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デキル男は恋も仕事も 『銀の弾丸シリーズ 秀 香穂里』

2010/01/28 00:00

秀香穂里さんと言えば、肩書きとしての仕事ではなく、リアルな仕事描写に臨場感が感じられると定評のある定評のある作家さんの一人だろう。
 「くちびるに銀の弾丸」「くるぶしに秘密の鎖」と続くこのシリーズ作品は、ゲーム会社を舞台にゲームソフトを売る営業マンと業界ではトップクラスのゲームクリエイターとの恋愛模様を描いている。攻めの営業マン澤村がクリエイターの水嶋より三つ年下の年下攻めものでもあるから、年下攻め好きの私としてははずせない作品の一つだ。

 あとがきを読むと、どうやらこれは作者秀香穂里さんがキャラ文庫で初めて出す作品のようだが、私にとっても、これが初秀香穂里作品で、手に取るきっかけになったのは当時良く通っていた書評ブログの管理人さんの感想を読んでからなのだが、これを読んだ当初は実のところ、この作品が自分にとってあまり良い作品であるとは思っていなかったのだ。

 攻めの澤村は仕事のできる男で、営業マンとしての成績も優秀、水嶋より年下でありながらどこか不遜な態度をとる澤村になんとなく苦手意識があって、興味本位で水嶋と身体の関係になり、どこか相手を見下したような態度で接する事が多かったからか、澤村が思いのほか水嶋に嵌っているように見えても、仕事上のトラブルを解決して絆が深まっているようでも、澤村の態度があまり変化が見られなかったからか、なんとなくしっくりコないまま、どこかもやもや感が残るラストだったようにおもう、だからこの作品の続編が出ると聞いた時は正直驚いた。

  そしてその続編を読んでみてもっと驚いたのは澤村の態度が1冊目のころからかなり変貌を遂げていたことだ。

 営業マンとしての仕事ぶりはもちろんの事、仕事に熱中すると周りが見えなくなってしまう恋人水嶋を、旨くフォローする良きパートナーぶりを発揮し、彼に対する接し方もずいぶんと変化を見せていたのだ。

 もともと仕事は出来る男ではあった澤村だが、本当の恋を知り、大切にしたい相手が出来る事で恋も仕事もそつなくこなす、まさしく本物の出来る男になったといえよう。

 1冊目の二人の関係はまだまだ先に不安が残るものだったが、続編でやっと二人の関係が固まった感じがして安心する事が出来た。前作が今ひとつ肌に合わないと読まずに終わっていたらこのシリーズが自分の中でお気に入りの作品に入る事はなかっただろうから、敬遠せずに読んでみて正解だったと言えるだろう。

 2冊目の「くるぶしに秘密の鎖」には本編のストーリーの他に、挿絵を書かれた際河ななをさんの漫画も収録されている、際河さんのファンの方にも嬉しい1冊となっている。そして、これ以降、「艶めく指先」「他人同士」へと続く作品たちにも澤村と水嶋の二人の存在が欠かせない物になっているのも作者様にとって、この作品への強い思いいれが感じられてそれも私が気に入っている事の一つなのだ。

紹介者プロフィール:高坂ミキ
好きな作家は、英田サキさん、ひちわゆかさんなど。Hシーンよりストーリーの濃い作品が好き。 30の後半を過ぎてからヤオイに嵌った遅咲き腐女子。似たような内容のストーリーが溢れているBL海で、本当に萌えられる自分好みの作家さんやお話を今だ探検中。

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