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【増加率500%越え!?】オメガバースの5年間の軌跡とその人気の秘密を徹底分析!!

2020/04/18 11:00

2023/05/04 18:00

なぜオメガバースはここまで急増したのか?

 


時は、オメガバース戦国時代…
いま数多の名作がしのぎを削り、その勢力は衰えることをしらない――。

BLでも大人気のジャンル「オメガバース」。みなさん読まれたことはありますか?
発情や妊娠など、マニアックな設定を含んでいることもあり、なかには苦手意識のある方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、オメガバースは驚異的なスピードで発展し、多様な作品がどんどん生まれ続けています。そんな時代に、食わず嫌いはもったいない!!

そこで今回は、オメガバース好きも必見! 各年の人気作を振り返りながら、その魅力と人気の秘密に迫ります。

◆目次◆
1.オメガバースとは?
2.作品数急増は最近⁉
3.年ごとに見るオメガバース人気コミックス
  2015年 商業BLオメガバースの夜明け
  2016年 人気シリーズ誕生、オメガバースの普及
  2017年 KUSEGATSUYOI年!!
  2018年 明るいコメディ調の作品がトレンド
  2019年 やっと!? 王道で人気作が
  2020年 スピーディ&ビジネスな番関係
  2021年 生き物の習性としてのオメガバース
  2022年 オメガバース+新たな世界観
4.オメガバース、人気の秘密は?

 


α(アルファ)・β(ベータ)・Ω(オメガ)という男女とは別の性別が存在し、その性差が人生そのものを左右する世界観のこと。
α・β・Ωそれぞれの性別をざっくり説明すると、「最上位の希少エリートであるα」「平凡で最も人数が多いβ」「最下層で、発情期には男女ともに妊娠可能なΩ」といった感じです。(※ただしこの他にも作品よってバリエーションがあります。)

詳しく知りたい方はこちらの記事も!

『発情・妊娠・身分差だけじゃない!! 日本で進化中の「オメガバース」を徹底解析』

『知ってた? 流行りの設定「オメガバース」のルーツ』

 


現在ではお馴染みの設定となったオメガバースですが、8年前まではマニアックな設定でした。

実際にちるちるの作品検索機能を使い、「オメガバース」のBOXにチェックを入れて作品数を調べてみると、驚異的な事実が発覚!!!



グラフ上の棒は作品数を表しています。
(注:あくまで検索で表示された件数なので、実際発売された作品数とは異なる場合があります。)

なんと、コミックスは、2015年と比べると昨年は作品数が約33.7倍
小説に至っては作品数1から350作品にまで急増しています!

ものすごい伸び率すぎて震えがとまりません…!!

 

 
なぜオメガバースはここまで人気を獲得できたのでしょうか?

そこで今回は、その理由を探るべく、初めて商業BLが出版された2015年から2022年までの8年間で、ちるちるで評価の高かった作品を年ごとに見ながら、その軌跡と魅力を分析していきたいと思います♪


この年、「ふゅーじょんぷろだくと」がアンソロジー『オメガバースプロジェクト』を発行しました。2015年に発売された人気作はいずれもこのアンソロジーから生まれたものです。

日本の商業BL界でオメガバースの火付け役となったのは、一も二もなくこの『オメガバースプロジェクト』ではないでしょうか。

『オメガバースプロジェクト』から出版されたコミックスの初めのページには必ず、独自のオメガバース設定がわかりやすく紹介されています。これでオメガバースをまったく知らないという人でも、気軽に作品を手に取ることができるようになりました。

とはいえ、オメガバースはまだまだニッチなジャンルであり、内容も王道からは逸れるようなものでした。
たとえば『ロマンティック上等』はカップリングがβ×Ωです。


さよなら恋人 またきて友だち』は表紙からもわかる通り、かなり不穏な話で、攻め(α)のレイプシーンまであるというなかなかに衝撃的な展開の物語。


比較的王道な『パラダイムシフト』も、βが後天的にΩになるという設定です。


この年のオメガバースはあくまでもニッチな層に好まれるような内容のものが多かったように思われます。


この年はオメガバースにとっては早くも(早すぎる)大きな節目の年でした。なぜならオメガバースという枠にとどまらないようなヒット作が、多数出たからです。

特にその後もシリーズ展開し、高い人気を誇る作品が多く生み出されました。

かしこまりました、デスティニー』シリーズはその代表格。


言わずと知れたオメガバースの金字塔ですね。ここからオメガバースを読むようになった方も少なくはないと思います。
まるで中世ヨーロッパのような、非現実な社会を舞台としながらも、すっと物語に入って行けるのは、オメガバースというパラレルワールド設定の妙でしょう。

登場する2カップルの物語のうちの1つは、α×βのというイレギュラーカップルの切ないラブストーリー。仕事のできるβ受けというのは業が深い…。また「運命の番」を見つけたとしても、自分の意思で愛する人を選ぶんだという本能を越えた愛が胸を打ちました。

ただいま、おかえり』シリーズも、『かしこまりました、デスティニー』シリーズに並ぶオメガバースの傑作シリーズ。


キャッチコピーは「ハートフル・ホームドラマBL」。内容もまさにその通りで、基本は、イケメンエリートサラリーマンの攻め(α)と専業主婦の受け(Ω)が小さな子どもとともに暮らす毎日を描いた日常系癒しBL。

しかしところどころに、攻めのお父さんが結婚を認めてくれないとか、Ωの受けが無自覚な差別にあうとか、わりとシビアな社会事情なんかも描かれていて…。自分の身近な問題ともリンクするような内容に苦しさを覚えた読者もいたと思います。

オメガバースだから描けた、オメガバースに収まらない傑作です。

その他にも、出世のために自らの身体を差し出すΩ受を描く『狂い鳴くのは僕の番』、獣人×オメガバースというさらにニッチな世界観を描いた『ペンデュラム -獣人オメガバース-』など、こうして振り返ってみると本当にたくさんのシリーズ作品が出てきたことがわかります。


一方、α受けという新境地を開拓した『僕のハイスペック彼氏様』など、多数の意欲作も生まれ、その後のオメガバースの方向性に影響を及ぼしました。


昨年のオメガバース作品のヒットを受けて、さらに多くの人気作が世に放たれ、そしてBL界(作者、読者含む)は難なくこの特殊設定を受け入れることになりました。

いやはや、BL界の新しいものへの興味とその流行の速さには目を見張るものがあります…。


ひと言で言って「めちゃめちゃクセが強いな!? 」という年です。

まず、ちるちるの評価がこの年で一番高かった『さよならアルファ』ですが、まさかのショタ攻め…。


しかも小学生というチャレンジングな設定ですが、オメガバースという世界観、特に「運命の番」の設定がうまく機能して、驚くほど面白い物語になっています。

愛しあいながらも離れなければいけない切なさ、そして再会…の流れにもう「本当によかったね…」と号泣してしまいます。

さらにクセが強いのが(さらにがあるの!? という感じですが)、『あいとまこと』です。


双子と3Pというこれまた衝撃的内容。しかも双子は「番」らしい、というなかなかハードな内容。しかし、さすがあの『ロマンティック上等』を生み出した森世先生です。ストーリーが良すぎる。

「プレイとしての3P< ストーリーの一部としての3P」。あるべくしてある3Pなので、高い人気にも納得です。「番」、そしてαとΩ、それぞれの葛藤がとても丁寧に描かれていて、オメガバースが単なる展開のための設定ではないところが素敵。

しかし、まだ油断してはなりません。さらにクセの最上級があります…! それが『少年の境界 1』です。


自分はαだと信じて疑わなかった少年が、実はΩだった。イツメンのほとんどはβだったが、1人だけいたαに襲われてしまう。さらにΩだと信じていた根暗な幼馴染もαで…。

思春期の微妙な人間関係や性への意識、ただの「番」と「運命の番」。一見、王道に話が進んでいるように思えるのに、何かがおかしい。一筋縄では幸せにならせてくれないTHE akabekoワールドな一作です。

なぜこんなにイレギュラー設定の作品が増えたのか?その答えはわかりませんが、オメガバースという設定が、通常の世界観では一般に受け入れられないような設定を中和してくれているという見方はできるのではないでしょうか。


2018年は、前年の反動なのか、明るい作品が人気を獲得した年でした。表紙も心なしか明るいような…?

めぐみとつぐみ』と『結婚してください!』は、どちらもコミカルな描写が光るオメガバース作品。オメガバース好きでなくても面白く読める作品ではないでしょうか。


受けをΩとしてではなく1人の人間として見て、愛してくれる攻めというのが印象的。

奥様はα』は、α×αというめずらしいカップリングのお話です。コミカルな描写も多く、思わず読みながらクスッとしちゃうようなシーンもある楽しい作品。


ただ、このお話には「女型フェチ」である受けが、世継ぎを産むために抱かれなければならないという割と重めな命題が(ふゅーじょんぷろだくとのオメガバース設定では、全員が妊娠できるので、当然α×αでもどちらかが妊娠することは可能)。

これまで抱く側であったαが、急に抱かれる側になることの葛藤を抱え、訪れたカウンセリング。カウンセラーの診断記録には「性的な役割への偏見が強い、改善の余地有」との記述が。

そんな偏見を持ったαが、夫と協力しながら対等な関係で問題を解決していく姿を見ていると、現実世界を生きる女性としては思わず、羨ましいなあ、と思ってしまいます。

階級による差別ばかりがピックアップされがちなオメガバースですが、裏を返せば、みんなが妊娠できる世界にもなりうるんですよね!! 最高か…。オメガバースという世界観への理解を一層深めてくれる作品です。

この年のオメガバースはコミカルなのに、いやコミカルだからこそ、Ωが性的な搾取の対象であることなど、性の役割に対するストレートな描写が多い印象がありました。

ただ、全体的にハッピーBLなので、2017年作品を読まれた方はぜひ、2018年作品を読んで癒されてほしいです。

 

良い意味で、オメガバースという設定の上で王道と言えるような展開の物語が続々登場、正直やっと王道の年が来た! という印象。
作品数が大幅に増え、ニッチなジャンルだったオメガバースが大衆に受け入れられてきたことを象徴するような年になったのではないでしょうか。

嫌いでいさせて』と『アンチアルファ』は、Ω性に対して強烈な劣等感を持つ受けと、一本芯の通った頼りがいのあるα攻めが登場する作品です。


しっかりと自分の足で生きていこうとする健気なキャラの姿にぐっとくる、まさにBLにおいては「王道」と呼ばれるような良さを持った作品です。こうしたテイストのオメガバース作品は、定番のような感覚がありますが、意外にも最近になって人気が出てきたということができるかもしれません。

それと対照的に『有休オメガ』はまるでアン◯ャッシュのコントを彷彿とさせる、2人のすれ違い具合が面白い作品。


ポイントは受けが発情期を利用し、有休をとるなど、ビバΩライフを送っている点。これまでのオメガバース作品によく見られた特権階級制度などは特に描かれず、Ωの主人公もまったく卑屈な様子がないので、今までになかったタイプの異色作といえます。

初期のころは、オメガバースの読者が少しニッチでマニアックな層だったためか、内容自体もわりと意表をついたような、変わり種の作品が多く、人気もそれに比例していたように思います。

ただ、だんだんとオメガバース人気が広がり、読者層も広がったことで、わかりやすく王道展開のオメガバースも受け入れられるようになってきたのかもしれないですね。

 



この年は、運命の相手が理想と違った……というショッキングな出会いから始まる『滅法矢鱈と弱気にキス』のような攻防戦のある作品の登場が目立ちます。
また『運命の番がお前だなんて』では、”運活相談所”という相性のいい相手をマッチングさせることが出来るサービスも登場。マッチングアプリでの出会いが増えてきたこの時代に伴う世界観ですね!

こんな男を抱く/抱かれるなんて! と反抗しつつも、カラダもココロも惹かれ合ってしまう運命を描いた作品たち。段々と本気になるにも関わらず、きっと相手は身体だけを求めているんだろうな……という苦しみや不安を抱く展開も魅力的に描かれています♥

また、『幕が下りたら僕らは番』のように、ビジネスとして番になるお仕事×オメガバース作品も特徴的です。


仕事の協力者というためだけの番だったαが、たった1人の大事な人になってしまうという展開もオメガバースならでは。
”セフレから始まる恋愛”にも似たものを感じますが、「仕事のため身体を差し出す」切羽詰まった要素が加わることで、また異なる味わいの楽しみ方が増えたようですね♥

 



2021年は、オメガバースという生物学的な人間の習性をどの角度から描くか、という点について練り上げられた作品が目立つように思われます。
 
BLアワード2022のコミック部門で3位を獲得した『神様なんか信じない僕らのエデン』シリーズは、人類史上初めてのαとΩを描いた極めてトリッキーな作品です。
前例がない、身に覚えのないヒートに悩まされながらお互いを求める2人。オメガバースにおいての魅力の1つである「繁殖を望む生き物」としての姿、そこから芽生える人間としての愛情が瑞々しく描かれた名作です♥

また、『ごちそうΩはチュウと鳴く』は、捕食者の本能を持つキツネ獣人αと、非捕食者として攻めに恐怖を抱くネズミ獣人Ωを描いた作品です。

獣人としての身体に加えて、獣としての身体を併せ持つ本作の世界ではオメガバースによる階級制度だけでなく「弱肉強食」もテーマとして挙げられます。ラブコメとしてのタッチでありながら、3大欲求のうちの2つにクローズアップした作品です。




2021年は、「α、Ω、βという生き物」について新たな視点で考えられた作品が誕生したと言えるでしょう。

 



2022年は、オメガバースと作者独自の世界観が加わることで化学反応が起こった作品が多く誕生しました。

フェロモンのようなものが結晶として見える目を持ったΩと、彼に再会したβの恋路を描く『ルビーレッドを噛み砕く』。特別な結晶が見える相手=運命のα! とは成り立たない切なさと、逆境を嚙み砕く尊さに涙が止まらない1作です。

また、生贄として神に捧げられたΩを描く『愛日と花嫁』は神×生贄に加えてオメガバース設定が存在しています。しかし、舞台となる村は未発達で、Ωは人を発情させる厄介者として神に捧げられてきた……というシビアな世界が描かれています。

両作品とも、オメガバース設定にプラスされた世界観や、キャラクターの独自の性質が新しい萌えを生んでいます。オメガバースが生まれて7年経っても、萌えのアイデアは生まれ続けているようですね……♥


一方で、BLアワード2023にて次に来る部門の1位を獲得した『この手を離さないで』もオメガバース作品です。

学園モノ、CPはα×Ωという王道オメガバースとして、2022年を飾った作品の1つと言えるでしょう。αに向けられた「使える人種」というレッテル、Ωが抱く憎悪にも似た劣等感など、オメガバースの存在する世界で生きる若者たちが当たるであろう壁と、それを乗り越える尊さが丁寧に描かれています。

8年の時が経ち、すっかりBL界に馴染んだ設定・オメガバース。王道から独自の世界観まで、幅広い作品が愛されていますね!


さて、ここまで8年間のオメガバース設定のコミックスの足跡をたどってきました。
もちろん、オメガバースの正解はこれだ! と断言することはできないのですが、全体を通して、α、β、Ω性じゃなく人間として自分を見つめてくれる相手に出会えるというのが、オメガバース世界での幸せの法則のような気がします。

オメガバースの世界観では、男性、女性という第1の性よりも、α、β、Ωという第2の性が重要視されます。
それによって、特権階級や、差別思想が蔓延っている社会のなかで物語を展開させることができる一方で、裏を返せばオメガバースは男女の性差が少ない世界観とも言えます。

これまでBL作品上で多く描かれてきた「男だから……」という卑下や葛藤は、昨今普通のBL作品でも使われなくなってきましたが、オメガバース作品上では特に男女の性別ではなく、第2の性をめぐる葛藤がフォーカスされます。

第2の性は人間にとってはバーチャルなものなので、オメガバースはBLのなかでもファンタジー要素の強いジャンルと思われがちです。しかし、今回のように人気作を見ていくと、そうとも言えないのではないかという気がしてきます。

オメガバース作品は、性別をこえて愛しあいたい、という人間の欲求をわかりやすく示してくれるものではないでしょうか?

2023年はどんなオメガバースが生まれるのか、またその先、オメガバースは、BLはどうなっていくのか。

今回はコミックスのみでしたが、小説もオメガバース作品がものすごい勢いで刊行されています。これからもどんどんと多様性に富んだ作品が生まれていくのではないでしょうか!?
小説でも今回のような分析ができればと思っております♪

BLはまだまだ年若いジャンルですから、これからどんな新しい展開があってもおかしくないでしょう。今日も今日とてBLを読みながら気長に眺めていきたいですね。

 
 

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