「この子は二十歳までしか生きられない…」
この占い師の予言からして、もう反則というか、読まなきゃいられないじゃないですか！
ミステリアス＆ファンタジーのさらに上を行ってる設定ですから、途中で飽きることは絶対にございません。最初から最後まで徹底したファンタジー、そしてラブをお楽しみください。
無かったこともあったこと。ありえないことが何でもアリ。ＢＬ自体ファンタジーなのですが、ファンタジー特集と言うことで今回はさらにファンタジックな作品をご紹介したいと思います。
物語の進行上、多少強引でも全て「ファンタジーですから」の一言で片づけられてしまうのがＢＬ小説の常だと思いますが、架空の設定＋架空の世界の物語。あなたは萌えられるか？
アタシ自身、元々ファンタジー設定と言うものにあまり萌を感じていなくて、（想像力が乏しい？）本を買う際にはあらすじをチェックしてなるべく避けて通っていた節があります。
映画とかは好きなんですけどね。ファンタジーな作品。
最初ファンタジーモノだとは気付かず作家買いしてしまい、読み始めてからあれよあれよと言う間に引き込まれ、既刊を慌てて買い足す事になった作品。
今まで避けて通っていたのは何だったんでしょうか。食わず嫌いですね。
シリーズ第一作目の凍る月?漆黒の情人?では鳳平蔵（おおとりへいぞう）の娘・麗美（れみ）が突然失踪し、八ヶ月のお腹を抱えて戻ってきた所から始まります。
生まれた子供は男の子。光陽（こうよう）と名付けられるが、麗美は誰との間に出来た子供なのかは一切明かさず、なんとなく胸騒ぎを覚えた平蔵は昔から懇意にしている易者を呼び寄せ、生まれてきた子供・光陽の将来を占ってもらうことに。
「二十歳までしか生きられない子供」
そんな占い結果でも麗美は少しも悲観していない。むしろ二十歳までは生きられると予言した易者に感謝し、父母に予言が当たるよう一緒に祈ってくれと言う。
もうこの時点で普通ではない、ミステリーな匂いがプンプンします。
その謎が明らかになるのはすぐこの後なのですが、物語が始まってからほんの数十ページでグッとそこでつかまれてしまい、鼻先にニンジンをぶら下げられた馬のように先へ先へと読まずには居られません。
確かに謎ではあるのですが、これのどこか謎なの？と疑問に思う方がいらっしゃるかもしれません。
次の展開でああ、これはやっぱりファンタジーなんだなと思い知らされます。
光陽が２歳になったある日、公園に光陽を連れ遊びに来た平蔵は驚愕の事実を知る事となります。
転んでひざを擦りむき怪我をしたはずの光陽の膝が、今まで何もなかったかのように異常な速さで怪我が治っている。…不思議な体質を持つ子供だった。
き、来ました！普通ではない、まさしくファンタジー設定！
ありえない設定にあえて突っ込んではいけません。強引だろうが何だろうが、ファンタジーです。そいうものだと思うとあら不思議。全然不思議じゃ無いじゃない。
そこからはもうファンタジーの世界へまっしぐらです。
母・麗美はその事を知っているようだが、どうしてそんな不思議な力を持っているのか母の口から直接光陽には明らかにされないまま、光陽が１５歳の時に胃がんで亡くなってしまう。２０歳までしか生きられないという予言の事も光陽には知らされておらず、今まで光陽は不思議な体質のお陰で、ロクに学校行事にも参加できない。
中学を卒業し高校へも行けず、外へ行くことも許されずに、世間とは隔離された状態で半ば引きこもりの状態。２０歳になったら好きな事をしても良いという祖父の言葉を信じ、予言の年齢である２０歳になろうとした時だった。
突然現れた謎の男。（また謎だな）美術愛好家と称する男は、祖父が持っている古伊万里を一千万で買いたいと破格の値段を申し出て、キャッシュと引き換えにその古伊万里を持って屋敷に来るよう光陽を誘い出し、持ってきた光陽にいきなり俺と契約しろと迫る。
何も知らない光陽は突然現れた謎の男の口から、これまた驚愕の事実を知る！！
男の名は簗井轟（やないごう）。美術愛好家で超が付くほど金持ち。
ＢＬの王道とも言えるような人物設定として、攻め様は超が付くほどの金持ちでなくてはいけません。第一印象は傲慢で不遜。少々乱暴で、受け様はそんな攻め様を最初は怖いと思うものの、わずかな攻め様の言動に優しさを見出し、少しずつ惹かれていくのがＢＬの王道中の王道の展開です。
このシリーズも面白い程にその展開を辿り晴れてＣＰ成立！となるのですが、そこはただのＢＬではないファンタジーＢＬなので、簗井が目の青い外国人でありながら日本人の名前を名乗り、見た目とは関係なく流暢に日本語を話し、その執事もまた外国人でありながら流暢な日本語を話しても一切疑問に思ってはいけません。いいんです。全てファンタジーですから（笑）
人物設定はさておき、簗井もまた特異な体質の持ち主で獣と人の混血の「獣人」。普段は人の姿をしているが、餌を喰わないと人の姿を保てなくなってしまう。もう、おわかりですね。怪我をしてもすぐに治ってしまうという不思議な体質は、全ては獣人の為のもの。つまり光陽は獣人の「餌」と言う事なのです。
ここまでファンタジー過ぎるとＢＬはどこに？と思うかもしれませんが、どうぞご安心ください。
この凍る月シリーズは「漆黒の情人」から始まり、第二弾「紅（あか）の契り」第三段の「灰色の衝動」と続きます。物語が進むにつれて糖度も増し、すれ違いあり横恋慕あり焼き餅ありの、しっかりガッツリ、テンコ盛りでBL満載です。（笑）
さらにはスピンオフ「花の残像」もあり、２００９年９月（２００９年８月現在）にはその続編も発売予定のようです。
ＢＬファンタジーのさらに上を行くファンタジー。普通のＢＬに食傷気味の貴女に是非お薦めです！
紹介者プロフィール：ねむちゃ３０半ばにして突然腐女子に返り咲いた専業主腐（婦） 今までのブランクを埋めるべくBLコミックス、BL小説を狂ったように読み漁り、 恐ろしい勢いで増えつつあるBL本の収納場所に頭を悩ませている。 旦那に腐女子であることは知られているものの、妻の趣味には無関心の様子。
