BLニュース

大きな波を生み出したパラダイムシフトBLはこれだ！

皆さんは地動説をご存じですか？ そう、天が地球の周りをまわっているという常識を一気に覆した、あの地動説です。 このように、今まで当たり前だと思っていたことがひっくり返るような大発見の事をパラダイムシフトと言います。

ではBL界のパラダイムシフト的作品といえば、皆さんは何を思い浮かべますか？
BL、特に商業BL界を大きく変化させた作品と言えば……？？？

という事で今回はBL現代史！ BL界がひっくり返った作品大集合！ 今や大人気で当たり前になっているBL業界の流行や、その転換点となった作品を筆者の独断と偏見でご紹介していきます。

刻一刻と変化するBL業界の歴史を一緒に考えてみませんか？

◆目次◆
1．BL市民権の拡大『純情ロマンチカ』
2．商業BL出版拡大『抱かれたい男１位に脅されています』
3．オメガバース商業流入『オメガバース・プロジェクト(1)』
4．一般への周知『おっさんずらぶ』
5．BLのグローバル化『魔道祖師』
6．Twitter創作BLブーム『高良くんと天城くん』

1．BL市民権の拡大『純情ロマンチカ』

『純情ロマンチカ』作：中村春菊 

あらすじ
『恋に落ちなさい　愛を語るのはそれからだー』兄の友人で超有名小説家の宇佐見に、なぜか家庭教師をして貰うハメになった美咲。ところが、訪れた宇佐見の自宅で、兄と宇佐見を主人公にした「ボーイズラブ小説」を発見！思わずキレた美咲だが、寝起き最悪の宇佐見が襲ってきてしまってー！？命令口調で強引な色男×やんちゃ高校生のドッキドキ☆ファーストラブレッスン。

まずはアニメが第3期まで放送されている不朽の名作『純情ロマンチカ』。2003年に第1巻が、2022年には第27巻が発売されており、長期にわたって多くの読者から愛されていることが分かりますね。

そんな『純情ロマンチカ』ですが、2008年にテレビアニメ第１期が制作されています。当時、BLアニメはOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)が主流でしたが、深夜アニメとして放送され絶大な人気を博しました。

地上波で放送されるアニメとしての礎を気付いたのはまさしく『純情ロマンチカ』だったと思います。BLの指南書のような読みやすさから、この作品から商業BLに興味を持ったという方も多いのではないでしょうか。かくいう筆者も、私が中学生の時に放送していたアニメ『純情ロマンチカ』の第3期を観て「こんな世界があるのか！！」と驚いた記憶があります。

純情ロマンチカが与えた影響は、このようにコミックスまでは購入しないようなアニメファン層の商業BLを広めたことが1つ考えられると思います。『俺たちのBL論』という書籍でも、著者の一人であるサンキュータツオ氏のBLへの目覚めが『純情ロマンチカ』であるということを語られています。

冷静に考えてみると3クールもアニメを放送するってなかなかすごいことですよね！ それだけ多くの視聴者を獲得したということでしょう。また、同時収録作品もアニメ化やドラマCD化されていることも画期的でしたよね。BLの萌えが網羅された多種多様のカップリングがアニメになることで、BLの裾野の広さが認知されたのではないでしょうか？

２．商業BL出版拡大『抱かれたい男1位に脅されています。』

『抱かれたい男1位に脅されています。』作：桜日梯子

あらすじ
「一生、俺から離れられない体にしてあげますね」5年連続「抱かれたい男1位」の西條高人がついに首位陥落。その座を奪ったのは芸歴3年のド新人俳優、東谷だった…！敵意ムンムンの高人に対し、東谷は邪気ないキラキラ笑顔で懐いてくる。警戒心MAXの高人だったが、酔った勢いで東屋に醜態をさらしてしまってから立場が逆転！握られた弱みの交換条件として「抱かせて下さい」と提案されて……？

続いては昨年第8巻が発売されアニメ化・映画化もされるなど、絶大な人気を誇るシリーズ、桜日梯子先生の『抱かれたい男1位に脅されています。』。ちなみに、筆者が初めて購入したBLコミックスもこの「だかいち」でした。

そして、この作品はBLのエロ描写に大きな革命をもたらしたと考えています。それは「BL文字」です。BL文字とはエッチのシーンの時、吹き出しの外に手書きで書かれる効果音のこと。桜日梯子先生の作品はとにかくエッチシーンに余白が無いくらい文字とハートが詰め込まれています。エロ描写ってこんなにエロく書けるんだ……と目から鱗の作品でした。

さらに、この作品はとにかく人気が高く、2019年には累計売上300万部を突破しています。 BLファンでこの作品を見たことが無い人はおそらくほぼいないのではないでしょうか。 二次創作が主流のBL界をひっくり返した金字塔と言っても過言ではありませんよね！  さらにこちらのグラフを見てみてください。

※ちるちるデータベースより

このグラフから『抱かれたい男1位に脅されています。』第1巻が発売された2014年2月以降商業コミックスの発売数が増加傾向にあることが分かります。コミックスの出版数の増加の要因として、だかいちの圧倒的人気が影響しているのかもしれませんね。

３．オメガバース商業流入『オメガバース・プロジェクト(1)』

『オメガバース・プロジェクト(1)』

あらすじ
もしも全ての人間が妊娠可能だったなら、もしも男も女も関係なくなってしまったなら、恋愛は本当に自由になるのだろうか――。
最も優れた種族とされる"α"（アルファ）が統べる世界には、凡庸だと思われている"β"（ベータ）と、人間でありながらも唯一発情期を持つ"Ω"（オメガ）が存在していた。発情期を持つ事で原始的と見なされ、αとβから虐げられるΩ。しかし彼らとエリートであるαには"番"（つがい）と呼ばれる特別な繋がりがあった。
発情期、妊娠、そして種族別の階級社会、オメガバースの世界が男同士の恋愛に新たなドラマを呼ぶ。誰も見たことのないボーイズ・ラブ、いざ開幕。

続いて取り上げるのは『オメガバース・プロジェクト(1)』。商業BLにおいてオメガバースが取り入れられるきっかけとなったシリーズです。「オメガバース・プロジェクト」とはふゅーじょんぷろだくとが出版するアンソロジーシリーズ。シーズンの終わりには連載した作品が単行本化され、2015年の第一弾では森世先生の『ロマンティック上等』が人気となり、BLアワード2016の「新人作品ランキング」にて第6位を獲得しています。

また、オメガバースシリーズのコミックスの冒頭ページには、オメガバースの世界観の図解が載っており、オメガバース初心者の最初の関門「世界観の理解」も簡単に突破できます。オメガバースが商業BLに取り入れられる際の工夫が見られますよね。

同人誌では2013、2014年位からオメガバース設定を見かけるようになりましたが、商業BLへオメガバース設定が輸入されたのがこの『オメガバース・プロジェクト(1)』でした。それではオメガバース作品の出版数の推移を見てみましょう。

※ちるちるデータベースより

2015年には23作品しか出版されていませんでしたが、以降増加を続け2020年には279冊ものオメガバース作品が出版されています。今やメジャーな設定ですが、その流行の始まりは2015年だったのですね！

４．一般への周知『おっさんずラブ』

ドラマ『おっさんずラブ』

あらすじ
女好きだけど、まったくモテない33歳のおっさん・春田創一(田中圭)。だが、しか~し! 彼はある日突然、“未曽有のモテ期"を迎えることに!!それは文字通り“未曽有"の事態。なぜなら、愛を告白してきた相手は…ピュアすぎる乙女心を隠し持つ“おっさん上司"黒澤武蔵(吉田鋼太郎)と、同居している“イケメンでドSな後輩"牧凌太(林遣都)だったからだ――!

続いては、実写ドラマからBL界隈だけでなく日本中で一大ブームが巻き起こった『おっさんずラブ』をご紹介いたします。（※『おっさんずラブ』は非BL作品ですが、BL業界に大きな影響を与えたという意味で選出しております）

『おっさんずラブ』は2018年に放送された男性同士の恋愛を扱ったドラマです。当時「こんな地上波の放送枠で、こんな豪華な俳優さん達が演じているの⁉」と衝撃を受けた方も多いのではないでしょうか？「オリコン年間映像ランキング 2018」ではテレビドラマDVD部門、BD部門で1位を獲得するなど、BL好きだけでなく一般層の支持も獲得し、大ヒットドラマへと昇りつめました！

『おっさんずラブ』がもたらした変革はずばり、「実写BL」です。こちらのグラフを見てみましょう。

([美しい彼、チェリまほ…今急増中の「実写化BL」って何から始まったの？])

『おっさんずラブ』放送後から実写BL作品数が増加していることが分かりますよね！ 2022年には『オールドファッションカップケーキ』『みなと商事コインランドリー』など人気BLコミックスが次々と実写ドラマ化。今では1クールにつき1本以上のBLドラマが制作されていますが、『おっさんずラブ』の大ヒットが契機になったことは間違いないでしょう。

5．BLのグローバル化『魔道祖師』

『魔道祖師』作：墨香銅臭 イラスト：千二百

あらすじ
時を超え待ち続けた、運命の再会。かつて「悪の道に堕ちた」と人々から恐れられた魏無羨(ウェイ・ウーシエン)は、すべてを失い非業の死を遂げた。しかし、それは自らの信念を貫いた証だった。それから13年後――別人の体に召喚され、思いがけず現世に蘇る。正体を隠し過去と決別しようとするが、よりによって少年の頃から文武を競い合った宿命の相手、藍忘機(ラン・ワンジー)と再会してしまう。自由奔放で快活な魏無羨(ウェイ・ウーシエン)と、品行方正で寡黙な藍忘機(ラン・ワンジー)。前世の記憶の中では衝突してばかりいたはずなのに、なぜか彼はそばを離れようとせず――。あの日の旋律が再び二人を巡りあわせる。

続いては現在も続く中華ブロマンスブームの引き金役となったファンタジーブロマンス『魔道祖師』についてお話いたします。『魔道祖師』は中国のブロマンス小説。『陳情令』として中国でドラマ化されると、中国や日本で大ヒット！ 日本語版の小説や、アニメの制作などメディアミックスが進みました。また、『陳情令』のあとに続き、ドラマ『山河令』も話題になりましたよね。

中国のブロマンスドラマと日本のBLの違いの1つは、ストーリーの長さにあると思います。ドラマにして全50話で丁寧に描かれる壮大なストーリーは基本1巻のみ出版される日本のBLとは異なりますよね！

この作品たちは海外BLドラマの可能性を見出し、日本のBLファンも海外に目を向けるきっかけになったのではないでしょうか？いうならばBLのグローバル化ですね！ さらに、昔と比べると配信でドラマを観る環境が整っており、それがよりグローバル化を促進させている気がします。

そして、今や一つの界隈を生み出しているタイBLも人気ですよね。2016年に放送されたタイBLの金字塔『SOTUS』を始め、近年のブームを牽引している『2gether』なども魅力です。なんと2022年には50作品以上のドラマがタイで制作されているそう！ タイBLの人気が日本での実写化ブームの原因の一つにもなっているのではないでしょうか。

6．Twitter創作BLブーム『高良くんと天城くん』

『高良くんと天城くん』作：はなげのまい

あらすじ
カースト上位の拗らせ男子と地味かわピュア男子のゆるきゅんBL
クラスメイトに内緒で付き合いはじめた高良と天城。だが、基本的に言葉が足りない高良の言動に振り回され、1人でぐるぐる考えてしまう天城はある決断をするのだが……!? 男子高校生のリアルな日常を描いたSNSで大人気のBL、ついに単行本化。

最後にご紹介するのはSNS発の人気作『高良くんと天城くん』。近年、pixivやTwitterなどで人気になった創作BLが、商業化されることがよくありますよね。『高良くんと天城くん』はとくにTwitterでの人気が凄まじく、Twitter発の単行本化が増えてきた要因になっているのではないでしょうか？2022年にはドラマ化もされており、SNSの発信力の強さを知らしめることになりましたよね！

ドラマはTikToKでも人気で、公式アカウントの再生数は爆伸び！ このようにSNSでバズるようなパっと見ただけで印象に残る作品が創作BLの流行で増えたのではないでしょうか。

また、Twitterで人気になった作品と言えば中山幸先生の『ショタおに (1)』やすずり街先生の『BLドラマの主演になりました(1)』なども挙げられますね。どの作品も爽やかで可愛らしい胸キュンポイントがたくさんあることが共通している気がしています！

こうして人気の作品を並べてみてみると、世間に強く影響を与えたBL作品はアニメ化やドラマ化をしていることが多いですね。メディアミックスが今後のBL業界を大きく変化させるかもしれません！

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

いかがでしたか？
筆者が考えるBL界のパラダイムシフト的作品をご紹介いたしました！

皆さんが「これはBL業界が揺れた！」と思った作品があれば是非コメントで教えてくださいね！
 

担当記者：るるるたまご 推しを泣かせるために人生をかける拗らせ腐女子。勝たんしか推し。自分は光の腐女子だと信じている。