邦題『百合の伝説/シモンとヴァリエ』は舞台化も2016年冬アニメは、まさしく『ユーリ!!! on Ice』一強、圧倒的な人気を誇ってくれました。覇権アニメ予想が当たってよかったです。
そんなユーリ人気にあやかって、若干タイトルが似てるかも……しれない!(苦しい)隠れた名作耽美映画、『
Lilies - Les feluettes』(邦題『百合の伝説/シモンとヴァリエ』)をご紹介したいと思います。
この映画は、20世紀半ばのケベックの監獄から物語は始まりますが、実際は
主人公たちがキリスト教の神学校にいた頃起きたある事件の真相を巡る物語です。
神学校という特殊な空間で、禁じられた恋に落ちる聖職者の卵たちという、分かる人にはたまらない設定になっています。
この作品の映画版は、日本では1997年の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で公開されて以降、パッケージ化などはされていませんが、原作となったフランスの戯曲を元に
スタジオライフが舞台化しています。
その舞台の観劇レポが今市子先生のコミックエッセイ
『萌えの死角2』で紹介されていることで、この作品を知った人もいるかもしれません。
Amazonのレビュアーによると
カナダ版モーリスと言われているようです。
ちるちるでも先日『モーリス』を取り上げましたが、同性愛が禁じられた男子だけの空間で、人目を忍び戸惑いながら愛を育む様子が似ているのかもしれませんね。
この物語のあらすじは以下のようなものです。
ケベックの監獄に収監されている囚人のシモンが、聖職者になった友人・ビロドーを監獄に呼び、そこでシモンと囚人仲間たちは、シモンが神学校にいたころのある事件を再現した芝居をビロドーの前で演じます。
シモンはかつて神学校(当然男子校です)で一緒に芝居を作っていた
フランスの没落貴族の息子・ヴァリエと恋に落ちました。
しかし
シモンに横恋慕し嫉妬心を抱いたビロドーは二人の間に割って入ろうとします。
さらにここにパリからやってきた
シモンの婚約者の女性も加わって、
シモンとヴァリエの恋は破滅的な結末に。
心中しようとした二人ですが、結局シモンだけが生き残ってしまいました。
シモンはこの劇を演じることで、ビロドーに事件の真相を話すように促すつもりだったのです。
ビロドーは、自分がシモンだけを助け出し、ヴァリエを見捨てたことを告白。するとシモンはビロドーに怒りをぶつけ、ビロドーは自分のしたことを後悔することに……。
物語は劇中劇の形になっていて少し構成が複雑ですが、この映画の見どころは何と言っても、シモンとヴァリエが廃屋の中で、バスタブに浸かるシーン。
二人の少年の美しい裸体が惜しげもなく晒されるシーンには思わず魅入ってしまいます。
また、
神学校独特の禁欲的な雰囲気もたまりません!
カナダ版モーリスとも言われるように、神学校という舞台設定は少年愛作品からBLまで人気のモチーフであるパブリックスクールやギムナジウムのような雰囲気がありつつも、より抑圧的な、自らを律する印象があって、これもまた魅力的ですね。
少年の間に許されたわずかな期間、いずれ消えていく恋の美しさを、大人になった二人が回顧するという形でなんともいえないなつかしさ、切なさを表現していることで、より一過性の少年の美しさが強調されているような気がします。
非常に残念なお知らせなのですが、この映画の邦訳は発売されておらず、
現在手に入るのはインポートの英語版のみとなっています……。ですが! そこは腐女子のみなさん、きっと
気合で見ることができると思います!!
筆者は英語版を視聴したことがありますが、英語が聞き取れなくても映像の美しさを十分楽しめる作品です。
もし手に入れることできた方は、ぜひ気合で鑑賞して頂きたいと思います!
記者:みかん