【第四回:三崎汐先生】中毒性高し!唯一無二の世界観に浸れ前回の更新から少し間が空いてしまいましたが、【今夜は眠れない感動BL】の第四回をお届けします。
今回ご紹介するのは、表紙イラストの独特の色彩が目を引く三崎汐先生。三崎先生のコミックスは今年2016年に3冊刊行されたので、ちるちるなどで一度は目にした方も多かったのではと思います。
それでは、早速行ってみましょう!
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■魅力①:読者の胸に刺さる群像劇
三崎先生の描かれるお話は、数人の登場人物にスポットをあてた群像劇のような形になっているものが多いように感じます。BL作品ではメインカップルの二人が中心となってお話が進行するものが多いですが、そうした主要人物に絡んでくる
サブキャラクターの魅力によっても作品の色合いが大きく変わってきます。三崎先生の作品は、登場するそれぞれのキャラクターにきちんと背景があり、物語がより深みを増しているのが特徴です。
中でも、コミックス『みんないいこだよ?』や『2年3組の面々』は、作品にメインカップルという概念すらあまり存在していないほど。特に、『2年3組の面々』はタイトルからも分かるように同じクラスに在籍する学生それぞれの視点でストーリーが進行するオムニバス形式となっているので、同じ時間軸の中で各キャラクターが何を思っているのかを想像しながら読む楽しみもあります。
こうした群像劇のようなテイストは、実はBLではあまり見かけないような気もします。一つの恋愛についてたっぷりとページを割いて描いている訳ではなくても、読み終わりにはしっかりと満たされた気持ちになる。三崎先生の作品にはそんな不思議な魅力があるように思います。
■魅力②:最早母親目線!?
続いて紹介する三崎先生の魅力は、登場キャラクターたちの一生懸命さ、健気さです。とりたてて必死に頑張っている!という訳ではないシーンでも、三崎先生の描かれるキャラクターは常に一生懸命生きているというか…とにかく応援したくなるのです。
三崎先生のコミックスを読み返す度、キャラクター達のモノローグに胸を締め付けられます。この純粋な「見守りたい」という気持ちは最早母性のレベルにまで達しているのではないかと思ってしまうほど…。
コミックス『みんないいこだよ?』のあとがきにて、タイトルは先生本人ではなく編集部の方が命名したとの旨が書いてあったような…と記憶しているのですが、まさしくコミックスの内容を一言で表していると思います。誰が悪い訳でもないし、皆がそれぞれ自分の信じることを行っているだけなのに、回りまわってそれが自分の身近な誰かを傷つけてしまう…そんな関係性がよく表現されている秀逸なタイトルだと感じます。
■魅力③:他では味わえない翳りにざわつく
最後に、コミックス『はるのうららの』から三崎先生の作品特有の「翳り」について触れたいと思います。
『はるのうららの』の主人公は、優等生気質ながら融通の利かないところのある中学生・春希。そして、そんな春希の前に現れた転校生・春介。
二人は急速に距離を縮めていきますが、女装がばれ家を出た自身の兄の関係で同性愛に対する抵抗を持っている春希は、自分へ向けられる春介の「友達以上」を望む想いから目を背けてしまいます。
一見甘酸っぱい青春もののようにも思える本作ですが、二人を取り囲む環境やそれぞれの心理描写などが非常に巧みで、実際に読んでみると「綺麗なだけではない青春」が描かれているなと感じます。
(
コミックス『はるのうららの』作家インタビューより。白と黒の二色の対比が印象的です)
比較的裕福な家庭で兄の分までやや過保護気味に育てられている春希と、母子家庭で寂しい思いをしながら育った春介。幼い二人が互いの環境の違いに打ちのめされながらも前に進んでいく様に胸を打たれます。
かわいらしい、甘酸っぱい…そんな言葉では到底終わらない薄暗さとその先にある救いこそ、三崎先生の最大の魅力ではないでしょうか。
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いかがでしたでしょうか。三崎汐先生の作品は絵柄・ストーリー共に少々好みの分かれやすい作風ではあるかなとは思うのですが、是非もっと広く読まれて欲しいなと思い特集させて頂きました。
それでは、また次回もお付き合い頂ければ幸いです。
記者:星野