国ものだからといって気構えなければならない展開もなく、読みやすい仕上がりとなっているのは原作家のmerorico先生の感性のなせる業かと。
──「中華BL」というといわゆる重厚かつシリアスな作風をイメージしますが、『いらない王子の婿入り』はそういうものに親しみがない方でも楽しめる作品になっているんですね。Mさん どちらもどなたでも読んでいただける作品です。とても華やかなんですよね。キラキラした世界観なので、目で見て楽しんでいただけると思います。きっと推しキャラができるはずです!
Kさん キャラクターがずっと前向きで明るくて、それをカラーで読むというのは贅沢な時間になると思います。作品自体はBLではあるんですけど、タテ読みマンガに適した「漫画として面白い」というところを意識して作っていただいているので、どんな人が読んでも普通に楽しめるのではないかと思います。
──ビーボーイの作品は「王道BL」というイメージがありますが、それは意識して作品作りをされているんでしょうか?Mさん あまり意識してないですね。
Kさん 編集部内ではビーボーイは王道だけとは思ってないんですよね。多種多様に作っているという感覚でいるので。あくまで「作家さんにとって一番いいものを作る」っていうのがリブレのコンセプトなんです。今回は「タテ読みマンガ×作家さんにとっていいこと」という掛け算で作品ができました。だから「絶対こうあるべき」みたいな理想像は普段から全然ないですね。
──明確に「こういう風に作らなきゃいけない」というコンセプトがあるのではなくて、作家さんが描きたいことや好みを尊重して作品づくりをされているんですね。
ヨコ読みからタテ読みへ…表現の仕方が多様化していくマンガ業界
──近年刊行数が増加しているタテ読みマンガですが、今後タテ読みマンガはBL界においてどのような展開がされると思われますか?Mさん 引き続き海外のBL作品がどんどん日本で読まれるようになるんだろうなと思います。あとは、タテ読みマンガしか描いたことがないという作家さんがたくさん出てきて、そういう方がヒットを出していく感じになるんじゃないかと。
Eさん タテ読みマンガのBLには正解がないんですよね。一般作品を読んでいると、例えばコマの間隔はこれくらい空いているとテンポよく読める、みたいな法則があるようなんですが、BLに関してはヒット作を読んでも一般作品とは法則が違うような気がして。一説には中国ではモノクロに近いタテ読みマンガも出ているとか……。今後カラーの様式もどうなっていくかわからないし、その時々の情勢に合わせて変わっていくのだろうと思うと、一歩一歩挑戦していくしかないですよね。
──タテ読みマンガでのデビューを考えている漫画家さんは、どういったことを勉強したらよいでしょうか?Mさん タテ読みマンガって映像的なので、アニメとか映画の映像を見るのが勉強になるのかも。ユーザーの感性もそちら寄りな気がするので。あとは好きなものの言語化ですね。
Eさん 全工程に携わりたいのであれば、まずはコンテ力や原作力なのかなというように感じています。面白いタテ読みマンガ作品を読んで、どういうコンテが切られているかとか、どんなセリフ選びをするかとか、そういうことを研究していくのがいいと思います。
Kさん 創作したいものがあって、いろいろなことを知っている作家さんが、どういった媒体やジャンルで描かれてもすごい作品を生み出されていると思います。ヨコ読みからタテ読みの移り変わりみたいにどんどん媒体の垣根がなくなっていくと思うので、いろいろなことに興味を持って創作できる能力を身に着けることが求められるのではないかと思います。応用はどこでもできるので。
──最後に、この記事を読んでくださっているちるちるユーザーにメッセージをお願いいたします!Mさん ちるちるのユーザーさんは本当に熱気にあふれているので、私もその熱気に時々あたりにいっています(笑)。皆さん本当にBLを愛してくださっていて、自分も同じ気持ちで日々仕事をしています。ぜひ今回のタテ読みマンガも読んでいただいて、皆さんを新たな世界に連れて行きたいです!
Eさん BLを愛してくださっている方からBLに興味を持ち始めた方まで、ものの5分で1話読めるので気楽に読んでみてください。タテ読みマンガから新たな癒しを得てほしいです!
――ありがとうございました!
まとめ
今回のインタビューを通して、リブレの皆様の作品愛や作家愛をひしひしと感じました……! 作家さんの表現を最大限に引き出す編集者さんの熱意。読者の皆さんにも伝わっていれば嬉しいです!
そんな想いやこだわりが詰まったタテ読みマンガ作品『
会長、神南さんが変です』『
いらない王子の婿入り』は各電子ストアで配信中です!
ぜひ作品を読んで、評価&レビューで感想をお伝えくださいね♥
ビーボーイのタテ読みマンガ特設WEBサイトは
こちら