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オメガバースの世界ゆえの悩みを突き詰めた、心掴まれる作品たち

突然ですが皆さん、オメガバースといえば何を思い浮かべますか？ 発情期が訪れたり番になったり、家族を築いたり……。エロ度の高い作品が多いのもオメガバースの特徴です。
しかし思いませんか？ エロエロがあるならエモエモがあってもエエやないかぁぁぁぁ!!

オメガバースという設定を踏まえた2人の関係性や心の葛藤にフォーカスした名作が、現在まで続々発売されております。そう、エモいオメガバース……「エモガバース」が今来ているんです(筆者調べ)。

ということで今回は、心理描写に重点を置いた作品をご紹介いたします！ この機会に、エモガバースの可能性を感じてみませんか？？

◆目次◆
1．"運命の番"に振り回されるβカップル
2．ヒートで抱くのは仕事だから？それとも……
3．信用の呪縛。二次性に翻弄される2人
4．じんわり泣ける、残された弟の愛と献身
5．好きな人の運命の番を探す
4．Ωのふりをするβ。その理由とは……

"運命の番"に振り回されるβカップル

『君と運命についての話がしたい』作：青梅あお

ーSTORYー

運命の番じゃなくても大丈夫。何も変わらないよ、ずっと――響と幸史郎はβ同士のゲイカップル。高校卒業と同時に始めた同棲も、もう10年になる。出会った当初は絶対に幸史郎が”運命の番”だと思っていたけれど、性別検査の結果は二人ともβ。男同士でも“運命の番”になれるαとΩが無性に羨ましくなる時もあるけれど、それでもお互いが好きなら関係ない。一緒にいられる穏やかなこの生活が心地いい――。そう思っていた矢先、性別検査の誤診がニュースになって……!?

【エモエモポイント】
第二性に囚われた彼らの、リアルな心理描写。フィクションだと分かっていても、感情の乱高下がジェットコースター級でした。

目が合ってすぐに「運命の番」だと確信した響と幸史郎でしたが、診断結果はなんとβ。性別記号一つで世界が真っ暗になってしまったような感覚に陥ります。それでも、お互いの気持ちが通じていれば大丈夫。そう信じていましたが……。

現実はそう甘くありません。作品の世界において、同性との結婚はαとΩが主流。βの同性カップルはまだまだ市民権を得られていません。運命の番なら、後ろ指を指されることもなく堂々と愛し合えるのだろうか……。響の葛藤から再検査を受けようとしたところ、幸史郎と大喧嘩に！ 小さな積み重ねが爆発する瞬間に思わず唾を呑みました。

中身は何も変わらないのに、世間の目に振り回されてしまう。交際期間約10年の2人はどう変化していくのか……。最後の番外編まで見逃せません♥

ヒートで抱くのは仕事だから？それとも……

『ひざまずかせて、俺だけのΩ』作：汐にがり

ーSTORYー

大企業の御曹司である宮ノ園絢世と幼い頃から彼を献身的に支える周防凌は、「優秀なエリートα」として周囲から一目置かれている。しかし絢世はΩであり、凌だけがそれを知っているのだ。跡取りの自分がΩであることを両親に言えず絶望する絢世に、凌は「これは二人だけの秘密だ」と誓ってくれた。以来、従者として秘密の共犯者として尽くす凌はヒートのときも優しく体を重ねて甘やかしてくれる。そんな彼に絢世はとっくの昔から恋をしているが、凌に従者以上の気持ちがあるのかわからなくて……。

【エモエモポイント】
片膝をついて最愛の彼を見上げる本気のプロポーズ♥ 涙の洪水警報発令です……!!

物語の舞台はΩに対する風当たりが相当強めの大企業。当然会社の幹部はαばかりなので、Ωの御曹司・絢世は両親にすら第二性を偽ることになります。そして、その秘密を知るのはαの従者・凌だけ。溢れるヒートの熱を慰めてもらうセフレ関係が続いていましたが……。

個人的に尊さが天元突破したのは、
「お前と一緒になりたい　俺にとって大事なのは絢世そのものだから」
と"ひざまずいて"プロポーズをするシーンでした！ α抑制剤を限界手前まで飲んでいた凌だからこそ、本能だけでなく絢世の人間性自体に惹かれて番になりたい、という説得力が強いんです。攻め・受け両者が抱える愛情の深さに圧倒されます……!!

信用の呪縛。二次性に翻弄される2人

『安全でない僕たちは』作：奏島ゆこ

ーSTORYー

「俺がお前のこと好きだって、信じられる？」 Ωの生徒会長・梶野基己と、αの生徒会副会長・辻田豪。豪は「Ωに興奮しないα」で、基己の幼馴染であり、唯一の親友だった。 しかし、豪が起こした〝ある行動〟により、二人の関係には大きく亀裂が入ってしまう。

誰よりも信頼していた豪に裏切られたと傷つく基己。しかし基己も、豪の「本当の姿」を見ていなかったことに気づき……。 第二の性に翻弄される少年たちが織りなす、痛々しくも瑞々しい、先鋭的オメガバース！

【エモエモポイント】
幼馴染の基己(Ω)に想いを寄せる豪(α)。しかし豪には基己に手を出せない理由があった……！

Ωであると理由でαから狙われる日々を過ごす基己は、「自分を襲わない」幼馴染の豪を特別な存在だと思ってとても信頼しています。だからこそ豪は、誰より大切な基己の「特別」であるために、基己を悲しませないために、湧き上がる熱情を抑えこむのです!!

豪の想いが切なくて切なくて……。しかしあらすじにもある通り、豪は〝ある行動〟を起こします!　豪の行動をきっかけに、本当の自分をさらけ出せない豪と、一方的に狙われてきた経験から、「純粋に好きだから襲う」という行為が理解できない基己の関係が大きく動き出す瞬間をぜひご覧ください♪

じんわり泣ける、残された弟の愛と献身

『兄が遺した恋のゆくえ』作：暮

ーSTORYー

βの兄・晴樹亡き後、αの一樹は一冊の日記を携え、向日葵の咲くある田舎町に向かった。たった一人残された、兄の恋人でΩの幸人に会うため。そして、“ある願い"を叶えるため――。一樹は自分の性別をβだと偽り、幸人とのぎこちない共同生活をスタートさせるが…?

【エモエモポイント】
βの兄が遺したΩの恋人・幸人のもとで、押しかけ世話係をすることになった樹。亡き兄の恋人(Ω)と弟(α)という組み合わせ、既になにかが起こる予感しかしない……!!

庭を掃除し、料理をし、海に出かけ、かいがいしく世話を焼く樹ですが、彼がそこまでするのには理由があるんです。幸人さんへの好意だけではない、確かな兄と幸人さんへの愛がそこにはあります。

Ωの幸人と番になれないβの兄は、生前なにを思っていたのか。幸せの中に潜む兄の悩みや葛藤が辛いです。しかし、兄の足跡のひとつひとつに幸人さんへの愛を感じて心が温かくなります！ そして兄と弟が幸人さんにもたらした幸福に読者も幸せな気持ちになれるお話です！

好きな人の運命の番を探す

『シティ・ライツ・バースデイ』作：本郷地下

ーSTORYー

あるホワイトクリスマスに、β（ベータ）の東馬は、Ω（オメガ）のまほろと出会う。怪我をしたまほろを手当したお礼にと、セックスの手ほどきを受ける東馬。風俗に勤めるまほろは、お金を貯めながら、幼少期に出会った〝運命のα〟を捜しているという。

まほろに惹かれてしまった東馬は、せめて役に立ちたいと「運命のαを一緒に探します」と提案。受け入れてもらったものの、二人で過ごすうち、まほろへの想いは膨らみ続けていった。そしてまほろも、運命を求めながら、東馬へ名前のつけられない感情を持ちはじめ……。

「あなたは、ちゃんと運命の人と幸せになってください」確かな〝運命〟を前に、ひたむきに生きる二人と一人の、切なくも優しい恋の物語。

【エモエモポイント】
好きになった相手・まほろはΩで、幼いころ一度だけ会ったことのある「運命の番」を探している。この状況だけでも辛いのに、βの東馬は運命の番探しの手伝いを申し出るんです。健気すぎる……!!

運命の捜索を続けるうち、段々と東馬に惹かれていくまほろ。しかしどうしても運命に対する確かな思いは拭い去れません。あまりにも強すぎる運命が残酷で、運命じゃない2人の関係が切ないです。

どうしたって運命になれないβの東馬も、運命の相手であるαも、それぞれが苦悩を抱えていて、しかし様々な形で幸せになることができる。最後には2人の見つけた幸せの形に、応援したくなること間違いなしの一冊ですよ！


Ωのふりをするβ。その理由とは……

『リバース』作：麻生ミツ晃

ーSTORYー

BL界屈指のストーリーテラーが贈る、後悔と欲望入り交じるミステリアスオメガバース

小説家の円と警察官の吐木は、同じ施設で育った”同志”で”番”。円はフェロモン分泌が異常で番以外の人間もそのフェロモンを感知してしまう上、番関係を結んだことで遺伝子変化が起こり、一般の抑制剤も効かなくなっている――そう、[振る舞っている]。何も知らない吐木は円を支える為と出世を蹴り続け、所轄への異動初日に担当することになったのは、Ωを狙ったレイプ事件。そんな中、円は発情期に入り
強烈なフェロモンを発しながら吐木を求める――まるで［Ωのように]……。