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お殿様な生徒会長×落語家志望の下町っ子。 平成お江戸の学園ラブコメディー! 『お笑いを一席』

2008/09/05 00:00

田所俊平は落語をこよなく愛す、チャキチャキの下町っ子。家から一番近いという理由で山の手のお坊っちゃん校に入学したが、な、なんと落語研究会がないのだ!おまけに時代錯誤な生徒会の連中には目の敵にされるし、ここはいっちょう、攻撃を仕掛けるしかない!でも敵側のボス、生徒会長の天龍寺日高という奴、傲慢で陰険なくせに、かなりの美形…。

独特な感性と世界観、時にはマニアックな設定で、ギャグ、シリアス、ファンタジー、甘々砂吐き、そしてホラー、様々なカラーの小説をいっそ不思議な位巧妙に書き分けてしまう、私の一番好きなBL作家・吉田珠姫。
各カラーごとに好きな作品はいっぱいあるし、どれにしようかすごく悩んだのですが、今回これを紹介してみることにしました。結構前の作品なんですが、私がこの作家に出会った&はまった、記念すべき第一冊目なのです。読む人さほど選ばない感じの、軽いコメディなので、BL初心者の方でも気負わず最後まで楽しく読めるような気がしたのですよね。(もちろん達人さんにもオススメですよ!)
主人公の田所俊平は、下町育ちで三度のメシより落語が好きな、落語家志望のちゃきちゃきの江戸っ子。祖母と二人暮らしで、とりあえず家からそんなに遠くない、天竜寺学園に入学します。幼稚園からのエスカレーター学園で、絵に描いたようなお坊ちゃま学校のそこには、俊平にはどうあっても我慢の出来ない、ある重大な欠点がありました。
『何だってェー?! 落研がないー?』
天竜寺学園には、なんと「落研 (落語研究会)」がなかったのです。
死んだ祖父に落語の真髄叩き込まれ、落語が日常生活の必需品、どころか血肉にまでしっかりと染み付いてしまっている、将来の夢は真打・噺家、高校に入ったらまずは何を置いても落研に入ろう、と至極当たり前のように考えていた俊平は、迂闊にも入学して初めてその欠点に気付き、入学初日に上記のような雄たけびをあげてしまいます。一度は入学した事を深く深く後悔までしてしまった俊平でしたが、いつまでも落ち込んでいるのはどうにも性分に合いそうもない。(学園に落研がねェんなら、作るまでだぜっ) その晩早速作戦を練りました。
翌日の放課後、俊平は廊下に椅子や机を出し、即席の高座をこしらえ、そこで自ら「寿限夢」の演目を披露し始めます。まずこの学校の生徒達に落語の面白さを分からせよう、という魂胆で始めた口演は、とても好評で、他のクラスの生徒や先生までもが、続々と集まってきます。演もたけなわ、だんだん噺している俊平もお客さんもイイ感じにノッて来た。しかし、そこにこの学園最大の脅威がやってきて、この噺会はあえなく中止せざるを得なくなってしまいます。
学園の脅威―――そして落研設立を目指す俊平にとっては、まさに最大にして最高の難関、目の上のたんこぶ、生徒会長の天竜寺日高です。日本有数の財閥、天竜寺グループの次期会長でもある彼は、頭脳明晰、文武両道、その行動はスイス時計よりも正確、十文字以上喋ったのを見た者はいない、と言われる程の超堅物。
落語に対して理解を示そうとしないばかりか、ことごとく俊平の邪魔をする日高に、ついに堪忍袋の緒を切らせた俊平は、仲間と組んで、彼を呼び出し、彼に殆ど付け焼刃の催眠術をかけようと思い立ちます。最初は小馬鹿にしていたものの、日高はあっさりと術にかかってしまい、落研設立の容認のみならず、ついでに落研の新入部員にまでされてしまうのです。
術が解けた直後、俊平に対して初めて十文字以上の質問をしました。
『単刀直入に訊ねるが――何故私は落語研究会などにはいったのだ?』
順調に事が運んで、大喜びだった俊平たちですが、これを聞いて、ザッと体温が下がります。
『私の様な人間にとって落語というのは一番遠い位置に存在するものだ』等と、術にかかっていた割にはやけに理路整然に事態をあくまで自分流に分析しようとする日高に、俊平は慌てふためきます。しかし、一度かけてしまった術は今更どうする事も出来ようがありません。何とか日高を納得させようと必死で説得するものの、何だか妙な流れの方向に。
『では、今、私とこいつは恋人同士と言うわけだな?』結局、日高と俊平はラブラブの恋人同士と言う事になってしまいました。万策尽きた俊平は、不満たっぷりですが、とうとうこれを受け入れます。
『ふむ、そうか』――ようやく合点の行った日高は、満足そうに笑い、その足で俊平を自分の家に持ち帰ります。そして、その日から日高の恥も恥とも思わない、なんとも時代錯誤なお殿様ラブが始まるのです。
この話、もちろん全体的なストーリーや設定も面白いのですが、私的に一番ツボだったのは、文章が全て主人公・俊平の語り口調だった、って事です。つまり、江戸っ子言葉なんですね。小気味のいいテンポで書かれた語り口は、読んでて、まさにその本全体が「BL」って言う落語聴いてるみたいだったのです。関西弁の語りのBLって言うのはたまに見かけますが、江戸言葉、それも平成の現代物でこれって言うのは、ちょっと……いやかなりレアかも。(笑)
生徒会長・日高のやけにお殿様チックな言動も面白いし、少女漫画なかわいい挿絵もまた、この小説にすごく良く合っていて拍手。それら全部が、本当に微妙なバランスでストーリー全体に絡み付き、この真面目に結構トンデモない話を最後まですっきり読ませているんじゃぁないかな、と私は思いました。うーん、それプラスこの作家特有の文章力☆ トンデモないくせに、でも最後、全てが分かった後の日高の俊平に対する告白は、ちょっとうるっとしますね?さすがにお殿様っていうか……うん、落語だけあって、すごくオチがうまい。もっともこの作者、いつもラストがすごくうまいのですけども。
全三冊のこの「お笑いを一席!」シリーズ、二冊目の「お殿様のおもちゃ」三冊目の「恋とケンカは江戸の華」、合わせてとってもオススメなので、「とりあえず」お試しあれ!

紹介者プロフィール:カノアマスミ
作家単位で好きなのは、小説家で吉田珠姫、夏樹碧、小鳥遊てつみ、漫画家で細倉ゆたかに國居亨。ギャグもシリアスもマルチで読むが、本人自体は無意識に性質がお笑いらしい。最近、眼鏡に過剰反応示すようになったので、とりあえず、このサイトの店長 (?) キャラには深い愛着を覚えた。年下攻めと癒しなおっさん受けと生徒×先生、ショタ×大人、旦那様×年上執事、なんかも好き。只今BL挿絵を描ける絵描きになりたいと、日々研磨中。

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