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宮沢賢治や梶井基次郎も!文豪6人の青春と淡い恋心

2020/08/16 18:00

2022/02/08 14:00

文豪の物語に生きる、儚き恋や憧れの1ページ



図書館でも読めるBL、ニアBL文学。一部界隈で根強い支持を得ていますが、近代文学の中にも結構な数があり、中には作者自身の体験に基づいた「私小説」も。

今回は、近代文豪の青春の1ページとして残っている同性との恋のエピソードを、いくつか取り上げていきたいと思います。

 

江戸川乱歩~初恋の少年~

 


あまりに有名な怪奇BL小説『孤島の鬼』を著した江戸川乱歩は、男色研究家としても知られています。そんな乱歩の15歳の時の初恋の相手は、こちらの記事でも詳しく取り上げているように、男の子だったと言われています。

「それが実にプラトニックで、熱烈で、僕の一生の恋が、その同性に対してみんな使いつくされてしまったかの観があるのです。ラブレターの交換や、手を握り合えば熱がして、身体が震え出したものです」ーー自伝にはこのように記してあります。初心な感じですが、ラブレターには「君を食ってしまいたい」と書くなど、なかなか熱烈。

また乱歩は多くの男色研究家と交流し研究の協力などをしていましたが、中でも親密だったのが岩田準一。岩田の実孫の方が、2人は友人以上の深い関係であったと著書で書いていますが、果たしてどうだったのでしょうか。

 

川端康成~寄宿舎で下級生と~

 

BL文学として名高い短編「少年」は川端康成の私小説。中学で寄宿舎に入った康成は、同室の下級生の熱烈なアタックを受けます。

「『私のからだはあなたにあげたはるから、どうなとしなはれ。殺すなと生かすなと勝手だつせ。食ひなはるか、飼うときなはるか、ほんまに勝手だつせ。』
昨夜もこんなことを平気で言っていた。
こないに握ってても、目が覚めたら離れてしもてまんな。』と、強く私の二の腕を抱いた。
私はいとしくてならなかつた。」

「殺すなと生かすなと勝手だつせ」は強すぎる…! 関西の言葉遣いも柔らかくて良いですね。思わずため息が…。

また絆された康成自身も相手にこんなラブレターを送っています。「お前の指を、手を、腕を、胸を、頬を、瞼を、舌を、歯を、脚を愛着した」。何とも官能的ですが、"肉体関係"はなかったそう。しかし後に彼自身「それから五十歳まで私はこのやうな愛に出合つたことはなかつたやうである」と語っていることから、本当に大切な思い出だったのでしょう。

 

宮沢賢治~深いつながり、そして決別~

 


これまたニアBL界隈で人気の『銀河鉄道の夜』のカムパネルラのモデルではないか? と言われる賢治の親友がいます。賢治は盛岡高等農林学校の寄宿舎で同室(また出ました、寄宿舎で同室!)となった保坂嘉内という青年と親交を深めます。

2人は文学や勉学で切磋琢磨しますが、反体制的な発言が問題視された嘉内が放校処分に。賢治は学校側に処分を取り下げるようかけ合いますが、受け入れられず。2人は手紙でやり取りするようになります。

手紙の中で、「友よ、まことの恋人よ」と呼び合う巨大感情で結ばれた2人でしたが、宗教に傾いた賢治が嘉内をしつこく勧誘するように。数年来の再会を果たした2人の手紙のやり取りは、その日を境に減っていきます。
2人の間に何があったのかは神のみぞ知るところ。しかしおそらく思想の違いから決別したのだろうと言われています。

賢治の「ただ一人の親友」とも言われる彼の存在がカムパネルラとして昇華されたのだと思うと、『銀鉄』を読む目も変わってきますね。

 

梶井基次郎~美少年への淡い憧れ~

 

『Kの昇天』などがニアBLとして知られる夭逝の作家・梶井は、10代の頃に同級生の野球部の美少年に淡い恋心を抱いていた事があるそう。
梶井は自分の容姿には自信がなく、恋愛には臆していたそうですが、そうした思いから美しい少年が一層憧れの対象だったのかも。梶井はその美少年の家へ行って宿題を手伝うなど、友人として交流していたそう。超プラトニックだったこの恋は、どことなく彼の繊細な作品の趣をうかがわせます。

どうなることもなかったこの恋ですが、数年後夢にその美少年が出てくるという体験をしたーーとのこと。プラトニックだっただけに、心に残る恋だったのかもしれません。

 

里見弴~志賀直哉とケンカップル?~

 

有島武郎の弟でもある里見は、私小説『君と私』に、志賀との親密な関係を記しています。学生時代、五歳年上の志賀のお稚児さん的存在であったようです。2人で吉原へ行ったり旅行へ行ったりしていたそう。

当時、いいとこのお家では「書生」と呼ばれる住み込みの学生を引き取る文化があったようですが、書生とその家の人間が関係を持つこともしばしば。里見自身も、山川という書生と男色関係にあったといいます。

志賀とは肉体関係はなかったようで、どちらかというと年上の志賀に里見がプラトニックな憧れを抱いていた側面が強かったようです。のちに私小説に描いた自分の姿に志賀が怒り、2人は絶交。結局仲直りしたみたいですが(したんかい)、その後も何度か喧嘩していたそうです。結局関係を持つことはなかった2人ですが、交友は晩年まで続きました。

 

折口信夫~年上僧侶とのただならぬ関係~


民俗学者でもあり、釈迢空の名で詩歌も書いていた折口。短編「口ぶえ」は知る人ぞ知る美しい小説です。

そんな彼の初恋の相手は9歳年上の僧侶藤無染さんだったと言われています。「迢空」という号は無染さんに付けてもらった…という逸話も。

2人が深い関係にあったのではないかという研究もあります。2人は折口が大学生の時に同居していたとのことですが、「無染に会うために、彼と暮らすために、突然志望校を変更してまで束京に出てきた」のでは? とのこと。いじらしいです…! 真偽のほどは分かりませんが、もしかして「口ぶえ」にはその時の心情が少なからず反映しているのかもしれません。

 

***

 

いかがでしたでしょうか。今回は文豪の青春時代の同性への恋や男同士ならではの関係性のエピソードをいくつかご紹介させていただきました♪
のちに別の人と結婚している方も多く、上記のエピソードは「成就」されなかったり、中には決別してしまったものも。(文豪って決別しがちじゃないですか?)そこがまた儚く、むしろ誠実な関係だったのかな…と思うところも。

ともあれ、これらの恋が本人の中で美しい思い出や忘れられない思い出となっているものも多いようです。叶わなかった淡い恋の経験が、のちの作品に生きているんですね!

担当BLソムリエ:廣井無名
完全には幸せになれないCPが好きな漆黒の闇の腐女子。キーワードは死ネタ、愛のないSM、流血、狂気、宗教、叶わない恋など。

 

 

コメント4

投稿順 | 最新順

匿名3番さん(1/1)

さすが文豪達の文章だけあって萌えの言葉の破壊力が莫大ですね。全て素晴らしいですが、個人的には川端先生の作品の関西弁の坊やに大賞を進呈したい。あんな柔らかい言葉なのになんてエロいんだ!先生の返信も情熱的です。

匿名2番さん(1/1)

「草の花」 福永武彦
これも古い文芸書ですがニアBLっぽくてかなり有名です。
理性的な文章の美しさだけでも素晴らしいですよ。

匿名1番さん(1/1)

折口信夫の『口ぶえ』、男子校生の主人公が「野獣のような」男と「清らかな」男の間で…という話です。モブキャラの体育教師もあやしい。
文体が個性的で読みにくい、未完で中断してる、といったところはハードル高めなのですが、まあ、完全にbl小説です(主人公、なんでそんなにモテるんだw)。
なんというか、ねばりつくような文体で、慣れるとエロく感じます。好き嫌いがわかれますが。

しかしこれは大正時代、ふつうの新聞に連載してたわけで、当時は男子学生同士の恋愛はそこまで奇異ではなかったとのこと。

いいですよね、ニアBL文学。宮澤賢治のエピソードは、以前Eテレでも特集されていましたし、二人の関係性を研究した方の本も出版されていて、知れば知るほどBLだわ…と思ったものです。

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