犬時・笑平ワールド全開の2作品、短編も含め徹底解説します
『
りんご、木から落ちる』『
勇者IN魔王んち』の原作を手がける、犬時先生。
先日
ちるちるでも、平成28年10月に急逝されことをお伝えしました。突然の悲しい知らせに、戸惑うファンの方々も多いかと思われます。
2作品とも、犬時・笑平ワールド全開でとにかく面白い。お二方の作品はちるちるでも多くの神評価をされており、絶大な支持を得ています。
「まだ『りんご、木から落ちる』『勇者IN魔王んち』に出会っていない方に、是非読んでほしい…!」という思いから、今回はこの2作品を深く掘り下げ、ご紹介します!
◆『りんご、木から落ちる』(シトロンコミックス)<あらすじ>学園のアイドル・黒川楓はりんごの着ぐるみ姿のまま熱中症で苦しんでいた所をキングオブ普通の園芸部員・高見清春に介抱された。
清春の何気ない優しさに触れた楓。突如、恋の火蓋は切って落とされた――! !
全4作品が収録されたオムニバス形式の一冊。同作がこのコンビの初コミックスです。犬時先生の考え抜かれた綿密なストーリーと個性的すぎるキャラクターがなんとも魅力的。そこに笑平先生が描く、力強いタッチの絵が絶妙に組み合わさり、バランスが良い! 何度も何度も読み返したくなる作品です。
表題作
「りんご、木から落ちる」地味な園芸部員×学園の人気者ファンクラブが存在するほどの人気者である特進クラスの黒川楓は、キングオブ普通の園芸部員である高見清春に助けられてから恋に落ちてしまいます。
バラをプレゼントして告白するも上手くいかず…、そこから黒川の猛アタックが始まります。
全体的にコミカルに描かれているものの、受けの黒川の真っすぐで一生懸命な姿が本当に可愛い。真っ赤になりながらも必死に気持ちを伝える王子様、最高です。攻めの高見は芯は優しく、たまに見せる強引な姿に惹かれました。
この作品を読んだ後は、しばらく「大根」を見るたびに思い出し笑いをしていました…(笑)
「未知との遭遇」妄想がすごい手芸部時代の後輩×心が読める超能力者人の心の声が聞こえる超能力を持つ吉田は、苦労する日々を送っています。後輩の班目は、吉田を追っかけ同じ大学に入学。脳内では吉田を犯しているエロ妄想ばかり繰り広げられており、もちろん吉田にはダダ漏れ。
ある日、吉田は嫌がらせを受け…。
特殊な設定で面白くもあるのですが、同時に切なさもこみ上げてきます。
幼い頃に、母親の「産まなきゃよかった」という心の声を聞いてから人を信じれなくなった受けが、攻めの一途さや素直さに救われていきます。
はやく斑目に抱かれてくれ…!と、かなり続きが気になる作品です!
「彼女なのに男」美形でオカマバーの売れっ子×純情サラリーマン上司に連れられていったオカマバーでNo.1の晃子に一目惚れするサラリーマンの健。とんとん拍子にことは進み、付き合うことになった2人だ。しかし、晃子はある秘密を抱えていた。
なんといっても、Hシーンがエロい!ところどころの描写や体の描き方が素晴らしいです。女装攻めはそんなに得意ではなかったのですが、この作品で大好物になりました。
攻めである晃子の「好きなんだよっ…」と泣きながら訴えていたシーンがかなり印象的でした。健気な受けの健もすっごく可愛らしかったです。
最後のおまけページで、攻めのことを源氏名ではなく本名で呼んでいるところにキュンときました!
「オレは人気者」いじめられっ子×いじめっ子性格の悪いいじめっ子の吾郎は、高校に入って幼稚園が一緒だった洋介と同じクラスに。洋介をバカにしてクラスで人気者になろうとしますが、うまくいかず。最後には予想外の展開が…!?
コミカルな雰囲気で話は進んでいきますが、最後のオチが秀逸。ひと癖もふた癖もあるストーリーに、大迫力のこの画力…読後はゾクっとしました。
クズ好きな筆者にはたまらなく、ダークや下衆が好きな方は心打たれる作品だと感じました! また、カバーを外すと、最高な二人の姿が見ることができますよ♥
◆『勇者IN魔王んち』(Cannaコミックス)<あらすじ>不老不死で最強の魔王・ウィスペドの元には、毎日のように勇者が戦いを挑みにくる。しかし、戦いたくもないのに魔王として生まれ、死ぬこともできないウィスペドの心中はいつでも孤独だった。
そこに、ある日現れた勇者・トゥルー。ヘラヘラと笑い、武器も持たずに丸腰でやってきたトゥルーをウィスペドが成敗しようとすると、「王様のお城に住ませて」と勇者としてあるまじきお願いをしてきて……!?
最強魔王×最弱勇者のお話。魔王ではありますが、誰よりも優しい心を持ったウィスペドと、純粋無垢な勇者トゥルー。
ギャグ調で話は進むのですが、とにかく2人のやりとりが非常に面白い! 以前行った
ちるちるのインタビューでも掲載されている、
「…夢精」「え?無精卵?」「違う 夢精は有精卵なんだ」などという会話には思わず声を出して笑いました! 2人だけでなく、他のキャラクターも個性があり魅力的です。
そして、コミカルだけで終わらないのが犬時・笑平コンビの良さ。ウィスペドとトゥルーは辛い過去や孤独に押しつぶされそうになりながらも生きてきました。そんな2人が出会い、距離を縮めていくことによってお互いの”隙間”が埋まっていきます。その過程が丁寧に描かれており、切ない。
BLとしても、マンガとしても最高に面白い作品なので、気になった方は是非お手に取ってみてください!
2作品ご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
まだ読んだことのない方が、少しでも興味を持つきっかけになれれば嬉しいです。
記者:馬子