小説のタイトルでよく見るあの漢字、あれは小説特有の漢字か…⁉
突然ですが、こちらの2作品『秘蜜』と『蜜毒の罠 薔薇の王と危険な恋人』、小説かコミックスのどちらの作品か分かりますでしょうか? ぜひ作品を知らないという方も予想してみてください。
正解は……どちらも小説の作品なんです!
もちろん作品を読んだことがあったり、知っていたりする方はご存じだと思いますが、作品を知らなくても「このタイトル小説っぽいな~」と作品名だけで何となく予想がついた方も多いのではないでしょうか?
筆者もタイトルを見てある程度の予想はつくのですが、一体なぜタイトルだけで判断することができるのか、考えてみました。
その結果、「この漢字があれば高確率で小説である」と言えるようなBL小説特有の漢字が存在するからではないかという説が浮上。
そこで、今回第一回、第二回に続いて、第三回となるBL法則シリーズとして「コミックスではあまり使われないが、小説のタイトルでよく使われる漢字の法則」を導き出していこうと思います!
エントリーNo.1 「蜜」

まず最初に調査していくのは、「蜜」という漢字。小説のタイトルはもちろん、中身にもよく用いられている漢字ですが、蜜がつく熟語を調べてみると、蜜柑、蜜蟻、蜜吸、蜜月、蜜語、蜜腺、などBLで目にしたことのあるような熟語がいくつもあります。
そして、ちるちるの検索機能を使ってタイトルに「蜜」という漢字が含まれるBL小説を探してみると……
『
秘蜜』、『
ブライト・プリズン 学園の禁じられた蜜事』、『
蜜毒の罠 薔薇の王と危険な恋人』、『
パブリックスクール-ロンドンの蜜月-』、『
愛の蜜に酔え!』、『
蜜を喰らう獣たち』、『
蜜惑オメガは恋を知らない』、『
忍姦~蜜戯の策~』、『
罪の蜜』、『
蜜恋エゴイスティック』などの作品がヒット! コミックスとの割合でいうと
90%近くは小説の作品でした。
作品名を見てみると、秘密の当て字として“蜜”を使うことで、秘め事という意味を含んでいたり、甘い蜜といったような官能的な意味を表現していたりする作品が多いように感じます。
今回は数ある作品の中からおすすめ作品を1つだけご紹介させていただきます!
「蜜」がタイトルにつくBL小説
『秘蜜』いとう由貴/イラスト:朝南かつみ
あらすじその電車に乗ったのが、淫らな悪夢の始まり。
平凡な会社員・佳樹(よしき)は、満員電車で痴漢に遭う。艶やかな色気を放つ英一(ひでかず)と季之(としゆき)に身体を嬲られ、ふいに洩れたのは甘い吐息。執拗に追われ、下肢に淫具を挿れられた佳樹は、男達に従うしか術がなかった。
エスカレートする行為によって、彼らにしか反応しない身体にされた佳樹。彼らにとって自分は羞恥奴隷でしかない。そこに愛があるはずがないのに、愛されたいと願ってしまうようになり……。
挿絵が美しすぎる! 調教や3Pが苦手という方にも是非読んでほしい1作です!
性格が正反対の美男子2人に痴漢され、女相手では
勃たない体に調教されてしまうノンケリーマン・佳樹。
ただ調教されて好きになってしまって付き合うというような、トントン拍子で進むのではなく、葛藤して困惑して翻弄されて……アブノーマルな関係なのにどこか純愛のようにも見える3人の関係や心理描写に注目です! また、羞恥プレイはもちろんどエロなのですが、痛い描写はないのでがっつりSMプレイが苦手という方にもオススメです。
エントリーNo.2 「譚」
次に調査していくのは「譚」という漢字。物語という意味で使われているイメージがありますが、実はそれ以外にも、「はなす」や「ゆるやかで深みのある様」という意味で用いられることもあるようです。熟語としては奇譚、民潭、譚歌などが挙げられます。
そして「譚」という漢字がタイトルにあるBL小説を検索してみたところ…
『
天水桃綺譚』、『
九尾狐家妃譚~仔猫の褥~』、『
淫竜婚姻譚 ~蜜蘭は乱れ咲く~』、『
王朝恋闇秘譚』、『
いちご牛乳純情奇譚』、『
死神狼の求婚譚 愛しすぎる新婚の日々』、『
龍の妻恋い ~うそつき龍の嫁取綺譚~』などの作品がヒット! コミックスとの割合で言うと、
80%くらいでしょうか。
作品を見ていくとファンタジー系が多いように感じます。この“譚”という漢字を用いることで、本の中の世界という印象を与えてファンタジーの世界観を表現していたり、ストーリーの深みを表現したりと、色々な意味を成しているように思います。
その中で筆者のおすすめ作品はこちら!
「譚」がタイトルにつくBL小説
『天水桃綺譚』凪良ゆう/イラスト:藤たまき
あらすじ天から落ちたモモは、桃農家の亨に拾われた。無愛想な亨と天真爛漫なモモ。ゆっくりと想いを通わせるが、それは許されぬ恋だった…。
子どもに読み聞かせたくなるほど優しく、切なさと愛しさを凝縮したようなおとぎ話! まず天から落ちてしまったモモと人間の恋という、読んだら優しくなれるような穏やかにならざるを得ないファンタジー設定に、日々の疲れを忘れて癒されます。
また、戦後が舞台ということで、ちょっとした描写で現代との違いを表現したり、小道具を使ってよりキャラの心情を際立たせたりと、ひとつひとつが繊細に紡がれており、何度読んでも心に沁みます……。
読後にもう一度表紙を見てみると、このティーカップの意味が分かり思わず涙が滲みでてくること間違いなしです。ぜひ切ない…けれど優しい恋の結末を読んで確かめてみてください!
エントリーNo.3 「穢」
最後に調査していくのは「穢」という漢字です。小説では“穢(けが)れ”という形で使われることが多い漢字ですが、その他にも6つの異なる読み方があり、汚穢(おわい)、雑穢(ぞうえ)、穢(あ)れる、蕪穢(ぶあい)、穢(きたな)い、穢(わる)いなどがあります。
また、「穢」という漢字がタイトルにあるBL小説を探してみたところ…
『
黒帝は穢れた魔物に愛される』、『
天使は夜に穢される』、『
逃避行 ~穢された愛の軌跡~』、『
穢れた純愛』、『
穢れない罪』、『
穢れなき狂暴な愛情』、『
歪曲する愛に穢されて』、『
穢れた楽園』、『
ブライト・プリズン 学園の穢れた純情』などが見つかりました。
作品全体の母数は少ないものの、コミックスでタイトルに「穢」という漢字を使っている作品は2冊ほどしか見つからなかったので割合でいうと
90%以上の作品が小説ということになります。
“穢”という言葉は、死・出産・妊娠・傷胎・月事・損傷などに対して使われており、本来は宗教的な神聖観念の一つとされていました。日本では、不浄観念としても用いられており、汚いことや災いを指すときに使われます。BL小説でも、行為としての穢れと、性的な意味での穢れの二つの意味を持って使われているように思います。
おすすめの作品はこちら!
「穢」がタイトルにつくBL小説
あらすじ「誰にも裸を見られてはなりませぬ」
海神の国の帝・キリィの肉体には秘め事がある。もしそれが暴かれれば、自分は殺され、この国は敵国ギメイルの侵略を許すことになるだろう。だが、素性の怪しい薬師のスザクに不敬を働かれ、秘所を見られてしまった。
「刀を収めろ。まるで乱暴された姫君のようだぞ」
そう嗤うスザクに、キリィは憎悪と疑惑とともに妙な安らぎを覚えて――⁉ 快楽の闇の中で探り合うような関係。それはこの世界の運命をも動かし始める――。
ワダツミ皇国三部作の完結編! 読後は1本の映画を見ていたような感覚……普段小説を読まない方でもこの壮大で繊細なファンタジーの世界にあっという間に引き込まれてしまいます。前2作を読んでいないという方には、ぜひシリーズ通して読んでいただきたい作品です!
今作の主人公は、
ワダツミ皇国帝のキリィ。1作目、2作目で兄と弟を追い詰め帝になったキリィですが、彼の苦しみ、孤独を知ることでシリーズ通してより奥行きが出たような気がします……。そしてエロとしてもストーリーとしても重要なサンドウィッチプレイには要注目です。最後にキリィの秘所の秘密。これには素直に驚きました。ぜひ読んで確かめてください‼
まとめ
コミックスよりも小説のタイトルで多く使われる漢字には、二つ以上の意味を持つ含みのある漢字が用いられており、
見る人によって違った解釈や、深読みできるものが多い傾向にあります。
また、今回調査した3文字は、「蜜」が漢字検定2級、「譚」と「穢」が漢字検定1級ということで、普段はあまり使わない非日常的な漢字使用することで、より作品の雰囲気や時代背景などが伝わるように表現されています。
一方、コミックスの場合はできるだけ内容がストレートに伝わるタイトルが多く、例えば「蜜」という漢字を使う場合であっても、秀良子先生の『
リンゴに蜂蜜』のように、イラストと組み合わせそのままの意味で用いられたり、サブタイトルで使われていることが多いように感じます。

コミックスがイラスト+言葉なのに対して、小説は言葉のみでストーリーを描いている分、一つの言葉に持たせる情報が多いため、少し捻った漢字を使用することが多いようです。
結論としては、BL小説特有の漢字というものは存在し、その条件として、
当て字変換できる、または二つ以上の意味を含む漢字であること、非日常的なレベルの高い漢字であることが挙げられます。今回は小説タイトルの漢字に注目してみてきましたが、コミックスのタイトルで検証してみても面白い結果が得られるかもしれません。ぜひ皆さんも隠れざるBL法則を探してみてください♪
コメント1
匿名1番さん(1/1)
「譚」は小説特有でもない気が。
他はエロを連想させる漢字ってだけ。
レベルの高い漢字とか笑わせないで?