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バレーのエースコンビに、義兄…興奮が抑えきれない！

図書館にも並んでいるような一般小説の中でも、芳しいBL臭がプンプンな作品ってありますよね。今回ご紹介する8篇の小説は、読んでみるとあらあら……と思わずﾆﾁｬﾘしてしまうこと間違いなし。

同時に読んでいる姿を見れば親御さんが「ウチの子あんな難しそうな本を読んでる……！」とドヤ顔出来る要素もあります。忘れられない読後感を残してくれるような、何度も読み返したくなる名作揃いです!!!!!

ではどうぞ！

頑固親父とその女房、な高校生2人

『2.43 清陰高校男子バレー部 1』作：壁井ユカコ

「二度とあいつを‶チカ"だとは思うまい。あれはあくまで‶灰島"。チカとはどこかの時点でぶった切られた別人である。」
「……なんだ、生きてるじゃねえか……」

あらすじ
東京の強豪中学バレーチームで深刻なトラブルを起こしてしまった灰島公誓は、子供時代を過ごした母方の郷里・福井に転居し、幼なじみの黒羽祐仁と再会。
ずばぬけた身体能力を持ちながらプレッシャーに弱い黒羽と、バレーへの圧倒的な情熱と才能ゆえに周囲との摩擦を引き起こしてばかりの灰島はエースコンビとして成長していく。だが、中学最後の県大会で衝突……。
絶縁状態のまま、二人は地元の清陰高校に進学する。
男子バレー部で待っていたのは、身長163cmの熱血主将小田と、秀才で毒舌家の副主将青木の3年生コンビや日光アレルギーで常に長袖長ズボンの棺野をはじめとする2年生たち。
新生バレー部はやがて弱小チームの殻を破り、福井の新星として注目される存在に成長していく。その行く手に立ちふさがる魅力的なライバルが続々登場！

〈ココが良い!〉 　
爽やかなのに、胸が抉られる青春。

バレーやバスケなどのスポ根ものといえば、熱血でキラキラな青春を真っ先に思い浮かべますよね。でも、こちらの作品はそれだけではありません！ 自殺未遂などのショッキングな事件やチームメンバー同士の衝突など……ドロドロとした部分もリアリティたっぷりに描かれます。

そんな本作の中で注目してほしいのは、灰島と祐仁の関係。理不尽にコートを譲れと言われている灰島を助けたり、灰島が過去のことでなじられたときも灰島への評価は自分が決める、と宣言したり。まるで頑固親父こと灰島の女房のようで、フジョシの血が騒ぎに騒ぎます。

このまま仲良く青春していくのかと思えば、バレーの試合で仲違いして、いきなり高校生パート突入!? と展開に目が離せません！

〈こんな人にオススメ!〉
スポ根、青春、高校生が好きなひとにオススメ！ キラキラしすぎず仄暗さも感じられ、キラキラ青春！！ が苦手なひとにもおすすめです！

傷を抱え、少しずつ毒に蝕まれる小学生

『月と蟹』作：道尾秀介

「クラスの全員が、これまで以上に敵に見えた。（省略）春也に話しかけたくなったのも、鎌倉まつりに誘いたくなったのも、その手紙のせいだった。」

「いま自分はこうして険しい山に入り、誰も知らない謎の花を、春也と二人で見つけようとしている。」

「慎一の願いを叶えるために、わざと春也は車の前に飛び出したのではないか。そうすることが、慎一への何よりの仕返しになると考えて。」

あらすじ
孤独な子ども達が始めた願い事遊びはやがて切実な思いを帯びた儀式めいたものに――深い余韻が残る少年小説の傑作。
海辺の町に祖父と母と暮らす小学生の慎一。よそ者として、クラスになじめない慎一は唯一の友達・春也と、ヤドカリを「ヤドカミ」様という神様に見立てて遊ぶことをはじめる。最初は単なるごっこ遊びだったものが、偶然を重ね、次第に切実な願いをこめた儀式へと変わっていく。同じ年の少女・鳴海をまじえ、それぞれに親への複雑な思いを抱える三人の関係もゆらぎはじめる。少年少女たちは痛みを胸に秘めながらも、大人になっていく。少年時代の最後の日々を描く傑作小説。解説・伊集院静。

〈ココが良い!〉 　
慎一と春也の関係が非常に危ういです。慎一が、唯一の友人・春也に対して、はじめは嫌なことがあると春也と話したいとおもっていたはずが、同級生の少女・鳴海と春也が二人で笑いあっているのではないかと想像すると、「いなくなって欲しい」とまで願ってしまうまでに。

春也のほうも、慎一のことを友人だと思っているはずなのに、匿名の手紙を机に入れて嫌がらせをしてしまいます。誰よりも仲がいいはずなのに、同時にお互いを傷つけようとしてしまう。父親からの虐待などそれぞれが持つ心の傷が生み出す、歪で離れがたい関係性に惹かれてしまいます。

〈こんな人にオススメ!〉
不穏で、複雑な心の揺れ動きが好きな方。純文学的な表現がお好きな方。

唯一無二のカップル感が微笑ましい

『NO.6』作：あさのあつこ

「きみのいない世界なんて、意味がない。ネズミ、何の意味もないんだ」 

〈あらすじ〉
2013年の未来都市《ＮＯ．６》。人類の理想を実現した街で、２歳の時から最高ランクのエリートとして育てられた紫苑は、12歳の誕生日の夜、「ネズミ」と名乗る少年に出会ってから運命が急転回。どうしてあの夜、ぼくは窓を開けてしまったんだろう？　飢えることも、嘆くことも、戦いも知らずに済んだのに……。「わたしはＮＯ．６という物語の中で、生きる希望とやらを掴んでいけるのだろうか」――あさのあつこ

〈ココが良い!〉 　

腐女子のバイブル！ 時に優しく、時に冷酷に、困難な状況下でも相手の一面に惹かれ合っていく唯一無二のカップル感が微笑ましく、切ない

『NO.6』ではBLではよくある、「男なのに男を好きになっちゃた」という悩みは一切ありません。出会った時から、全く異なる生い立ちだが、互いの存在を認め尊敬し合っている……とまで感じられます。　

この互いを思い合っている感じが一昔前の少女漫画の要素を感じさせつつも、話はサバイバルもの。甘と辛のバランス具合が気持ち良く、どんどん読み進められます。

そして一番の萌えポイントはなんと言ってもネズミが可愛すぎること。彼は過酷な環境で生き抜いてきたので、ぶっきらぼうで無口にみえるですが、意外にも自ら紫苑にキスをしたり、彼への気持ちをちゃんと言葉にしたり……。素直な一面を垣間見た時のギャップがとにかくキュンときます。もはやネズミのデレを見るためにどんどん読み進めるまである……。

〈こんな人にオススメ!〉
近未来の世界観や、サバイバルもの、そして純粋な少年同士の愛を体感したい方にオススメです！

主人公とツンデレ義兄のあと一歩の関係性が美味しい

『傘をどうぞ』作：長野まゆみ(『レモンタルト』収録)

「ふつうは体のほうも安ベッドなみでさ、時とともにへたる。暴れても平気なベッドなんてすぐに要らなくなるんだよ。おまえみたいのにかぎって、長持ちするんだよな。……使いもしないくせに。」

〈あらすじ〉
「もう、ずっと前から義兄(あに)のことが好きだった」姉は若くして逝った。弟の私は、姉の夫だった義兄と、遺された一軒家でふたり暮らしをしている。会社では無理難題を持ちかける役員のもとで秘密の業務にあたり、私生活でも奇妙な事件ばかり。日増しに募る義兄への思いと、亡き姉への思慕。もどかしい恋の行方と日常にひそむ不思議を、軽やかに紡ぐ連作集。

〈ココが良い!〉
実は相思相愛!? 主人公とツンデレ義兄のあと一歩の関係性が美味しい！

「私」は独身であり、姉はすでに亡くなっていますが義兄とは未だ隣同士で過ごしています。まずその設定が一歩間違えれば過ちを犯しかねないのでは!? と想像してしまいますよね!!?

義兄は「私」の玄関先に女物の傘があれば、女物の靴が置いてあるかも確認せず「邪魔したな」と言ってそそくさと部屋に戻る。翌朝、通勤で同じ車両に乗り合わせれば、わざわざ「きのうはよかったか」と聞いてくる有様。「私」が「すごく」と答えると「……ふうん」と言ったきり、新聞を読むふりをつづける……。この思わせ振りな態度……確信犯ですよね？？？

「私」は義兄の好みを把握し、彼が暗に示した意図を汲み取るなど、彼女、もしくは妻のような役割を果たしています。加えて義兄に半裸姿を見られたことを気にするなど乙女な一面も。この二人が付き合い始めたら絶対に良いカップルになる(確信)。

けれど現実は亡くなった人の弟と夫という微妙な関係。その名目が邪魔して先に進めない。そんなもどかしさを(勝手に)感じることが出来る作品です！

〈こんな人にオススメ!〉
社会人同士、大人同士の微妙な恋愛、雨などのアンニュイな雰囲気を味わい方にオススメです！

同性に抱く憧れと嫉妬の真ん中の気持ち

『子供は眠る』作：森絵都(『アーモンド入りチョコレートのワルツ』収録)

「ぼくらにとってそこは、まぎれもなく章くんの別荘であり、そこにある何もかもが、過ぎていく一分一秒さえも、すべてが、章くんの、ものだった。」

「だって章くんがいなきゃ、ぼくらの夏は始まらないんだ。」

 思春期を迎えた少年。同性に抱く憧れと嫉妬の真ん中の気持ちを描いた、甘さ苦さ両方味わえる作品！

〈あらすじ〉
ピアノ教室に突然現れた奇妙なフランス人のおじさんをめぐる表題作の他、少年たちだけで過ごす海辺の別荘でのひと夏を封じ込めた「子供は眠る」、行事を抜け出して潜り込んだ旧校舎で偶然出会った不眠症の少年と虚言癖のある少女との淡い恋を綴った「彼女のアリア」。シューマン、バッハ、そしてサティ。誰もが胸の奥に隠しもつ、やさしい心をきゅんとさせる三つの物語を、ピアノの調べに乗せておくるとっておきの短編集。

〈ココが良い!〉
ぼくの章くんへの気持ちが凄い。友情とも、恋愛感情とも違う、憧れとも違う……。思春期に抱えるあらゆる感情が竜巻のようにぐるぐる巻き合って、全く異なる感情につくり変えてしまいます。言葉で表現しにくいその感情が一度は爆発してしまうものの、一つ一つ濾されていって、最後には純粋な気持ちだけが残る。そんな印象です。

もしかしたら、単純に憧れや好きという気持ちだけかもしれない。しかし憧れと言うにはあまりに漠然としているこの感情。恐らく、ぼくが自分の章くんに対する気持ちに気付かず、自覚していないのかと思ってしまいます。

しかし、なおさら章くんに素直な反応を示すぼくが可愛らしい。章くんの秘密を知った後のぼくが特に可愛い。まだまだ純粋な少年。様々な作品で「いかに駆け引きをするか」に馴れてしまった私たちに新鮮な萌えを感じさせてくれるはずです。

はっきりとした終わり方ではないですが、物語が終わった後のぼくの気持ちに思いを馳せると、なんとも切なくなります。

〈こんな人にオススメ!〉
中学生同士の幼く、こじらせている話を読みたい方や、特に夏を満喫したい! という方にオススメです！

これはエゴか、それとも愛か？ 2023年映画化決定作品

『エゴイスト』作： 高山真

【あらすじ】
「母が死んで、『死にたい』と思っていた僕の何かは死んだ」。14歳で母を亡くした浩輔は、同性愛者である本当の自分の姿を押し殺しながら過ごした思春期を経て、しがらみのない東京で開放感に満ちた日々を送っていた。30代半ばにさしかかったある日、癌に冒された母と寄り添って暮らすパーソナルトレーナー、龍太と出会う。彼らとの満たされた日々に、失われた実母への想いを重ねる浩輔。しかし、そこには残酷な運命が待っていた・・・。
龍太と母を救いたいという浩輔の思いは、彼らを傷つけ、追いつめていたのか? 僕たちは、出会わなければよかったのか? 愛とは、自らを救うためのエゴだったのか? 浩輔の心を後悔の津波が襲う。人は誰のために愛するのか。賛否両論渦巻く、愛のカタチ。

〈ココが良い!〉
僕が抱いたこれは愛？ 身体の関係から始まる2人の恋人生活♥ 切ない人生ドラマ展開に涙……。

同性愛の主人公・浩輔が身体を鍛えるためにゲイのパーソナルトレーナー・龍太に出会います。しかし、実は龍太は体を売って生きていいて……。男に抱かれる仕事をしたくなくなるから浩輔に会わなければよかった、と嘆く龍太に「僕が買ってやる」と宣言する浩輔はもうスパダリ攻めと言っても過言ではないはずです。その後、無事恋人になった2人の優しい時間にもニヤニヤしてしまいます！

しかしだからこそ、物語が迎える衝撃の展開には思考が止まってしまいました。正直言って、たまらなくしんどい。

しかし、物語はまだ終わりません。筆者は推しCPと家族の関連性を考えるのが好きなので、この展開を固唾を呑んで読み進めてしまいました。
打ちのめされるようなことが起きても、人生は続いていく。もちろん、恋愛小説としても楽しめますが、2人を取り囲む人々からの愛情も伝わる深い人生ドラマを味わうことのできる作品となっています。2023年の実写映画にも期待大！！！

〈こんな人にオススメ!〉
「沁みる」BLが読みたい人や、キャラクターと家族の関係性までじっくり楽しみたい人にオススメです！

妻子持ち中年サラリーマン、新人社員♂に恋をする！？

『愛してるって言えなくたって』作：五十嵐貴久

【あらすじ】
ビール販売会社の営業課長を務める門倉友広は、一瞬で頭が真っ白になった。新人の加瀬夏生のせいだ。会社では頼れる上司、家庭では良き父親として、順風満帆な日々を送っていたが、加瀬の出現をきっかけに、営業先で失態をさらしたり、日常業務も手につかなくなって……不惑目前、今まで抱いたことのない同性へのときめきに中年男が七転八倒する爆笑必至のラブコメディ!

〈ココが良い!〉
頑張れおじさん！ 遅い春に振り回される中年上司の片想い♪ 焦がれるあまり仕事も手につかなくて！？

──しまった、立ち読みした人がBL本一般棚に置いちゃった!? えっ、違う!? と本屋さんで挙動不審になるこの作品。
街中で会った青年が未来の部下になってしまうという、BL作品の開幕を思わせるところから物語はスタートします。

初めはラブコメディと修羅場の間を反復横跳びしそうなあらすじにハラハラ……しかし、読んでみればおじさんがピュアに心をときめかせる描写に応援したくなってしまいます。ヤキモチを焼いたり加瀬と一緒にいられることに喜んだり……門倉の一挙一動がまさに可愛いんです。

リアルな社会を描いたお仕事コメディでもあり、門倉が禁断の恋に落ちて必死にもがく様子を見つめるBL要素もバッチリ。

家族や自分の立場を考えて悩み、苦しみながらも恋心を否定できないおじさんの行く末から目が離せません！

〈こんな人にオススメ!〉
おじさんの恋路を見守りたい人や、笑って泣いてのお仕事ラブコメディが好きな人にオススメの作品です！

恋に不器用な2人の愛し方

『アスク・ミー・ホワイ』作：古市憲寿

【あらすじ】
初めて港くんと会ったのは、大寒波が到来した冬の日だった。
港颯真・元俳優。写真週刊誌のスキャンダル報道によって、彼は、
少し前に芸能界から姿を消した。
ヨーロッパの街を転々としていたようが、ここアムステルダムに住み始めたという噂は本当だったのだ。

「ダメだって。俺からのキス以外は禁止ね」
「いじわる。じゃあもうずっとキスしててよ」


〈ココが良い!〉
ミステリアスな元俳優と、過去に傷ついた青年の名前の付けられない関係が尊い！ お互いを想い合うもだもだ展開が堪らない……♥

過去に裏切りを受けてアムステルダムに住む主人公のヤマトと、週刊誌にゲイだという噂を流された元俳優の港。突然ヤマトにキスをかますという少女漫画もびっくりの初対面を果たすなど、序盤からたっぷりのBL成分に心躍らせられる作品になっています。

自分の気持ちをハッキリさせたいヤマトが港くんを押し倒すシーンはキュンキュン成分が止まらない！
「港くんは僕のデニムを下ろしていく。もう勃起を隠すこともできない。港くんもきちんと、気持ちよくなってくれているのだろうか。」……なんて健気なんでしょう。刺さる。顔を覆うほど萌える。

物語の流れはゆったりしていますが、風景やヤマトの心情、ベッドシーンでの行為が繊細に書かれており、BL好きもドキドキが止まらない作品です。

なんとこの作品、Twitterの作者公式アカウントから最終話まで読むことが出来るんです！ 場面になぞらえた鮮やかな風景写真や音楽のプレイリストのスクリーンショットと共に、臨場感ある読み応えを楽しめるようになっている神仕様。2人の美しい物語を是非見届けてください！

〈こんな人にオススメ!〉
オランダ旅行気分になりたい人、2人の関係の進展を見守りたい人にオススメ！

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どうでしたか? 気になる本はありましたか? 1番のおすすめは『子供は眠る』。短編でサクッと読める割には、心にドスンと来るものがあります。是非どうぞ!!