是非スクリーンで見てみたい!人と人とのドラマを描いた作品、集めました『BL』『ボーイズラブ』という言葉がすっかり市民権を得始めている昨今、実写映画化やアニメ化などBL作品のメディア展開も多様になってきています。
また、同様に一般向け作品であっても同性愛をテーマにした作品やそうしたシーンの絡む作品が増えてきているなという印象ですよね。
BL作品の映画化というと実際には制作費やキャスティングなど難しい問題が多々ありますが、ひっそりと妄想するだけならタダ。ということで、今回は記者が実写映画として見てみたいと思う4作品をご紹介します。
アケミちゃん/丸木戸マキ前科持ちで、金の無心をしに田舎に戻ってきた蒼介は、家業のスナック「アケミ」で働く元同級生の静雄に再会する。
かつて、女顔をからかい、「アケミちゃん」と呼んでいた蒼介に苦い顔をする静雄。
しかし、エリート家族から絶縁を言い渡された蒼介は、手切れ金を親から受け取るまで、と静雄の家に居着いてしまう。
誰にも言えなかった蒼介の苦悩、初めて知る静雄の過去、お互いを知る時間は短く、蒼介の東京に帰る時は近づき――。
まずは丸木戸マキ先生の2冊目のコミックスである『アケミちゃん』を選びました。
丸木戸先生といえば、つい先日デビューコミックスが発行されたばかりとは思えない卓越したストーリー構成とメッセージ性の強い画力が魅力。
昨今では何かとクズBLが話題になることが多いですが、こちらの作品の攻め・蒼介も強姦罪の前科持ちかつ大学に入り直すための金を裕福な実家にたかるというどうしようもない若者。しかし、そのどうしようもなさの描き方がとにかく上手い! 記者も始めのうちは「こいつ本当にどうしようもないクズだな…」と思いながら読んでいたのですが、物語が進んでいくにつれて蒼介の心情の変化や置かれた境遇のリアルさに息を呑みました。
二人の関係性は「愛」や「恋」という言葉で語るには少し不格好かもしれませんが、描き下ろしの仲睦まじい二人の様子には胸キュンと癒しが詰まっており、どんな形であれ幸せになってよかったなと胸があたたかくなります。
どこかの田舎町に静雄と蒼介のような二人が本当にいるかもしれない、そんな風に考えてしまうほどのリアリティと人間臭さのあるキャラクターが特徴の本作。
しっとりと落ち着いた色合いと気怠い雰囲気の漂う邦画としてぜひ見てみたいと思う一作です。
ココロニイツモ/たうみまゆ商店街の片隅に建つ中古レコード店・きつね屋。そこには店長の東海林と、彼に拾われた青年・タイが暮らしている。
タイには拾われる前の記憶が一切ないかわりに、一度聴いた旋律は忘れないという能力があった。生活力が低くあぶなっかしいタイの世話を東海林はマメに見ているが、二人の関係は店長と店員、それ以上でも以下でもない。
だが近頃タイは、東海林に触れていると胸がくすぐったいような気持ちになる自分に気づき……?
次に紹介する『ココロニイツモ』は、北海道を舞台に繰り広げられるゆったりとしていて優しい恋の物語。記憶喪失の青年・タイは、居候先であるレコード店の店長・東海林や雑貨屋を営む女性、ゲイバーの店長など周りの人々との触れ合いの中で次第に「心」を取り戻していきます。
タイが東海林と出会うことでなくしたはずの「恋しい」という感情を取り戻していく様子や、そんなタイを見守る周囲の人々の気遣いなど、BLという枠を超えヒューマンドラマとしての見どころも満載の本作。
タイは音楽に対し並外れた記憶力を持っており、作中でもジャンルを問わず様々な曲が登場しますが、それが是非この作品を映画として見てみたいと感じる大きな要因です。ゆったりとした商店街の街並みや生活感溢れる映像と共に、タイが鼻歌を口ずさむシーンを是非拝みたいと願ってやみません。
少々SFテイストなお話でもあるので、山中ヒコ先生の
『500年の営み』やSHOOWA先生の
『Nobody Knows』がお好きな方には是非手に取って頂きたいです。
宝物はぜんぶここにある/糸井のぞ行方不明の父親を探すため旅に出る母親。見知らぬ男の家にあずけられた旬之介。その男は恋愛に奔放な児童文学作家・轟信太郎。旬之介は書生になり信太郎の世話をすることになった。
轟家にやってくる信太郎をとりまく不器用な男たち…。信太郎の高校の同級生であり担当編集の橘高。劇団俳優で現在の信太郎の恋人・チャコ。バツイチ子持ち、信太郎の大ファンで突然家を訪ねてきた榊。そして、旬之介の同級生、ワケあり女装男子の美少年・春威。
ひとつ屋根の下で寝食を共にしたり、時には身体を重ねたり、傷つけたり傷つけられたり…。
恋愛、家族愛、友愛――すべての愛がつまったキラキラ輝く宝物を探すそれぞれのラブストーリー。
3作目は、糸井のぞ先生の『宝物はぜんぶここにある』です。
物語の大半は書生・旬之介の視点で語られますが、旬之介の物語というよりは作家・信太郎の半生を描いており、信太郎と彼の周りに集まる男性たちの群像劇の様な構成になっているのが今作の特徴です。
「愛」に懐疑的な旬之介と様々な「愛」に生きる信太郎の生き方の対比や、信太郎に絡みついていた様々な過去の因縁が少しずつほどけていく描写にはとにかく「圧巻」の一言。
糸井先生によって動きだすキャラクターはそれぞれとても人間味があり、一筋縄ではいかない感情や過去のしがらみとの折り合いをつけていく様にぐっと心を惹き込まれました。
画面から漂うレトロな雰囲気も素晴らしく、是非全編フルカラーで見てみたいと思ってしまいます。少し気怠い雰囲気の似合う邦画ならではの空気感にぴったりの作品ではないかと感じました。
地下鉄の犬/草間さかえサラリーマンの篠田が会社帰りにコーヒーの匂いに導かれ入った先は、一軒の煙草屋兼骨董屋だった。そこで店主の朝倉と出会った篠田は、ひょんなことからお店に通うようになるのだが…!?愛へと移り変わる感情を豊かに描いたアダルトラブストーリー。
最後に挙げるのは
ドラマCD化もされた草間さかえ先生の人気作『地下鉄の犬』です。
妻との離婚が決まったサラリーマンの篠田は、とある夜にたまたま足を踏み入れた骨董屋の店主・朝倉と知り合い、そこから二人は微妙な距離感のまま逢瀬を重ねていくことに。
篠田が一人歩く夜道や骨董屋の内装など、草間先生の独特な筆致で描かれる世界観がとても温かく、淡々としていながらもしっとりと心に沁み込んでくるような作品です。
「男同士だから」ということではなく、ひとりとひとりの人間同士が次第に恋に落ちていくというストーリーだからこそ、「人間」や「恋愛」をテーマとして扱った作品として腐女子だけでなくもっと幅広い層に触れて欲しいと感じます。
巻末に収録されている二人が旅行に出掛けるエピソードをバックにエンドロールが流れるような演出を希望します(笑)
いかがでしたか?「BL作品は実写化よりもアニメ化した方が良い!」とも思う反面、「こうした作品だったら実写で見てみたいな」と感じる作品を紹介させて頂きました。CD化だけに留まらず、もっと様々な形でのメディアミックスが可能になると嬉しいですね!
記者: 星野
コメント11
匿名2番さん(2/2)
原作が壊されることが多いのは事実だけど、漫画で終わらせるには勿体ない、世界中に見て欲しいと思うような作品は、実写化(良い形で)されて大ヒットして、沢山の人が目にすると良いのになと夢見てしまう。自分がとても才能のある監督で、潤沢な資金を手に入れて思うままに映画が撮れたらいいのに・・・凡人なので夢見ることしかできません。
匿名5番さん
『スメルズライクグリーンスピリット』は素晴らしい青春映画になりそうですよね。漫画という枠を超えて多くの人に知って欲しい作品なので、実写化が無理ならジブリのような有名所でアニメ映画化してくれないかな。
匿名10番さん(1/1)
実写化は作品イメージが壊されることが多いので実写化反対派です。
でもこの記者さんのセレクトと紹介の仕方は「読んでみたい」と思わせてくれてすごくいい!
匿名9番さん(1/1)
外国が舞台ものだったら観てみたい~
(非BLだけど)吉田秋生さん「Banana fish」
真東砂波さん「FAKE」
英田サキさん「DEADLOCK」シリーズ
蒔舞さん「ロスト・コントロール」
ジョシュ・ラニヨンさん「アドリアン・イングリッシュ」シリーズ
匿名8番さん(1/1)
鳩村衣杏先生の小説「王様と二人の料理人の話」を実写映画でみてみたいな。
匿名7番さん(1/1)
だんはじシリーズ実写化して欲しい
実写化叩く人、わざわざ叩くなら書き込まないで
匿名6番さん(1/1)
いっそ実写化という概念を無くしたい!
今から映画監督になるのと同じくらい無理な話だけど!
匿名5番さん(1/1)
「宝物はぜんぶここにある」同意!いい意味で普通のBLとは一味違う作品なので、原作読みながら実写で見てみたいと思いました。原作の絵も良かったけどあの表情を役者さんの芝居で見てみたい。
「地下鉄の犬」も良さそうですね。Hシーンなどは省略することになるでしょうけど作品自体の雰囲気が良いからいい作品になりそう。
あと匿名2番さんの「スメルズライクグリーンスピリット」にも激しく同意です!ドラマCD化も嬉しかったけど個人的には実写化が一番しっくり来ると思う作品なので。実はBL作品の実写化の話が出るたびに「次はグリーンスピリットかな!」と一人でちょっと期待してたんですけど未だに・・・(苦笑)もし作るなら変にBLっぽくしないでセクマイ少年たちの青春映画としてちゃんと撮って欲しいです。
匿名4番さん(1/1)
実写化しないでください。
匿名3番さん(1/1)
羅川まりも先生の「ニューヨークニューヨーク」を外人さんキャストで!
ドラマCDがコミックス全4巻を2枚に圧縮しすぎて残念な感じだったので、あんまりエピソードをカットせず、3時間ぐらの実写映画で見たい!
宝くじが当たったら全額出資します。
携帯電話のない頃の設定だけど、あえてそのままで。
匿名2番さん(1/2)
私は『スメルズライクグリーンスピリット』を実写映画化してもらいたいなぁ。
『スタンドバイミー』や『リトル・ダンサー』みたいな思春期の少年たちの映画が撮れるような監督が日本にもいたらいいのにな。過激であり得ないような原作の作品より、カンヌに出品しても良いぐらいの作品に出来ると思う。見る目のある映像関係者はいないかなー。
匿名1番さん(1/1)
笹原くんと鮫島くん、自分で監督できるなら月9でやりたいですよw
実写にするなら「こんなこと実際にあるかも」と思わせるようなリアリティよりの作品がいいですね。