いつどこを切っても新しい! 新鮮さを失わない異色BL長く注目を集める作品というと、いつの時代も変わらない普遍的なテーマを扱っている……言わば
「王道作品」であることが多い、ということが、今回の特集で明らかになった事実の一つ。
しかしその中にあっても上位にランクインした、雲田はるこ先生の2012年刊コミックス
『新宿ラッキーホール』は、決して王道とは言えない、むしろ
異端作品と言って差し支えないのではという、珍しい作品です。
キャラクターの深みがすごい作品のカギを握るのは、一世を風靡したゲイビデオの元ポルノスターで、現在は自らAV制作会社の社長を務める男・桧山苦味。
その苦味に男を教え込んだ元ヤクザのサクマ、サクマに惚れ込み彼を追いかけてきた組長の息子・竜、苦味の大ファンであることを隠し社員として働く斎木、斎木萌えが止まらないオタクのハーフ男優・レニ……。一癖も二癖もある男たちが、色々な意味で
あらゆる方向から絡み合うオムニバスの短編集です。
物語のメインはサクマと苦味の関係性ですが、面白いのは、一見彼らの間柄とは関わりがなさそうなその他カップルたちのストーリーが、しっかりとサクマ&苦味の2人を掘り下げ、
浮き彫りにしていく秀逸な描き方。
さらに、作中彼ら一人ひとりのバックボーンが事細かに語られているわけでもないのに、なぜか言動などから「この人はこういう人なのかも知れない…」と想像してしまえるのも不思議なところ。それだけ雲田先生が、キャラクターの言葉や表情の端々に、各人の
人生観・
考え方を織り込ませているからなのかも知れません。
複数の短編がオムニバス形式で収められているため、一度目はサラッと読み終わります。あれ?こんなもん?と拍子抜けするのですが、二度三度読み返しているうちに段々と印象が変わってきます。(みみみ。さん)サクマが何も説明しなくても、そういう矛盾だらけの関係ならではの難しさを二人がどんな風にかわし、どんなふうに15年を乗りきってきたかがちゃんと読者にも感じ取れる仕掛けになってる。そこがこの作品のスゴいところだと思います。(yoshiakiさん)「いつ読んでも新しい」ことが強みかつて異端と言われたジャンルが、現在ではすっかり
珍しくなくなった……なんてこと、皆さんも経験があるのでは。これだけ毎年多くの作家さんが数えきれないほどのBLを世に放っているわけですから、それは決しておかしな現象ではありません。
しかし今作の強みは、
発売当時も今も新しくて珍しいということ。はじめから異色と言われていた作品が、3年の時を経た今でも異色のままだというのは、やはり驚くべきことだと思うのです。
そしてただ物珍しいでけではない、皆が幅広く共感できる萌えも盛り込まれている……それが『新宿ラッキーホール』という作品がずっと受け入れられ続けている理由ではないでしょうか。
3P、リバ、固定以外の相手とのプレイ、
ヤクザ……と、決して初心者向けとは言えない要素がたっぷりではありますが、当時駆け出しBLファンだった皆さん、そろそろ解禁はいかがでしょう!?
表紙の奇抜さで敬遠しがちな今作ですが、やわらかで懐かしい絵柄と
それに反するエロ、ぜひご堪能ください♪
記者:神谷浩未
コメント4
匿名4番さん(1/1)
レビューの熱量が凄かったです。
私も読んだ時はあまりピンと来なかったのですが、レビューを読んでこの作品の良さを教わりました。
匿名3番さん(1/1)
こういうランキングに、自分の好きな作品がランクインしていたためしがない(´;ω;`)
匿名2番さん(1/1)
ですよね・・・。私には全く合わずお蔵入り。なんで高評価?不思議。
匿名1番さん(1/1)
「イベリコ豚」以上に、合う人は合うけど、合わない人はホント合わないと思う作品。
雲田はるこさんの実力の高さゆえだろうけど、すごいなぁ。
今は「昭和元禄落語心中」と「いとしの猫っ毛」で手いっぱいでしょうが、
また雲田はるこさんの新たな世界を読んでみたい。