【第1回:朝田ねむい先生】一度触れればやみつきになる朝田ワールドへご案内「本当に面白いBLが読みたい」
これは、ちるちるライターである私・星野がBLを読み始めた頃からずっと抱き続けている思いです。
もちろん、作品に対する「面白い」の定義は人それぞれ。そこには当然、絵柄や文体、ストーリーやシチュエーションなどへの個々人の好みが介入します。加えてツンデレ受け萌えとか、眼鏡萌えとか、BLにおいては「萌え」も人それぞれなので、そうなってくると簡単に「面白い」などという言葉は使えませんよね。
しかし、今回スタートするこのコーナーではそれを踏まえた上であえて「本当に面白いBL」という切り口を採用し、ちるちるライター・星野が毎回一人ずつ作家さんを特集します。このコーナーが新たな作家さんに触れるきっかけや、皆さんのBLライフの新たな入口となることができれば幸いです。
第一回の特集は朝田ねむい先生。一年ほど前に出会ってからというもの、すっかり朝田ワールドの虜になっている記者が朝田先生の魅力について語ります。
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■魅力①:ボーイズラブの「ラブ」の前にそれぞれの人生がある まずはじめに、朝田先生の作品の魅力の一つであるストーリーについて見ていきたいと思います。
朝田先生作品のストーリーについて一言で例えろと言うのであれば、記者は「B+L」(ボーイズ+ラブ)と答えます。ラブありきのボーイズというよりも、先にボーイズがいてそこにラブもあるという感じとでも言うのでしょうか…。登場キャラクター達のそれぞれの人生がしっかりと作品の基盤として存在していて、その上にラブがどう絡んでくるのかという点がキモになるんですね。
もちろんBLにおいては恋愛要素が作品の大部分を占めるラブストーリーが王道なのは当然のこと。その伝統に則っていうのであれば、確かに朝田先生の作品は「異色」ジャンルにカテゴリ分けされるかもしれません。(第7回BLアワードでも「異色」ジャンルにノミネートされていました)
記者が惚れ込んでいるのは、この「ラブに先立つ部分」です。
先述したように、朝田先生の作品に登場するキャラクター達は、読者が本のページを捲るまでの間にそれぞれがそれぞれの人生をしっかりと歩んできていることを読み手に感じさせてくれます。長編ではもちろんのこと、ページ数の短い短編であっても、表情の動きや仕草、ちょっとした台詞からそのキャラクターがそれまでにどんな生き方をしてきたのかということが伝わってくるように感じるのです。
そうした心地よい重みをもったキャラクター達が、出会い、そして恋をする。その過程がしっかりと丁寧に描かれているために、朝田先生の作品は肉厚なのではないでしょうか。
■魅力②:「非日常」と「人間味」のバランス 次に注目したいのは、ストーリーにおける「非日常性」です。
BLにおいてはリーマンもの、学園ものなどはやはり根強い人気を誇っていますが、朝田先生の作品の中にはそうしたテーマのものはあまり見受けられません。
例えば、コミックス
『Dear, MY GOD』の表題作のテーマはカルト教団と神父、
『Loved Circus』の舞台はゲイ向けの風俗店と、私たちの普段の生活からは少し離れたテーマが多いように感じます。『Dear, MY GOD』の同時収録作『はなばなし』では拾った鉢植えが人語を話しさらに知人へ姿を変えるといった不可思議なファンタジー要素も加わったりと、描かれている内容はまさに非日常。
(
コミックス『兄の忠告』作家インタビューより。恋人が毛虫(物理)になったり中年男性が銀行強盗をしたりとこちらの収録作もかなりぶっ飛んでいます)
そのような非日常性の中でも、朝田先生の生み出すキャラクター達はとことん血肉を持っていて、だからこそその「非日常」と地に足の着いた「人間味」のバランスが癖になるのです。
『Dear, MY GOD』を例に見てみましょう。カルトに心酔している青年・リブとそんなリブを救いたいと自ら教団に乗り込む神父・ロース。 この設定だけを見ると少し現実味が薄いというか、あまり身近な出来事としては捉えにくいかなという印象を受けます。しかし、不運な生い立ちから教団へと依存してしまうリブの危うさや、リブを救いたいと思いながらもリブの純粋すぎる好意に対し「私を神にしないでくれ」と懇願するロースの台詞など、「人間」の心が揺れ動く描写が読者と物語にぐっと引き寄せます。
そうした非日常性の中で描かれるキャラクターたちの人間味こそ、朝田先生作品の魅力として外せないものであると記者は考えます。
■魅力③:ざっくりとしたタッチで引き立つ立体感ここまでは朝田先生のストーリーやキャラクターの魅力について取り上げてきましたが、最後にイラストについてご紹介したいと思います。
漫画は作品を読むにあたり画面の構成や絵柄の好みも読み手の感想に大きく影響します。極論を言ってしまえばその辺りは個々人の好みの問題なので、どうしても合う・合わないは出てきてしまいます。記者は朝田先生の独特なタッチにとても惹かれるのですが、もっと線の細いテイストが好みの方ももちろんいらっしゃることでしょう。
その上で、「こういう見方もできるのでは」という細やかな提案の意味も込めて、あえてイラストについて触れていきます。
朝田先生のイラストは、太めの線でざっくりと描かれているのが特徴です。登場人物も全体的に骨太めというか、質量のあるテイスト。この太めの線がこそが、登場人物達の立体感を際立たせているのではないかと記者は考えます。
また、キャラクターが太めの線のゆるやかな輪郭を持っていることで、記者は朝田先生の作品を読むときいつも画面全体にじんわりとした体温のようなものを感じます。(この辺りは個人の主観と言われてしまえばそれまでなのですが…)
(
コミックス『Loved Circus』作家インタビューより。記者はこの語り掛けるような目元の描写にノックアウトされました)
そして、記者が最も惹かれるのはキャラクターの表情です。さらに言えば、少し焦ったような表情や無表情さの中に様々な感情が同居しているように見える点です。実際の人間も、マイナスの感情になればなるほど「これは悲しい顔」「これは寂しい顔」とはっきりと判別できるような場合は少ないですよね。
台詞やモノローグの少ないシーンも少なくない朝田先生の作品では、表情からそのキャラクターが何を考えているのかということに思いを巡らす楽しみがあると記者は感じます。
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と、ここまで散々好き勝手に書かせて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。今まで朝田先生の作品に触れたことのなかった方に、少しでも「読んでみようかな」と思って頂ければ幸いです。
数多くの作家さんが存在するBL界、自分の力だけでは新たな作家さんの作品に出会うのもなかなか難しかったりしますよね。記者もまだまだひよっこですが、皆さんの新たな扉への道を切り開くことができればいいなと思っております。これからも定期的に記者イチオシの作家さんをピックアップしていきたいと思いますので、よろしければお付き合いください!
記者:星野
コメント7
匿名6番さん(1/1)
>匿名5番さん
いやいやいや、第二回と第三回がありますから、気を落とさずに。
http://www.chil-chil.net/compNewsDetail/k/blnews/no/12898/
http://www.chil-chil.net/compNewsDetail/k/blnews/no/12958/
匿名5番さん(2/2)
これ去年のニュースだったんだ。。。
匿名5番さん(1/2)
読んでみたいと思いました。
次回の作家さんは?楽しみです。
匿名4番さん(1/1)
記者さん、すばらしい。作品への愛がよく伝わりました。読むぞ~!
匿名3番さん(1/1)
他の作品ももちろん大好きですが、「兄の忠告」がもう好きすぎて…まだの方はぜひ読んでほしいです!
匿名2番さん(1/1)
Dear,My GODに収録されている『はなばなし』がとても好きです
初めて読んだときに涙腺ヤられました
伏線も多いので改めて読み返してなるほど~と思わされるところもあって…
個人的にオススメです!
匿名1番さん(1/1)
朝田先生大ファンです!「兄の忠告」を読んでからずっと追っかけてます!