BL情報サイト ちるちる

BLニュース

BLニュースは標準ブラウザ非対応となりました。Google Chromeなど別のブラウザからご覧ください。

さらり…甘くさわやかな読後感 “王道BL”にもたれたら、お召し上がりください 『スローリズム』

2008/08/01 00:00

おまえだけは絶対好きにならないから」高校の頃、親友から告げられた一言。あれから十二年、その言葉どおり僕たちは友人のまま…。一気に燃え上がる恋もいいけど、じわじわ熱が伝道する

 杉原理生さんの文章は、しつこさがなく、穏やかで、優しく、まるで森林からわき出る天然水のような文章です。
一話を丁寧に書かれるので、量産はないのですが、できあがった作品はどれも雰囲気があり、文章の行間から杉原先生らしさがにじみ出るような作品に仕上がっていて、根強いファンが多いことも頷けます。
中でもこの「スローリズム」は、派手なセックスシーンもないし、お互いを罵倒しあうような修羅場も、全てが崩壊するようなカタルシスもない、どこにでもあるような日常が淡々と描かれている作品です。
どう淡々かというと、高校から仲のいい二人のサラリーマン矢萩と水森が、時々会って呑みにいくという、とてもBLらしくない地味な設定なのです。
アラブの王様や、社長や、敏腕刑事が活躍するBLの世界において、普通のサラリーマンはごく少数。しかもサラリーマンが登場したとしても、労働基準監督署に訴えられそうなほど残業をこなし、バリバリ働きながらしかも、精力的に恋人とセックスして。
そんなスーパーサラリーマン的表現のない普通なところがじれったい、とおもう読者の方もあるかとおもいます。ですが杉原作品は、その行間にただよう"相手を想う空気"を味わい楽しんでいただきたいのです。
ゲイだと告白している矢萩は、「水森のことは決して好きにならない」と宣言しながら、水森のことを友人としてとても大切にします。親友としてのスタンスを壊したくないから「絶対好きにならない」と何度も水森に宣言します。
ノンケの水森も、矢萩のそんな思いやりを傷つけまいと、何も気づかないフリをし続けます。
友人でなくなる怖さの前に、決着をつけようとは決してしない矢萩。それだけ水森との関係を大切にしていることはどことなく伝わってくるものの、決着を突きつけられないから水森もまた、自分の中の矢萩への想いについて突き詰めることもせず、そのまま12年を過ごしてしまいます。
夜ごとにとりとめのない電話をする二人、静かな夜にかかってくる矢萩からの電話を待っている自分に気づき、さすがに矢萩にとても大事にされているということを実感し、座り心地の悪い気持ちを抱き始めます。そんなに大事にされているのに、矢萩は「決して好きにならない」というのです。
その言葉の上でのんびりあぐらをかいていられなくなった水森。いつしか、本当の気持ちを自分に打ち明けて欲しいと願うようになります。
長い時間を掛けて寄り添うようになる二人の気持ち。お互いがお互いを大切におもっている話なので、じれったさというよりも、二人の想いがマリンスノーのように降り積もり堆積していくのを見ているような、そんな優しい気分になります。
上質のシャーベットを舌の上にのせたようなさらりとして、それでいて優しい甘さが残るそんな作品です。

紹介者プロフィール:はる
木原音瀬、榎田尤利の小説をこよなく愛するお年頃の主婦。運動不足解消を目指すべく犬の散歩にせっせと歩いているが、考えているのはBLの事。 精神的な痛みが伝わる描写に激しくもだえる“精神的”鬼畜な性格。バッドエンド、死別、カップルになれないまますれ違って終わる作品がもっとあってもいいじゃないか!とハッピーエンドオンリーのBL界に憂いを密かに抱く。六青みつみの自己犠牲の受け、真瀬もとの痛さも大好物。

関連作家・声優

コメント2

投稿順 | 最新順

匿名さん

私もこの作品、大好きです。

相手が大切だからこそ、「好き」と言えない。

このもどかしさ。

たまりませんね~(笑)

匿名さん

どこにでもあるような日常が淡々と描かれている作品!いいですね!ぜひ読んでみたいと思いました。

アクセスランキング

最新BLニュース

オススメニュース

最新のコメント

PAGE TOP