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あまあまから倒錯まで…珠玉の5作を厳選して語ります

デビュー10周年おめでとうございます！！

ということで、今後ますます目が離せない緒川千世先生。言わずと知れた「カーストヘヴン」は学校内で行われるカーストゲームの中で生き抜く学生達の恋や友情・人間の多面性などが描かれ、容赦無い世界観にすっかり沼にハマった読者も多いのではないでしょうか(筆者もその一人です。あまあま好きも沼らせるカーストヘヴンの中毒性恐るべし…！)。

同時に仄暗いイメージの強さから「気になる作家さんだけど手を出すのに躊躇してしまう……」という方はいませんか？ 大丈夫、任せて下さい！ 緒川千世先生の作品は本当～ッにバラエティ豊かなんです。きっとお気に入りの作品が見つかるはず……！

というわけで、今回は緒川千世先生の必読作品を、BLソムリエが厳選してご紹介します!!

可愛いがカンスト！愛すべきアホっ子 ＜DKは至高度★★★＞

『このおれがおまえなんか好きなわけない』

自信を持ってオススメします。ラブコメ・アホっ子が大好物なら間違いなしの逸品！ マジのマジで可愛いがカンストしているのです……！

主人公・藤間をひとことで説明するならば「愛すべきおばか」。
町で評判の美少年ゆえに周囲から甘やかされ、わがまま放題に育った藤間の情緒は幼稚園児レベル……！ 感情表現がストレートで、嬉しいときは花のように笑い、悲しい時はワーッ！ と泣いて、落ち込むときは周囲の空気までドンヨリさせるほど凹む。高校生とは思えない天真爛漫さに、心のお母さんがビッグハグしたくてたまらなくなります……。

そして素直になれないがゆえに、恋心に気付かないという「無自覚」も萌えポイント。
中学時代に御徒町に傷つけられた藤間は復讐に燃えますが、「ありがとう」と言われただけでガチ照れしてしまったり、御徒町を想って料理を作ってしまったり……どこからどうみても恋する乙女にしか見えない。「好きなんでしょ、御徒町が」と友達から指摘されても「どこをどう見たらそうなるんだよ」と答える。……いやいや、あれだけの態度を取りながら恋じゃないってことはありえないですから!! とツッコみたくなるんですが、この無自覚さが愛くるしいのですよー！

果たしておバカ藤間と御徒町の恋はいかにーー!? 興味がある方は是非読んでみて下さい♪

あらすじ
昔から町で評判の美少年・藤間大成。
周りに甘やかされて、わがまま放題に育ってきた大成の人生には、唯一の汚点がある。
それは中学のときクラスメイトだった御徒町啓太の存在だ。
そんな大成と御徒町が、ある日、3年ぶりに再会。
その日から大成の復讐大作戦が始まった！
……なのに、おかしいぞ。
御徒町のことなんて大嫌いなはずなのに、ドキドキして大成の頭はまともに働かない。
まさか、この俺があいつを好――!?

ひとつ屋根の下。慈愛に満ちる日々 ＜ノスタルジック度★★★＞

『おいたが過ぎるわ子猫ちゃん』

ふしだらで人誑しの大人×ツンデレ高校生の一つ屋根の下ラブ！
一緒に暮らす中で近づく距離…、イケナイいたずら……(ムフフ♥)。
――と、お思いでしょう。そうです！ 間違ってはいないです!!(笑)

ですが、この作品は哀愁が漂う優しい愛の物語でもあります。昭和が香るレトロなお家の中で積み重ねる日々。家族を失う恐さを知って臆病になってしまったエツローは、素直で生意気な弓太と過ごす中で家族がいる温かさを思い出してしまいます。しかし自分から手放すことも出来なければ、一生を共にする勇気も無い。エツローの気持ちが理解出来るからこそ、切なさにギュッとなる……。

そして高校生の弓太はエツローの感情をくみ取りきれず(そりゃそーだ！ 仕方ない！)、すれ違ってしまうのが泣けるんですよ～～！

ラブコメを主軸に展開しながらも、哀愁と慕情のシットリ感も味わえる1冊。筆者はエツローの言葉にならない感情でもらい泣きしました。もちろん、ふしだらな関係♥ も見所です……！

あらすじ
「寝込みを襲うんじゃねー！ この万年発情エロオヤジ！」
花の男子高生・小森弓太と、その親戚・河西越郎。
ちゃらんぽらんな越郎は女グセが悪く、弓太にまで何かとちょっかいをかけてくる。
そんなある日、越郎が弓太をかばって名誉の負傷！
弓太が住み込みで越郎をお世話することになったから、さあ大変！！
果たして弓太は越郎のエロエロ攻撃をかわしきることができるのか！？
ふしだら狼さん×なまいき子猫ちゃんのドキドキ同居ライフスタート♥

おじさま×ハイヒールも見逃せません！ ＜2人だけの世界度★★★＞

『赤のテアトル』

「枕営業」というワードに、皆さんはどんなイメージをお持ちですか？ きっと大なり小なりマイナスな感情を抱くと思います。けれど、この作品では枕営業によって、健気に愛しい人を想う純粋さが際立つ作品なんです……！

靴職人のアダムにとってユーリはミューズ。アダムはモブに抱かれているユーリを、なんとうっすら笑みをたたえながら眺め続けるのです。
そして性行為が終わった後、優しく抱き留めるーーー。

第三者には理解しがたい狂った愛情が2人の間には存在する。その着地点は「純愛」……！
こういう狂愛大好き～！ と思う方、いらっしゃいますよね!? 唯一無二の関係性が大好きな方は必見ですよー♪

他、同時収録のスピンオフではおじさま×おじさまの拗らせ因縁愛が……！ 高級なスーツを身に纏ってハイヒールを履いたおじさまが淫靡に乱れるという、倒錯的なお姿を堪能できます。
薫り高い色気が堪らない！ おじさま好きにオススメです♥

あらすじ
パリのファッション界で、一躍名を馳せた女性靴ブランド・アバルキン。その急成長の裏には、秘密があった。

それは淫らな肢体とむせ返るような色香で業界人を惑わす、美しき青年社長・ユーリの枕営業…。

そんな娼婦まがいのことを夜ごと繰り返すのも、
すべては愛しい側近のゴーストデザイナー・アダムの夢を叶えるため。
彼を繋ぎとめられるなら、たとえ利用されていても構わないと気丈に身体を差し出すユーリだったが―――。

独占欲に葛藤するゴーストデザイナーと歪んだ愛を捧げる健気なミューズのめくるめく逆転主従ロマンス・ストーリー。

愛おしき下克上が尊い…。＜不器用さが切ない度★★★＞

『王子の箱庭』

譲がかつて住んでいた屋敷には、元お世話係が「主」となって住んでいるーー。

一家離散状態となった後、屋敷を出て半グレに落ちぶれてしまった譲。対して、事業を成功させて屋敷に住み続ける元お世話係・岩瀬。岩瀬は一見、譲への下克上を果たした男に見えます。しかし！ ストーリーが進むにつれ明らかになるのは、彼の心は今も幼い譲に仕えていた頃のまま。譲を守りたかった・大切にしたかった過去に縛られ続けているという、健気さを感じる下克上なのです……!!

これ以上ないほど「箱庭」という言葉がぴったりハマる作品。岩瀬の一途な愛に、譲はどう答えるのかーー。

ちなみにこちらは緒川先生のデビュー作。緒川先生作品特有の、狂気じみた執着攻めの原点とも言えます。岩瀬は執着攻めに加えて健気属性もあるという属性盛りだくさんのキャラ。不器用さに切なキュンですよー！

あらすじ
その日暮らしの譲は、かつてお金持ちの家のお坊ちゃんだった。住んでいた屋敷が、自分の世話係だった岩瀬のものになっていると知った譲は、ある日、岩瀬を訪ねる。今や注目の起業家となった岩瀬と8年ぶりに再会する譲。だが、岩瀬を騙して利用するつもりだった譲は、逆に岩瀬に捕らえられてしまうのだった。それが譲の監禁生活の始まりで…!?

迷った時はこれ♡大人気シリーズ ＜見守り隊度★★★>

『やまない不幸の終わらせ方』

『誤算のハート』から『終わらない不幸についての話』へと続くシリーズ4作品の一つ。カーストヘヴンと並ぶ代表作ですね。
どれを読むか迷ったらコレです！ 間違いない。“魅力を探る”という本記事のテーマに反しますが、多くは語らないでおきます……。

あえて一点触れるとするならば、緒川作品の中で最もギャップがあるキャラクター・烏童隆之の魅力。他者にはオラオラしているのに、恋愛になると途端にウジウジ乙女化してしまうんです！ 不器用ボーイ・烏童の恋の見守り隊となってやってくださいませ♥

男同士、家族との確執など、多くの壁を乗り越え育まれる恋模様に胸を締め付けられます。切ない王道ラブストーリーがお好きな方は是非……！

あらすじ
烏童隆之は絶望的だった片思いを成就させ、 社会人になっても清竹誠司と恋人関係を続けていた。 この恋を守るために理想通りの自分でいたい。 男同士、家族、仕事、将来――清竹の実家を訪れた烏童は恋の前に立ちはだかる現実を目の当たりにする。 2人の選ぶ未来とは――。

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幅広い作風で楽しませてくれる緒川千世先生の魅力が伝わったでしょうか？

ここでは紹介しきれませんでしたが、アラブもののBL作品や、疑似父子を描いた非BL作品なども見逃せません。沼にハマった筆者としては、ラストスパートへと走り出した『カーストヘヴン』を今から追いかけるのもオススメですよー！

ぜひ今から緒川千世先生の作品世界にどっぷり浸ってみては♥

担当BLソムリエ：いるちま