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愛し合うと死ぬ!?オメガバースに続く○○バースまとめ
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2023/02/10 18:00
皆さんは「バンドBL」と聞いて、まずどんなシーンを思い浮かべますか?
楽器を鳴らすキャラクター、情熱的なライブ描写、練習や曲作りをするメンバーの真剣な眼差し……どれも本当に魅力的ですよね。
ではもし実際に1つのバンドが活動することになったら、どんな人々が関わってくるでしょうか。
メジャーバンドであれば、まずミュージシャンたち本人に始まり、所属事務所、レーベル会社、各種音楽スタジオ、レコーディング関連、ライブ会場、コンサート技術職、音楽ライター……と思いつくまま並べても挙げきれません。音楽関連職というのは、大きく分けても20種近く、細分化すれば40~50にものぼる職種があるのです。また、学生やアマチュアであっても、スタジオ練習やライブ活動、音楽制作をすればそれだけ人との関わりが生まれてきますよね。
さて、つまり何が言いたいかといいますと、「人が動けばBLが生まれる!」ということです(力技)。事実、バンドマンだけでなく、そこに関連する人々にスポットライトを当てたBLは数知れず……今年の「BLアワード2023」にも、バンド系漫画が複数ノミネートしていたことにお気づきの方も多いはず。
そこで今回は、学生時代軽音サークルに所属しつつバンド活動に明け暮れ、これまで複数の音楽関連職にも携わった経験のある筆者が、そんなところを掘り下げるのか……! と唸った「こんなリアルなバンドBLが読みたかった!」5選をご紹介したいと思います!
◆目次◆
1.インディーズの空気感に浸りたい♥なら
須野なつこ『フローライト・スター』
2.プロの音楽制作を覗き見たいなら
ウノハナ『気まぐれなジャガー』
3.これぞ軽音サークルのリアル! を味わうなら
しっけ『ピンクハートジャム』
4.ライブハウスの裏側が気になるなら
秋平しろ『トワイライト・アンダーグラウンド』
5.バンドマンとは何者か…に迫りたいなら
キヅナツキ『ギヴン』
インディーズの空気感に浸りたい♥なら
【あらすじ】
その日、すずはライブハウスで恋におちた。
相手は、一緒にライブしていたバンドの臨時ボーカル。彼の名は耀司さんという。
一緒にバンド活動を始めてみると、耀司さんは、捉えどころがなくてエロい。
あふれる色気に溺れるみたいに、身体の関係を持ってしまったすずだけど…。
須野先生のデビューコミックスで、「BLアワード2023 BEST次に来るBL」のノミネート作品。
主人公のすずは繊細で大人しそうに見えますが、音楽に対する大きな熱量を秘めています。一人でも音楽はできるけれど、本当に心動かされるのはやっぱりバンド。そんなすずの前に現れた、奇跡みたいな存在が耀司でした。一見するとただれているようにも見えるメンバー間の恋愛ですが、二人に流れる時間はどこまでもピュア。
この作品でぜひ注目したいのが、インディーズバンド同士ならではの関係や、彼らがまとっている空気感です。すずは、元々兄の友人のベーシスト・しゅんとバンドを組んでいて、そこへ対バン相手の臨時ボーカル・耀司と、耀司が参加していたバンドのドラム・そうすけが加わり、新しいバンドが誕生します。
学生やアマチュアでは、一人がいくつもバンドを掛け持ちしていることは珍しくありません。そのためすずたちのように、あくまで音楽仲間だった誰かが、たった一晩をきっかけに「バンドメンバー」になるということもしばしば。メジャーバンドでは難しいそのフットワークの軽さや、これから新しい何かを始めるんだ、という言い知れない未来への期待感……! バンドを組んだ瞬間にしか味わえないはやる気持ちが、とてもリアルに胸に迫ってくるのです。
プロの音楽制作を覗き見たいなら
【あらすじ】
「椎名なら俺の隣で寝てるぜ」
音楽雑誌の編集者である新の元に、3ヶ月ぶりに椎名が帰って来た。天才ギタリストだが、日本の音楽業界からは半ば引退同然の身。しかし本人は一向に気にせず、自由奔放に国内外を行き来し、長い付き合いの恋人である新のことも放ったらかしだ。
その気まぐれさに呆れながらも、戻って来ては自分にべったりと甘えて可愛くエッチを強請る椎名が愛おしい新だが…。
かつては音楽が好き、ロックが好きという純粋な想いを持って田舎でギターを握っていた新。ある時、弟のように思っていた幼馴染みの椎名にねだられギターを教えると……彼は圧倒的な「天才」でした。
突きつけられた才能に折れた心と、その「天才」が自分に劣情を抱いていると知ったときの言いようのない気持ち。新のなかに渦巻く劣等感と独占欲と優越感が、とにかく苦しくてエロい!(?)
そして何を隠そう、筆者がただただ個人的に「ロックをリアルに描いたBL」と聞いてまず思い浮かべるのがこの『気まぐれなジャガー』。こちらはいわゆる第一線のプロミュージシャンにフィーチャーした作品で、魅力は語り尽くせないほどあるのですが、今回特に切り取りたいのが音楽制作現場のリアルです。
レコーディングスタジオでのシーンでは、メンバー間ややりとりや、技術者(エンジニア)側とのやりとりがつぶさにうかがえたり、ひとつひとつの楽器が加わって音楽が出来上がっていく過程の緊迫感が描かれたり。、なかには「いっせーので録音しよう」=楽器ごとに演奏して組み立てるのではなく、バンド全員で演奏してライブ感のある音を録音するという、実際のレコーディングでも行われている方法を取り入れたシーンもあり、ウノハナ先生のこだわりが垣間見えます。
音楽が出来上がる「歴史的瞬間に立ち会っている」という現場の興奮が伝わってきて、自分もその場にいるようなゾクゾク感が味わえますよ!
これぞ学生音楽サークルのリアル! を味わうなら
【あらすじ】
大学で重音研究部に入部した新入生の灰賀(はいが)は、そこで印象的な先輩・金江(かなえ)に出会う。彼の圧巻のギター演奏に魅了された灰賀だったが、金江と話すチャンスをなかなか掴めないでいた。
そんなある日、重研部の飲み会に参加した灰賀は先輩の提案でゲイ向けの箱ヘルを体験することになる。
自分のセクシャリティに悩んでいた灰賀がその箱ヘルで対面したのは、憧れていたあの金江で──!?
2022年の年間レビューランキング3位を獲得し、「BLアワード2023 BESTコミック」にもノミネートされた話題作です。
ゲイ向けの箱ヘルでキャストとして働いている金江は、真っ直ぐに自分に惹かれるサークルの後輩・灰賀を眩しくも大切に思っています。ポーカーフェイスの下に恋への情熱を隠している金江と、金江への想いが単なる憧れではないと自覚していく灰賀。事故のような体の関係から始まった2人の気持ちが、徐々に追いついて重なっていくもどかしさが堪りません!
今作のバンドBLとしての魅力は、なんといっても音楽サークル内ならではの青春の味! 特におすすめなのは、ストーリーの鍵にもなっている夏合宿のシーンです。音楽漬けの数日間、寝る間も惜しんだ深夜の練習、未熟な自分へのいらだち、先輩の音に圧倒されたライブ演奏……筆者は自身の学生時代を思い返し悶えに悶えました。※個人の感想です
そして卒業ライブにて金江のステージでサプライズ披露された、青春のすべてが詰め込まれたたった1曲。それを目撃していた主人公の友人のモノローグが、心に突き刺さります。
「時間にしたら4分もないけど 今後この曲を聴くたび“今”を思い出すんだろな」
青春時代何かに全力を捧げたことのある皆さんも、そうでない方も、ぜひ彼らの奏でる「今」の音を聴いてみてください。
ライブハウスの裏側が気になるなら
【あらすじ】
ライブハウスでバイトに励む大学生の古川くん。
大好きな音楽と仲間に囲まれて楽しい毎日だ。
そんなハッピーライフの唯一の問題が店長の北山さん!
もともと無愛想な北山さんだけど古川くんには格別無愛想なのだ。
スタッフ仲間からも二人の仲の悪さをからかわれる始末。
いつか店長をぎゃふんと言わせてやると息巻く古川くんは、ある日、北山さんの秘密を知ってしまうのだが…!?
自分自身でバンドをやったことはないけれど、ライブを観に行くのは大好き! という方は多いと思います。今作はそんな皆さんにぜひおすすめしたい一冊。
ライブハウスのバイトスタッフとして働く古川は、明るく爽やかで愛嬌があって……誰にでも可愛がられるいわゆる愛されキャラ。ただ一人、ライブハウスの店長である北山を除いては。古川はどうしても北山店長のことが気になって、彼を観察し始めます。すると、ある予感がよぎりました。「この人はもしかして、俺への好意を隠すためにわざと冷たく当たってくるのではないか」と。
あまりにピュアであまりにもどかしい2人の恋が見どころの今作ですが、今回はあえてバンドBLとしての一面を掘り下げ!
あくまで予想ですが、登場するライブハウスはおそらく1000人前後を収容できそうな中規模会場。あくまで予想ですが(2回目)、音楽好きの間ではある程度名が知られていて、出演者もそれなりの実力あるバンドが集まっていそうな――と、そんな妄想が際限なくできそうなくらい、裏方の雰囲気がしっかり描き込まれているのがこの作品の魅力の1つ! 読了後、こんな風に音楽を愛してやまない人たちが力を尽くしてライブが作られているんだなぁ、と思ってしまったが最後、あなたは「今すぐにライブハウスに行きたい!」「フェスで暴れたい!」という衝動に駆られていることでしょう……。
バンドマンとは何者か…に迫りたいなら
【あらすじ】
ギターは弾けるが冷めてる高校生・上ノ山(うえのやま)が、壊れたギターを抱えた真冬(まふゆ)に出会う。
嫌々ギターを教え始めるが、偶然聞いた真冬の歌声に撃ち抜かれ……!
バンドBLと聞いて、まずこのシリーズを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。既刊8巻、これまでにドラマCD化、テレビアニメ化、映画化、実写ドラマ化と一大ブームを巻き起こしてきた、バンドBLの金字塔的作品です。
真冬の才能に惚れ込み、彼自身に惹かれ、音楽と本気で向き合うことを決めた上ノ山立夏。2人が初々しく育てていく恋と同時に、彼らとともにバンドを組む大学生、ドラムの秋彦とベースの春樹をはじめとした脇キャラクターの不器用すぎる関係性にも、心がぐらぐらと揺さぶられます。
緻密な音楽描写もあいまって、BL読者以外からも支持を集める同シリーズですが、ではバンドBLとしてどんな魅力が詰まっているのでしょうか。
一言で言ってしまうと『ギヴン』は、バンドマンを知りたいすべての人におすすめしたい作品。
曲づくりやバンド活動の現実、楽器や機材の緻密さ、サウンドの描写など、特筆すべき場面は尽きませんが、なかでも強く胸に迫るのは「彼らは何を思って音を奏でているか」のリアルです。
『ギヴン』を読む前と後とでは、同じバンドの曲を聴いても受け取り方が変わるかもしれない――。そんな風に考えてしまう程度には、バンドマンが音の渦のなかで高揚感や見ている景色、その音をつくるまでに何をどれほどの葛藤と試行錯誤をしてきたかがこの作品には詰め込まれています。
そこにあるのは純粋な音楽への愛だけではなく、えぐられるような恋のいたみかもしれないし、生きていることへの苦悩かもしれない……。バンド好きや経験者であるほど、胸が苦しくなるほどの感情の波に翻弄されます……が、読んで後悔することはありません!
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さて、バンド経験者が深掘りする「バンドBL」の魅力、いかがでしたか?
聴くたびに違う発見がある音楽のように、今回特集した作品を違う目線から楽しむきっかけの1つになれたら嬉しいです!