「ふたりは末永く幸せに暮らしましたとさ」で終わらない人生BL
さて、ここで突然質問なのですが、絵本や童話ではお決まりの
「ふたりは末永く幸せに暮らしましたとさ」という締め方に対して「その後のふたりのことをもっと知りたーい!」と思ったことはありませんか?
筆者はあります。
BL作品の多くは、馴れ初めから結ばれるまでをひとつの話として表現します。もちろん、すでに付き合っている設定でストーリーが始まる作品も数多く存在することも事実です。しかしながら、10年後、20年後のカップルたちをしっかりと描き切る作品はあまり多くないのではないでしょうか。
今回はカップルの人生を描写した、厳選されし至極の漫画をいくつか紹介させて頂こうと思います。
出会いからずっとふたりを見届けたい人に送る珠玉の一冊
あらすじ下校途中の1人遊び「白線ゲーム」で偶然出会った生真面目な伊東と無邪気な西。恋に落ち、「白線の上だけの逢瀬」にもどかしさを覚えた伊東は咄嗟に西へキスしてしまって……。高校生から大学生、そして大人へ――。変わらない想いと、変わりゆく現実の狭間で愛に翻弄された二人の男の人生を描いた感動の話題作。
コメント晃と夕希というふたりの少年が出会い結ばれるところから生涯添い遂げるところまでを1冊で描き切った話題作として、ちるちるランキングでも長らく上位の座を保ち続けた作品。
人生を扱う作品の場合、どうしても1冊では収まりきらずに長編シリーズ化することが多いのはBLに限った話ではありませんし、「それでも1冊で」となると、淡々とした描写になってしまいドラマティックさに欠けるのでは? と、やや心配にもなるのですが、本作品はそんな懸念を吹き飛ばしてしまうほどのドラマティックストーリー!
17歳で出会い、80歳を越えても寄り添い続けるふたりに何度読んでも、いや、読むたびに新たな感動が生まれる作品です。
道路上の線を踏み外さないように歩いて渡っていたことがふたりの出会いのきっかけなのですが、それは単なる線ではなく人生に敷かれた線を暗示しています。特に30歳前後という人生の節目を迎えたふたりが現実的すぎる問題(世間体や先の見えない未来への不安など)に翻弄され、どのレール(=線)に従って歩むのが正しいのかと葛藤する様子は読者の心に深く刻み込まれるハズです。ぜひ何回も読み返して頂きたい一作です。
いつまでも一緒にいたいから......悩み、もがきながら掴んだ愛に号泣
『とめどなく、シュガー』上下巻 作:児島かつら
あらすじ就活の内定報告になじみの店へ顔を出した帰り道。男同士の痴話喧嘩に遭遇した敬太。スルーしようと思いつつも助けに入ると、絡まれていたのは苦手な大学の同級生・理一だった。強気な言葉に反し震える様子に自宅に連れ帰ることに。お互いの悩みや失恋話、ゲイであることをぶちまけ合う中"励まし合い"としてセックスをする敬太と理一。帰り際、次に会うのは卒業式かと話すついでのように理一から好きだったことを伝えられる。理一のことが頭から離れないまま、大学最後の日を迎え、敬太から逃げるように立ち去ろうとする理一を捕まえるが告げられたのは改めての告白と決別の言葉で――?
コメント『
ファイブコーナーズコーヒー』にて公彦と身体の関係をもっていた敬太。その彼が本作では主人公として登場です! 常連の店に就職内定の報告をした帰り道、男同士で揉めているのを目にします。その渦中にいたのは、大学の同級生である理一。何ともなさそうに振る舞うも震えていた理一を、敬太は自宅へと連れて帰ります。そして
励まし合いとして交わる2人。理一の一途な想いを知った敬太は
「思い出にしたくない」と、理一に告白し遠距離恋愛をスタートさせます。
1か月ぶりに会うことが出来た2人。理一は地元で良い友達が出来たことを敬太に報告します。対して、理一の地元に行くことができないことも、知らない理一が増えていく事実に余裕がなくなる敬太。そして別れ際、
「いつまで続けられると思う? この状態」と理一に投げかけます。
今ある幸せに浸るだけでなく、もっと先、これからの人生をかけて一緒にいたいと考えたとき、現実のしんどい部分にも目を向けなくてはならない瞬間があります。それから目を反らさず、
一緒に生きていくことを決断した2人。その大きな決意とひたむきで真っすぐな愛に、涙がボロボロと零れてしまいました。タイトルの意味にも注目な作品です!
2人暮らしまでの彼らを描く 一生推したい作品集
『home』作:中村明日美子
あらすじ
光と利人、2人が帰るところ。同級生だった2人が結婚して一緒に暮らすまでを収録したオムニバス作品集。
コメント
知らない人はいないであろう、中村明日美子先生による大人気シリーズ。第1作目の『
同級生』が2008年に刊行され、その続編『
卒業生』『
O.B.』『
blanc』と、シリーズを通じて彼らの恋模様が綴られてきました。20歳となり結婚をした2人の、まさかその先を見ることが出来るなんて……! と感涙したファンも大勢いらっしゃると思います。
光と利人だけでなく、ソラノとハラセン、宮村さんと佐条など、様々な視点で進んでいく本作。包み隠さない、
等身大の彼らがそこにおり、苦くも優しい同級生シリーズの世界観に心あたたまります。
遠距離恋愛から、家族となった光と利人。引っ越し当日、光の母がギックリ腰となってしまい、光は実家に顔を出していました。ひとり、新居に横たわる利人。いつの日か、2人で見上げた教室の天井に想いを馳せます。何気ない日常が、確かな年月の積み重ねの上に成り立っている……シリーズを全作読んだ方なら、きっと深い感慨を覚えるはずです!
目を覚ますと10年前の姿をした彼が! 至高の入れ替わりラブ
あらすじ
28歳の桔平が、18歳の桔平と入れ替わった―――。付き合って10年半の圭太と桔平。家族同然の二人は、“今さら素直になれない"もどかしい思いを互いに抱えていた。切り出せないプロポーズ、酔わずには出来ないセックス…。思い出のマグカップを割ってしまった次の日、圭太が目を覚ますと横には見知らぬ少年が。彼の正体はなんと18歳の桔平で――!?嘘みたいなアクシデントに、二人は元に戻るため奔走するものの…?
コメント
ある日、桔平は恋人・圭太と2人で作ったという思い出深いマグカップを割ってしまいます。迎えた次の日、目を覚ました桔平の横には18歳の圭太がおり、桔平はなんと10年前に戻ってきていました。そして現代の圭太の横にいたのは18歳の桔平……という入れ替わりから始まる本作品。いきなりの展開で戸惑いつつも、10年前の姿をした恋人と身体を重ねる2組。拙く余裕のない18歳・圭太も、圭太の手練手管に真っ赤になりながらも快楽を享受する18歳・桔平も、非常にエロかわいく鼻血が出てしまうほどです。
入れ替わりをきっかけに、28歳の桔平が圭太の隠していた事実を知り、「10年後に戻れたら伝えたい」という想いが溢れます。一方、28歳の・圭太は、桔平の「家族じゃん」という発言から、ずっとそばにあった桔平との幸せに気づき……。熟年カップルだからこそ飲み込んでいた本音が、過去との交流でどんどんと溢れていく様子に涙。温かい気持ちがヒシヒシと伝わってくる、涙腺崩壊間違いない作品です!
ふたりの人生を見届けたい… それはBLファンの切なる願望?
ここまで
「その後のふたりのことをもっと知りたーい!」BLをご紹介してきましたが、筆者としては、
付き合ったあとの人生もこの目で見届けたいのです。ケンカしてもいいし、何なら一度別れたっていい。けれど最終的には元の鞘に収まって、より深い絆で添い遂げてほしい。添い遂げるということは、場合によっては「最期」を描くことになります。けれど、それを含めて筆者は彼らを見守り続けたいと願ってしまうのです。この感覚はきっと
「壁か天井になってふたりを見守っていきたい……」という願望の究極なのかもしれません。
おそらく筆者が上記で挙げたような作品に惹かれてしまう理由はココにあるのではないかと思います。
以上、筆者の個人的な感想でした。ほかにも何かご意見がありましたらぜひお聞かせください! また、同じタイプのBL作品に関しては
「答えて姐さん」の過去トピにてユーザーの皆さまがオススメを紹介してくださっています。気になった方は参考にしてみてはいかがでしょうか。
コメント7
やふるさん
全部好きな作品です。
でも、漫画ならあと
「ニューヨーク・ニューヨーク」羅川真里茂
も追加で!!笑
こういう時、小説のほうも紹介してくれると嬉しいですね〜。
個人的には漫画よりも小説の方が読み終わった後の満足度が高いので。
小説で「カプの一生」を扱った作品、自分が知っているのは
「おやすみなさい、また明日」凪良ゆう
「箱の中」「檻の外」木原音瀬
くらいしか知らないので他にもあったら教えてほしいです…
「座布団」「花扇」剛しいら
も「人生」というなら別の意味でおすすめ。
そういえば最近、羅川先生がツイッターで、NYNYの二人の絵を描いていてすごく嬉しかったなあ…作者のツイッターでカプのその後が見れるのは現代のいいところ
snowblackさん
やふるさま、私もこのテーマならBLレーベルじゃあないけれど不朽の名作
羅川真里茂さんの『ニューヨーク・ニューヨーク』だわ!と思いながら読みました。
嬉しくなって、つい書き込み。
小説だと……
やふる様が上げられている剛しいらさんの「座布団」「花扇」は
私も読んだ時に大号泣した名作。
ハードカバーの新装版が出ていますね。
あと上げて頂いたものの他には何があるでしょうか?
和泉桂さんの大河ロマン「清澗寺家シリーズ」の冬貴達カップルは
大正時代の10代から戦後の老後までが描かれていますが、
ここで取り上げられるニュアンスとはちょっと違うかも。
匿名1番さん(1/1)
小説だけど、榎田尤利先生の「聖夜」も晩年まで書かれていて、好きです。
匿名2番さん(1/1)
どの作品も面白く、大好きで、紹介された過去トピをさらに遡って懐かしくまた新しい作品に出会えました☆
まんだ林檎さんのコンプレックスも大好きです。
昔は生涯描き切る重い目の作品が多かったように思います。そういうのを貪り読んでいたからか、中高年BLとかたまりません!
匿名3番さん(1/1)
まんだ林檎先生の「コンプレックス」もおすすめ。ゲイカップルの小学生時代から亡くなるまでの苦悩と幸せを描いた心温まるストーリーです。第1話のみギャグ色が強いですが是非一巻は完読してから続きを読むか決めていただければと思います……!!
漫画図書館Zという合法で無料配信されてるサイトに全巻あります。
匿名4番さん(1/1)
どれも素敵な好きな作品!
そして“答姐”過去トピへの運営さんの粋な計らい♡
匿名5番さん(1/1)
添い遂げるBLにぴったりの曲を紹介
アカペラチャンネルのプラスユニゾンで男性ボーカルが歌うOfficial髭男dismのアポトーシスはBLらしくて泣けます
似た者同士の街の中 空っぽ同士の腕で今
躊躇いひとつもなくあなたを抱き寄せる
別れの時まで ひと時だって愛しそびれないように そう言い聞かすように
訪れるべき時が来た もしその時は悲しまないでダーリン
もう朝になるね やっと少しだけ眠れそうだよ