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【迫りくる巨塔】チン…がデカい攻めにありがちなこと
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2018/02/05 14:37
不動の名作『囀る鳥は羽ばたかない』は腐女子以外の人からも支持されている作品。
2016年にはフラウ女子マンガ大賞受賞も受賞し、ヤクザライターの鈴木智彦さんもこの作品を高く評価しています。
『囀る鳥は羽ばたかない』は今までにない本格派ヤクザBLとして受け止められているようですが、その人気の秘密は何か?
ヤクザBLを語るときにキーワードになる「任侠」と「極道」という二つのジャンルについて考えてみました!
小説家でBL評論も書く三浦しをんさんは、エッセイデビュー作『シュミじゃないんだ』の中で「ヤクザBLと任侠BLは違う」と語っています。
任侠モノと言える作品がボーイズラブの中には少なく、のちに小説ではヤクザブームが来るもののやはり任侠といえるものはあまりないとのこと(2006年当時)。
『黒羽と鵙目』花郎藤子
ここでは三浦さんの言う「ヤクザもの」を分かりやすくするために「極道」と呼んでみましょう。
Wikipediaでそれぞれの言葉を調べてみると、任侠は
「仁義や信念を重んじる」、「困っている人を助けるために体を張る」
任侠
という意味として理解されているようです。
「侠気」を「おとこぎ」と読むことからもわかりますね。
一方で、極道は、単に
「ならず者」、「道を踏み外した者」
極道
として説明されています。
三浦さんによると、任侠とはある種の掟に従って行動するアウトロー集団で、親分への絶対的忠誠心と自分自身の仁義の間で揺れる姿を描くもので、クスリと女を扱うようなことはしない。
そして背中の刺青や長ドス、義兄弟の契り、決死の殴り込みが様式美とされます。
『はめてやるっ!』剛しいら イラスト石原理
なるほど、任侠は特に仁義を大事に、レトロな小道具などディティールが大事なんですね! 高倉健が出てくるような任侠映画を想像しました。
反対にヤクザものは仁義よりも金や縄張り優先の世界。わかりやすくもシビアな世界ですね。
『花組任侠伝』初田しうこ(鹿乃しうこ)
三浦さんによると、『黒羽と鵙目』『はめてやるっ!』『花組任侠伝』は「任侠モノ」の作品といいます。
なるほど、仁義や義理人情の世界ですね。悪の力を正義のために使う、義賊的な部分も。男と男のぶつかり合いという面もあります。
一方、「極道」「ヤクザ」ものは仁義無用で、カネのために仲間を裏切ったりします。数の論理に忠実で徒党を組むのも特徴。
『囀る鳥は羽ばたかない』ヨネダコウ
例えばヤクザBLの金字塔『囀る鳥は羽ばたかない』では、受けの矢代自体はカネ重視のヤクザで、仁義は特に気にしないというスタンス。
世界観自体も、上納金の取り立ての厳しさの苦しむ男の姿が描かれるなど、経済ヤクザ的です。
ただしその中で義兄弟の絆、忠義を重視するキャラクターや男同士の複雑な感情の絡み合いが描かれています。
むしろ、経済ヤクザ的な世界観に生きるヤクザと仁義に生きるヤクザたちという異なるキャラクターたちが、同じ物語に登場しときにぶつかり合い複雑な感情の交錯が描かれていることがこの作品の魅力なのではないでしょうか。
『コオリオニ』梶本レイカ
『コオリオニ』はすごくハードな描写で話題になりました。
読めばわかるとおり、『コオリオニ』は仁義? なにそれおいしいの? と言わんばかりの非情な物語。親分への忠誠心などなんのその、自分のやりたいように生きるヤクザ・八敷の姿は美しくも悪魔的です。
ただ「極道」ともいえない口当たりよいテイストの「ヤクザ」モノもかなりの数存在します。
以前ちるちるで行った「ヤクザ特集」を見ると、「極道」のそれとは違う軽やかなヤクザもの、こんな有名作品があります。
「ファインダー」シリーズ やまねあやの
裏社会を舞台にしたアンダーグラウンドエンターテイメント!
「エス」シリーズ 英田サキ イラスト奈良千春
刑事とヤクザがカップリングのハードボイルドエンタメ
『ほんと野獣』シリーズ 山本小鉄子
ラブコメヤクザエンタメ、という、ひとつのジャンルを切り開いた記念的作品
これらの作品はどちらかというと、クールでスタイリッシュなヤクザモノやライトなヤクザモノと言ってもいいのではないでしょうか。
ただハードボイルドだからといって、必ずしも任侠というわけではない。一方で、必ずしもライトヤクザ=極道ではないとも思います。
やはり任侠との違いは「仁義があるかどうか」なのでは?
刺青や長ドスの小道具も重要ですが、最近は分けられない作品が多い気がします。
阿仁谷ユイジ『刺青の男』や雲田はるこ『新宿ラッキーホール』は極道的な状況のなかで任侠的なヤクザの世界を描いています。
その逆は西田ヒガシ『やさしいあなた…』です。
『刺青の男』 阿仁谷ユイジ
『刺青の男』では、美しい刺青もさることながら、兄貴への忠誠を尽くそうとする男の姿が涙を誘います。
『新宿ラッキーホール』雲田はるこ
『新宿ラッキーホール』でも、サクマさんが親分に逆らってクミを必死に守ろうとするのが本当に良いですよね!
『やさしいあなた…』西田ヒガシ
任侠的な雰囲気とまといながら、非情な極道的要素やキャラクターが登場する西田ヒガシ『やさしいあなた…』はヤクザ×ヤクザの物語ですが、自分の理想の男を追い求める姿はまさに任侠と言ってよいでしょう。
自分の理想とするヤクザ=紳士の姿とカネが全ての世界や顧客との関係で葛藤する二人はどうなってしまうのか、そしてラストは……必見です!
また、最近は「準ヤクザもの」というような作品もあります。
『寄越す犬、めくる夜』のばらあいこ
『寄越す犬、めくる夜』は、カジノを舞台にディーラー×ディーラー×ヤクザの愛人のいびつな三角関係を描いたダークな作品で、裏社会の厳しさ、えげつなさが存分に描かれています。
『遠い岸辺』英田サキ(イラスト:ZAKK)
『遠い岸辺』はヤメ刑のボディーガード×グレーゾーンの相場師の物語。
「相場師」という職業は、ヤクザではないながらも裏社会とは切っても切り離せない関係。そんなどこに行っても付きまとう後ろ暗さが、この物語のカギになります。
これを見る限り、最近は「極道」的な世界観の中の「任侠」がウケているのでは?
「カネが全て」という建前の中に潜む仁義、仁義や忠誠の建前の中に潜む「金がすべて」の勢力争いと裏切り……
このような「任侠」と「極道」の間を揺れ動くヤクザたちの姿、経済原則やメンツだけでは割り切れない絆が最近のヤクザBLの大きな魅力なのではないでしょうか。
こうしてみると、一口に「ヤクザBL」と言っても、キャラクターがヤクザであることよりも、世界観や舞台設定がヤクザであることが重要なのかもしれないですね。
奥深いヤクザBLの世界、まだまだ探求してきたいと思います!
記者:みかん
コメント2
匿名2番さん(1/1)
お、タイムリー。
今日読んだ小説のヤクザ攻めが「(本当は)侠客になりたかった」と言ってました。
ヤクザと任侠の違いを意識したことなかったけど、その視点は面白そう!
匿名1番さん(1/1)
ちるちるの過去記事「ヤクザ特集」へ行ったら、懐かしいレイアウトが見れました。
過去記事の「私のヤクザ論」から、「私の『BL』論!」へ行ってみるのもオススメ。